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(プロデューサの海道さん)
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海道: |
上田さんのコンセプトは、
ゲームを1人でやっているのではなくて
誰かが見ているというコンセプトなんですね。
いわゆる「アーケードゲーム」というのは、
ギャラリが見ていることが快感だった。 |
まーしゃ: |
その意味で、
女の子の役割は相当重要ですね。
何もしないのではなく、
そこにいることによって存在感を
出している、ということですか。 |
上田: |
ええ。この「女の子」には、
だいたい4つの意味があるんですけど、
1つは、ヒントを出す存在として、
2つめは、パズルの偶然性をより高くするため、
3つめは、見せるキャラクタとしての存在、
4つめは、モチベーションを維持するための存在、
っていうのがあって。 |
斎藤: |
ああ、ここはゲーム制作者が、
真似したくなる部分かもしれません。
この「ギャラリーを中に持つ」
というところですけど‥。 |
上田: |
たとえば「見せるプレイ」とか、
「仮想のギャラリ」ですけど、
自分がうまいプレイをしたときに
「うまい!」とか「すばらしい!」
とか言ってくれるよりもね。 |
まーしゃ: |
あはは! それは太鼓もちになっちゃう。 |
上田: |
ふふ。だからリアリティを出すためには、
「もしかしたらこの女の子は
生きているんじゃないか」という
ぐらいの生命感がないと
生きている感じが出ないんです。
その積み上げにいちばん時間が
かかりましたね。 |
海道: |
アクションゲームの中で、
主人公が2人というのは多いです。
たとえば、ゲームのガイド役、
主人公をスウィッチさせるとか、
ストーリーを語らせる語り部的役割とかね。
でも、ICOのような形で、
もう1人を使ったのは今までにはないですね。
ヒロインのAIっていうと、
駈け引きを楽しませるために、
相手が人間であるかのように見せる方向ばかりで
使われていたんですが、
こういうふうに感情移入のために
AIを使ったのは新しいです。 |
まーしゃ: |
そうなんですか。 |
海道: |
AIテクノロジーはいろいろあるけど、
まだ3割くらいしか使われていないし、
我々のやっているのは
多分まだ初歩的な部分でしかないと
思いますけど。 |
斎藤: |
AIをどこにもっていくかということですね。
ICOの場合「協力プレイ」的でありながら
あからさまに「協力プレイ」に見えないです。 |
まーしゃ: |
恣意的じゃないんですね。 |
斎藤: |
そう。恣意的じゃないというのは、
イギリスのメディアも言ってて。
ま、物理的パズルも確かにICOには
何個かあるんですけど。
そればかりじゃなくて。 |
まーしゃ: |
そうすると、このゲームは
けっこう女の子が中心で
「目的」がついて歩いている、
ということなんですね。 |
海道: |
ええ。それからおもしろいのはね。
プレイヤーが、女の子のAIに対して
過大に反応してくれているんです。
たとえば、手をひっぱりすぎて、
女の子が冷たくなった気がする、とか。
序盤と終盤では男の子と女の子の
親密度が上がった、とか、
感想を送ってくれるんですけど。 |
上田: |
あと女の子がツラそうなので、
2人でテクテクずっと歩いていた、とか(笑)。 |
まーしゃ: |
ああ、やさしい〜。 |
海道: |
そういう意味では、
命あるものに見せる手法は
成功していますね。 |
まーしゃ: |
そういう何かメッセージ性みたいなのは
意図していらしたんですか?
たとえば「命を大切にしよう!」とか? |
上田: |
いえ。ICOによってメッセージ性は
もたせてはいませんね。 |
まーしゃ: |
それよりは、この空気感とか
雰囲気とかを通して、いたわる気持ちとか、
何かを感じるんですね。 |