OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.36
- undead zombies no.2 -


vol.35 から読んでいただけますと幸いです(笑)。
いよいよ、gNくんの心の叫びです。うぉぉー!

今日登場の gN くんは
vol.12、13 の Linux の紹介で登場してくれた人です。
あらためてちょっと解説します。

彼は、Linux の CREDITS を持つ
日本人唯一の Kernel Hacker でもあり、
SH チップへの移植 にしても世界のエンジニアと協調して、
Linux の開発者として活動しているエンジニアです。

それで
企業にもエンベデッド普及(布教?)に出向き
托鉢僧のように地道な活動をしてはいたりするのですが
けっこう企業は現状に満足していて
興味がなさそうだったらしいです。

だったというのに
「エンベデッドコンソーシアムを作って
Linux を OS に採用し世界標準をめざすぜ」
という今回の新聞発表。

Linux の開発の当事者になんの説明もなく…。

むむ
にゃ、にゃにおぉー?!です。
一体どおいうことですかぁっ?

gN:
たとえばさ、まだインターネットが
普及していなかったころの寓話だけど
インターネットとはなにかを知らない人が
店頭で「インターネットください!」って店員に
迫ったような話だよ。

marsha:
なに? それ。

gN:
そんなとこでいきりたっても、
怒鳴ったって、そこからはでてこない。
あ、この話だと立場が逆だな。
立場を合わせてみれば、どうも「インターネット」
と書いておくと客が入ると気づいた店が、
とりあえずなにもないのに
「インターネットあります」と看板立ててみたという感じかな。

marsha:
またgNくんらしい、なんだか形而上な雰囲気の
話なのねぇ。
でもなんか間抜けな感じっていうのは伝わるよ。
なんにでも"IT"と名づけて予算取る、みたいな
IT 乱舞!の政府に似てるような…。
要するに Linux に話を戻すと
Linux を知らない人が「横取り」してるっていう感じなの?
Linux が食い物にされる図?

gN:
うんん、そういうとらえ方もできるけど、
「横取り」ってほどじゃない。
実力が必ずしも伴わないのに気勢をあげてみたというか、
それがなにかわかっていないのに
看板だけ立てたというのじゃないか、
必ずしも関係も展望もないのに。
それが既成の価値観における企業の名前が
ならんでいたので、
あたかもなにかであるかのように取り上げられたと
いうのが実情ではないかなぁ。
この回りで僕が感じるのは深い "discommunication. "
無理解というのかな。

marsha:
でも Linux はさらされやすい対象ではあるんでしょう?
"vulnerable" というのか、企業の攻撃に対しては。

gN:
うんにゃ、我々は脆弱ではないと思う。
脆弱なのは既成の価値観に踊らされる
民衆の方か。なんちゃって(笑)。

確かにこれは攻撃と言ってみてもいいかも知れない。
最悪の場合、これによって日本では開発が
「つまらないこと」と位置付けられちゃうから。
なににとっての攻撃かというと、この最も大切にすべき
コミュニケーションと信頼のモデルに対しての。
敢えて言えば、脅威だ。
社会と企業、企業と市民(個人)の関わり
というのを考えちゃうよね。

marsha:
むむむ、仁義なき、って感じ!
まさに研究者の危機って感じですか。

gN:
うん。そうかもしれない。
でもそんなにカッコ良い話じゃなくって、
礼儀も知らないと言ったら失礼だな、
どう対応していいか社会的な部分が
残念ながらわかっていないということだと思う。
成熟していればこんなことはないよね。
まだ、この周りのビジネスが、
オッカナビックリだという表れだと思う。

そして、このまわりで日本では社会的な整備が
何もないままに技術革新だけが来てしまって
ギコチなくなっている。
「司令塔」の対談の優秀なエンジニア(研究者)を
どう評価してどう活用するかという
社会的整備がなってないにつながるのかな。

少なくとも社会性を持つべき企業が、
僕らの研究成果の結果だけを、
その信頼のシステムを無視して
利用するということはあってはいけない。
これは社会を成立させる最低限のルールだと思う。
知的財産権の **前に** それはあるはずだ。

前にもマーシャに言ったけど
「自由」ってなんだろうね。
僕らは愛と自由を標榜しているのだけど。

marsha:
おお、愛と自由。
"source code の詩人"だもんね、gNくんは。
思う存分、叫んでくれたまえ。
ところで、それで、そして、この叫びは
どこに矛先を向けたらいいの? 企業?
常識のない人々? 研究開発システム?
宴会部長?(この際)

gN:
僕らのこの未成熟な社会に対してだよ。
頑張っているエンジニアを評価することなく
企業がまず評価されるというこの社会に対してだよ。
僕は、シリコンバレーはこの点が変わったから、
あれだけの力があって活躍していると思う。


* * * * * * * * * * * * * *
というふうに、gNくんは、
冷静に語ってくれているけれど
現状の日本の未成熟な社会に対して
めらめら怒りの炎がまーしゃには見える。
それにシリコンバレーのことも聞かなきゃ、だわ!
それは次の機会にしよう。

類似のケースで、Sunが「Java開発ツールキット」を
発表したときのこと(1999.12)。
開発に多大な貢献をしてきた
Linux オープンソースプログラマ集団(Blackdown)
の功績について何も触れなかったことに対して、
Sun はBlackdownに謝罪し今後の協力をお願いした
というのがあります。

法的に問題がないからといって、ボランティアで
開発を進めてきた功績をすっぽり取ってしまい
知らん顔を決め込むというのは、完全に
そして基本的にオープンソースのシステムを
「わかっていない」ということになるということの現れですね。
こういうのを“きほんのき”を外してる
というのではないかと
そのうち“お呼びでない”と言われるじゃないかと
思うんだなぁ、どうでしょう。
なんといっても人材がないとソフトは作れないのだから。

gNくんは、今、コンソーシアムに関わる企業に
説明を求めるアクションをとっている最中です。

gNくん、アンデッドゾンビーズに囲まれた社会さ。でも!
とりあえずラーメン食べて、闘おう!

昨日の吉祥寺「ぶぶか」はまるだったです。


marsha
special thanks to gN, T. fujise and Dr. SA
illustration by chika

2000-07-27-THU

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