vol.43
- pipopo papi -
アイボ日記を書こうかなぁと
前にぼそっとつぶやいたときに
編集長から即刻却下されたような
すっぱい記憶が…。
でーも、今日はアイボとロボットの話です。
(やめろっと言われても〜笑)
少し掘り下げようとは思いますが。
ここんとこ毎日、
センタンをウロウロしている
ニューカマーのアイボ(AIBO [ERS-210])の
動きをみていると、ロボットというものに、
どんどんリアリティを感じてくるから
なんとも不思議です。
こうなってくると
アイボのようなペット型ロボットの発展形として
これまでの工業用ロボットという位置付けでない
「生活密着型ロボット」の存在が
現実的になるっていうのも
それほど遠くないような気がしてきます。
たとえば、
病院、学校、図書館といった公共の施設には
キュートな「ご案内ロボ」。
道路で子供の横断を見守ってくれる旗を振る
やさしい「みどりのロボさん」。
(昔、みどりのおばさんとか呼ばれてましたよね)
暗い夜道をパトロール、犯罪を防ぐ女性の味方、
エレガントでたくましい「エスコートロボ」。
(ホストロボはちょっと違う…)
高齢化社会必須!聞いてくれるだけでもうれしい!
あるいは自信を無くしちゃった人にも
よいしょ!「たいこもちロボ」っていうのはどうか。
そんな、なんでもありになっちゃうか。
真面目な話、「介護ロボット」は実用化も近い
というニュース記事も読みました。
未来のロボットは、
当然インテリジェントなロボット。
つまり、学習機能を備え、
経験値をあげるたびに賢くなる、
言語を介してコミュニケートできる、
もちろんネットワークでつながっていて
必要な機関と即座の連絡がとれる、
なーんて、朝飯前でしょ。
もちろん、技術的にも倫理的にも、
安全性や信頼性が高くならなければ、
お話にもならないことは否めませんが…。
それでも、こんな未来を想像させるほど、
このアイボは未来を見透かす窓口になるみたい。
けっこうスゴイかも。
では、アイボの何がそんなに
リアリティを抱かせるのか?
言い換えれば、
どうやってアイボは人間に感動を与えられるのか?
それを探りたくなってきます。
私はそれはきっと、
”動きと感情表現”
”行動形式”
”バーチャル・リアリティ”
あたりにあるのではないかと思ったんです。
もともとアイボがセンタンにやって来たのは
この司令塔の一言から。
「研究素材としてさ、ひとつ、
最新のエンターテイメント・ロボットの技術を
分析・研究しなくちゃいかんなぁ…。
それで、福嶋さん、記事を書いてね。」
「はーい。」
そんなイキサツで
今年の始めからセンタンの狭いオフィスの中を
アイボがウロウロ動き回ることになり、
みんなで、ペット型ロボットの秘密を解き明かそうと
観察・分析を試みてるわけです。
もちろん、仕事をしながら、ですけど。
デスクの周りで、音楽がなるわ、ヘロヘロ〜って
しゃべってんのか、しゃべってないのかなんか
音がしてるわ、踊るわ、歌うわ、転ぶは
立ち上がるわ、もうみんなだんだん
「うるせー」と思い始めたころでもあります。
ショージキ言って。
使うソフトによって状況は違ってきますが
センタンのアイボは「AIBOライフ」という
AIBO-ware(ソフトウエア)を
お腹に差し込んで、
「自律成長型」アイボになっています。
言葉を50種類くらい覚えるという学習型。
名前は、みんなで毎日変えちゃうので
どれが本当の名前かわかりません…。
で、まず、私が驚いたのは「関節の動き」です。
想像以上にスゴイ動きをします。
各関節の動きが相当なめらかで
しかも動きに従って、
それぞれの関節が連動して動くので、
あたかも「筋肉」が関節を動かして
いるのかと思うくらい弾力性があり
それほど自然な動きに見えるのです。
それから感情表現をする「顔」。
これは、制作者の苦労、クリエイタの悲哀が
聞こえてくるエリアですねぇ。
つまり、努力がそれほど報われないというか…。
「これ、笑ってるんですよ、ほら!」
と言っても、
「ま、そういえばそうですね」
なんて、なかなかユーザに
わかってもらえなかったりするんでしょう。
だって説明書には
「これが喜び、これが怒り、これが悲しみ」と
パターン説明がちゃんとあって
それを決めてあるところからして
もう「伝わらない」ことが自明だったりするんじゃ
ないかと考えたりして(いじわるだ〜)。
話が飛びますけど
「感性工学」という、新しい研究領域が、
情報技術の中にあります。
これがまさしく、
『あいまいで、一人一人全く異なる
人間の神秘な領域ともいえる「感性」
というものを「記号化」することによって
コンピュータで扱えるようにしよう』という、
極めてチャレンジングな研究なんです。
たとえば「さわやかな絵」をインターネット上の
マテリアルの中から探し出す検索機能とか、
「やわらかい音」が欲しいといったときに
どこまで自分の求める音に近いものを
コンピュータが探してきてくれるか、とか。
人間の感性というものを、
工学的に分析することができれば
「ヒューマンマルチメディア」という
人間の感性により則したコンピュータが
実現できる、ということになります。
話をアイボにもどしますね。
つまり、将来、アイボの感情を示す
「うれしい」「いやだ」「悲しい」
といった、とてもあいまいなフィールドを
なんとかして数値化し表現しようする
非常にチャレンジングな技術が
必要になってくるのですね。
あるいは「感性工学」が進めば
逆に、人間の感情がアイボにわかる日が
来るのかもしれません。
今は、アイボの目の角度が
3つにあらかじめ設定されていて
感情の違いによって
その角度を変えて光らせ
「怒り、喜び、悲しみ」の感情を
なんとか伝えようとしてきます。
目だけでは表現力が足りないので
「目+しっぽ+顔の角度」など
しぐさを加えることで、複合的に
難関の感情表現のハードルを越えようと
しています。
で、そうやって一所懸命
自分の機嫌を伝えようとするアイボを
今度は人が、一所懸命理解しようとしている
ところがまたおもしろいんですね。
センタンでも、司令塔はじめ(笑)、
「あらら、怒っちゃいましたか?」
「うれしいの?悲しいの?」
とか、アイボに話し掛ける人が
いっぱいいます。
これが実にラブリーな光景で
ロボットと知りつつ、
「生き物」を相手にしている状況が
作られるんです。
このような、人の「リアクション」が実は
ペット型ロボット技術の要素として
とても重要だということを
センタンのコバヤシさんは指摘しています。
コバヤシさんの分析を読んでみてください。
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「ペット型ロボットは人間の関与の引き出し方が鍵」
AIBOの行動結果のフィードバックには2つのレベルがあり、
- 1)AIBOの行動の影響が、新たな行動の
条件検出を引き起こす
- 2)AIBOの行動の影響に対する評価が、
条件と行動の結びつき強度を変える
ペット型ロボットにとり、
その行動の影響対象の最も重要なものは人間である。
AIBOに相対しているとき、実は人間も、
(1)(2)により行動するものとして
設計に仕組まれているのだろう。
学習の効率は、人間の積極的関与を
いかに引き出せるかにかかっている。
そこで、色々な仕草で
人間からの干渉を誘い出したり、
ほめる/しかるに
対して表情で応えることにより
教師信号の提供を促進したりしている。
もしほめたりしかったりに対する
リアクションが無かったら、
多くの人は学習の効果を確認する前に
飽きてしまうと思われる。(S. Kobayashi)
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うーん、アイボに誘導される人間。
次の私のリアクションを予測して
今アイボは前足を前にだしているのか?
「お手、の次はおかわりが来るな」
と知っているのか、君は。
「ほら、来た…、おかわりだぜ。
もうわかってるよ、そう来ることは。単純だな、ふふ」
え?なんだ、そうなの?アイボの秘密?
あ、でも今日はおかわりしない。グレちゃったのか?
こんなふうに、つい翻弄されてしまってます。
いつのまにか…。
さてもうひとつ、アイボを見ていると
以前バーチャル・リアリティの話をしたときの
(vol.21 - 23 )
「バーチャルである」ということは
「本質的である」ということだという
舘先生の言葉を思い出しました。
「みかけや形は原物そのものではないが、
本質的あるいは効果としては現実であり原物であること」
あえて簡単に一言でいえば
「現実のエッセンス」 がバーチャルリアリティ
1. 人間にとって自然な三次元空間を構成しており、
2. 人間がそのなかで、環境との実時間の
相互作用をしながら自由に行動でき
3. その環境と使用している人間との境目がない、
いわゆるシームレスになっていて
人間が環境に入り込んだ状況が作られている
(NHK人間講座水曜日「ロボットから人間を読み解く」より)
アイボの場合を考えると
アイボは「原物そのものではない」
つまり「生きたライオンではない」けれど
効果として
「ライオン(どうも犬のように見えるんですけど)」
というか「生き物」に近いと思わせる
「エッセンス」を備えています。
それによって、
上記の1〜3の効果や結果をもたらしている
と言えるかもしれません。
そうだとしたら、
アイボが作り出す環境というのは
りっぱな「バーチャル・リアリティ」
であると言えるでしょう。
その中では人は、そこで起る事象を
現実と受け取ることができるという
ことになります。
長くなっちゃいましたが
最初の「アイボの何がそんなにリアリティを
感じさせるのか(感動を呼ぶのか)?」
これに対する答は
1 動きの素晴らしさと感情表現
2 人のリアクションを誘い出す行動
3 バーチャル・リアリティ環境が作られている
こんなところでしょうか。
とはいえ、対峙する人間側にも、
アイボに対するそれ相応の期待感がないと
その魅力は引き出せないはずなんだけど。
みなさんのアイボ観もぜひ聞いてみたいですね。
センタンのページには
もっとマジメなアイボ分析も載せました。
また読んでみてください。
次は(コンピュータ)音楽の話になります。
お楽しみに。
うがいしましょう(笑)。
marsha |