ナガオ |
僕が心配しているのは、
今さかんに宣伝されているような
自分から映像をみんなに発信する
パーソナルブロードキャスティングね。
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マーシャ |
はい。 |
ナガオ |
あれが、どうも僕には胡散臭いというか
危険なものをはらんでいるような気がして
ならない。 |
マーシャ |
おおお。 |
ナガオ |
それは、やっぱり有名になりたいがために
他人のプライバシーをあばいたり
盗撮したり。 |
マーシャ |
何でも流せるってことですよね。 |
ナガオ |
あれをやりだす人が出てくると
ひじょうに良くない世界になっちゃう。 |
マーシャ |
うむむ…。 |
ナガオ |
あれ、やっぱりマズイでしょう。
ひじょうにローカルな話題なのに
それがグローバルに発信されるということに
対して、また問題を感じるし、
それがまたノイズになるし。
そのローカルに関係ない人にとっても
「なんだろう?」と思って
その情報を見ちゃうし。
それを区別できないし。
インターネットの世界は
ロケーション・トランスペアレント
つまり、位置透過性っていう
言葉があって、
それは、物理的な位置に依存しないで
情報を発信したり、受信できるってことなんですよ。
今までは情報っていうのは
場所にある程度依存してたんですよ。
例えば、掲示板を作るとか、貼り紙をするとか。
人に口コミで流すにしても、
地域性があったんですね。
それがインターネットの世界で
場所という概念が無くなってしまって。
で、京都の情報をアメリカで出したって
いいし、っていう話で。
ま、それはいいことなんですけど。
うん。それはいいこと…なんだけど。
それがまた逆にワザワイしてしまうことが
あるわけですね。
ひじょうにローカルな話題なのに
全然関係ない人も見てしまうとか。
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マーシャ |
興味ある人にとっては
いいかもしれないけどね。 |
ナガオ |
でも、危険性はありますよね。
危険性って言っていいのかどうか、
わかんないけど…。
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マーシャ |
まあ、それがインターネットのメリット
でもあるわけですよね。 |
ナガオ |
そうなんですけど。
ローカルっていうことで、
ほんとは閉じていることによって、
暗黙的に情報がフィルターされてたって
ことが、無くなっちゃうわけですよね。 |
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ナガオ |
なんやかんや言って結構、危険なんですよ。
それがしかも、映像を含めてとなると…。
文章にするのは、ある程度、
作者の創作とか、ある意味で…。 |
マーシャ |
意図が反映されますね。 |
ナガオ |
何らかの形でね。
情報を整理するっていうフェーズが
1回入るから、いいんだけど。
ナマの映像をそのまま流すように
なると、これはマズイ!
ナマの映像を流すことぐらい
簡単なことはないから。 |
マーシャ |
映画とか、番組じゃないですからね。 |
ナガオ |
つまり、編集されたものじゃないし。
意図がない。単にナマ。
女子寮盗撮ってよくあるじゃないですか。 |
マーシャ |
オオオ!ありますねぇ。 |
ナガオ |
プライバシーね。
そういう危険性を絶対企業は言わないじゃない
ですか。 |
マーシャ |
言わない、言わない。
言ったら売れないもの。 |
ナガオ |
だから、そういう企業のやってることは
つまるところ、都合のよいことは強調して
悪いことはとにかく
隠蔽するということなんだって
僕は思ってるから。 |
マーシャ |
影の部分ですね、インターネットの。 |
ナガオ |
そういう危険性を、やはり
ある程度は、なんとか軽減したい。
それがまさに
マルチメディアのアノテーション
の話なんです。
アノテーションによって、
マルチメディアであろうが、何であろうが
きちんとそれに意味を持たせることができるし
責任の所在をあきらかにすることができる。
アノテーションはですね。
つまるところ、コンテンツに責任を
もたせるようなシクミなんです。
意味的に曖昧であれば…。
どこに責任があるのか。
もし責任を感じるなら、曖昧さを無くせと。
それはコンテンツを変えることではなくて
アノテーションを加えることによって
対処できる。
だから流してしまって
とりかえしがつかなくなった
コンテンツがあるとしても
後からそれに対するアノテーションが
ちゃんとついて、それを加味して考えると
曖昧さがなくなる。
誤解がなくなる。
責任の所在が明らかになる。
それでいいんです。 |
マーシャ |
それでフィルタをかけていくってことですか? |
ナガオ |
そうです!
それによってフィルタかけることもできるし
それによって自分用に
カスタマイズすることもできる。
そういう意味で、いいシクミなわけです。
情報の発信者にとっては、
責任の所在を明らかにするという、
社会的なコミットメントみたいな
そういうものを明らかにする手段。
情報の受け取り手にとっては
本当に関係のある情報は何かということを
取捨選択したり、コントロールしたり
できるしくみなんです。 |
(つづく。)