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‥‥どうしても行くんか? |
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はい、いろいろとお世話になりました。 |
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そうかぁ、残念やなあ。
この街にも、ぐっさんがつくるべきものは
まだまだあると思うけどな。 |
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ええ、それはそうです。
けど、ここで決意しないと、
ぼくはこの居心地のいい街に
ずっと居続けてしまうことになる‥‥。 |
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そうか‥‥。 |
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永田社長、こんなことわざを知ってますか?
「山に住む鳥は、
南に向かう渡り鳥に
赤いくちばしで叫ぶ」 |
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知らん。どういう意味や。 |
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それがぼくにもさっぱり‥‥。 |
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そうか‥‥。
逆に訊くが、こんな言葉を知ってるか?
「イモほりに来たオヤジが
モグラに驚いて
どひゃぁと言った」 |
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知りません。どういう意味ですか? |
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よう訊いてくれた。
これはな、
「イモをほりに来たオヤジさんが
モグラに驚いて
どひゃぁと言った」という意味や。 |
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‥‥で、それは、どういう意味ですか。 |
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どういう意味なんやろうなぁ‥‥。
(窓の外に広がる師走の街並みを見る) |
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(つられて窓の外の街並みを見る) |
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(バーン、とドアが開き)
失礼します! ぐっさん! |
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あ、西田くん。 |
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この街を出て行くって、ほんとですか! |
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うん。ほんとだよ。
いままでいろいろとありがとう。 |
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どうして‥‥どうして‥‥。 |
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西田くん、
こういう言葉を知ってるかい?
「トナーが残りわずかです」 |
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はい。 |
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これはね、
「コピー機のトナーが
残りわずかになりました」
っていう意味なんだよ。 |
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違いますよ。
「トナーの交換時期が近づいているので
トナーのカートリッジを
準備しておいてください」
っていう意味ですよ。 |
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‥‥あ、そうか。 |
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たしかに、そう受け取るべきやな。 |
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そうか、そういうことだったんだ。
ぼくはいっつもあれを読んで
「はい、わかりました」と
心のなかでお返事してたよ。 |
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わしもや。残りわずかなんやな、と。 |
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それじゃぜんぜん意味がないじゃないですか。 |
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そのとおりや。
で、数日後にトナーがなくなって
「おい、トナーがないぞ、
替えのトナーはどこや!」って
あわてて探したりしてな。 |
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ぐっさん。 |
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なんだい? |
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これ、なんの話ですか? |
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なんの話だっけ‥‥。 |
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(バーン、とドアが開き)
失礼します! コケー! |
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あ、キノピー。 |
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コケー! コケー! |
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うん、そうなんだ。
この街を出て行こうと思う。 |
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コケ、コケ、コケ、コケー! |
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うん、うん。わかるよ。
でもね、キノピー、
こういう言葉を知ってるかな。
「イモほりに来たオヤジが
モグラに驚いて
どひゃぁと言った」 |
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知ってますよ。
「イモをほりに来たオヤジさんが
モグラに驚いて
どひゃぁと言った」っていう意味でしょ。 |
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正解! さすがキノピー! そのとおりや! |
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(拳を突き上げつつ)
コケーーーー! |
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これ、なんの話ですか? |
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どうして、ぼくの旅立ちが
モグラの話に‥‥。 |
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しかし、ぐっさんがいなくなったら、
この街の工作はいったいどうなるのか‥‥。 |
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大丈夫です。西田くんとじゅんぺいがいますよ。 |
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いやいや、ぼくらには荷が重いですよ。 |
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そうッスね。 |
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お前、いつからいたんや。 |
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いやいや、もう、きみたちは立派な工務店だよ。
2013年、あんなにたくさんのものを
つくったじゃないか。 |
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たしかに、量だけは
なんとかこなせるようになりましたが‥‥
ぐっさんのように、
なにもそこまでというような
クレイジーな情熱は持てない! |
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ハッハッハッ、ほめられてる? |
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微妙や。 |
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‥‥。 |
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それはともかく、西田くんたちが
今年つくったものを
ざーっとふり返ってみようか。 |
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ハイ、それでは西田工務店の作品を、
写真で一気にふり返ります。
どうぞ!
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やーー、すごい、たいしたもんや。 |
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うん、うん、ほんとに、いい仕事。 |
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すごかー。 |
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がんばりましたが、
やはり、まだまだ未熟です。 |
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そうかなぁ。 |
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ぐっさんの今年の仕事を
ふり返ってみればわかりますよ。
ぐっさんの仕事は、ひと言でいうなれば、
もうあれは「業者」です。 |
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ハッハッハッ、ほめてる? |
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ぎりぎり、ほめてるかな。 |
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ハイ、それでは、ぐっさんの
2013年の仕事をふり返ってみましょう! |
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じゃ、まずは、
9月に渋谷のロフトで開催した
「手で書く手帳展」。
レイアウト、壁のグラフィック、
装飾など、デザイン全般を手がけました。 |
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‥‥業者や。 |
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‥‥業者ですね。 |
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少なくとも、「工作」のレベルではない。 |
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じゃ、ちょっと工作っぽい感じのものを。
安藤裕子さんのライブをやったとき、
セットと照明をてがけました。
ポイントは、ふだんよくつかっている
木材をほとんどつかわず、
ワイヤーを張って布をメインにしたこと。 |
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シャレとーー! |
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最後のプロジェクターを持ってる人はどなたですか? |
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大学時代からの友人、チダくんです。
彼は正真正銘、舞台効果のプロで、
サザンやミスチルのステージをてがけています。
安藤裕子さんのライブでは
映像を手伝ってもらいました。 |
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結果的にこれもぜんぜん「工作」っぽくないぞ。
しかも、映像は、ばりばりのプロが
手伝ってくれてたわけやな。 |
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じゃ、つぎ行きましょう。
2013年は、つくったものの
数は少なかったんですが、
ひとつひとつが企画も規模も大きかった。
いちばん大きかったのはこれかな?
気仙沼のツリーハウス!
大分県の友人、けんちゃんたちと、
約2週間でつくりました。 |
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これは、ぼくもじゅんぺいも手伝いました。 |
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うん。みんなでつくってたのしかった。 |
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しかし、これはもう、ほんとに。 |
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本職。 |
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せやなぁ。
もう、上手だとか、よくできてるとか、
そういうことじゃなくて、
「おつかれさまです」と言いたい。 |
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さぁ、それじゃ、最後の発表です。
これ、まさにぼくの工務店仕事の
集大成といってもいいです。
小物からポスター、全体のレイアウトや、
映像編集の演出などもやりました。
渋谷PARCOで開催して大好評だった
「はたらきたい展」です! |
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どひゃーー。 |
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すごかーー。 |
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ハラマキタワーや
sunuiさんとのコラボレーション、
プロジェクターの連結など、
ほんとうに集大成ですね、これは。 |
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うん、最終回にふさわしいね。
ちなみにこの「はたらきたい展」は
12月28日から梅田ロフトで
再び展示がスタートします。
関西にお住まいのみなさん、
ぜひ、来てくださいねー。 |
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最終回か‥‥。
ぐっさん、おつかれさま! |
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おつかれさまでした! |
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おつかれさま!
(パチーン☆) |
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はぅわ!
(ポワワワ~ン) |
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カパーーーン! |
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カパーーーン! |
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イタタタタ‥‥最後もやっぱり、
スリッパではたかれてしまった。 |
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よし、それでは、最後に、
みんなでクジを引くぞ。 |
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クジ? |
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クジって? |
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なんのクジですか? |
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ええか、この
「山口工務店納会」というコンテンツは、
2008年からスタートした。
どういうわけか、ベタベタのコント仕立てで、
最初はワシが社長役やったが、
年とともに社長役が代わり‥‥。 |
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2010年からはぼくが社長役に。 |
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2011年はぼくが社長に。 |
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2012年はわたしが成り上がりました。 |
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最終回の今年は、誰が社長になるか、
わしもようわからん!
そこで、クジ引きや!
当たったやつが最後の社長や! |
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え、それ、ぼくが当たったらどうなるんですか。 |
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うん‥‥ぐっさんが当たって
社長になったら‥‥この街に残ってもらう! |
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え! |
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旅に出るのはやめて、
この街で、工務店を続けてもらう。 |
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それはいいアイデアです! |
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永田さん‥‥粋なはからいを‥‥。
わかりました! お受けしましょう。
もしも、もしも、ぼくが社長役を引き当てたなら、
この街に残って工務店を続けましょう! |
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よっしゃ! あとはもう、ほんまに運しだいや。
みんなひくで! この箱のなかにクジが入ってる。
各自、ひいてくれ! |
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よーし、これだ! |
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ひきます! |
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はい、ひきました。 |
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みんな、ひいたな?
ほな、最後にワシがひいて。
さあ‥‥オープン! |
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ぼくのは‥‥ハズレです! |
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‥‥わたしもハズレ! |
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ということは? |
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‥‥ゴクリ。 |
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よし‥‥ワシのくじを見るぞ‥‥
‥‥‥‥ワシのくじは‥‥ハズレや! |
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じゃあ、つまり! |
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コケーー-! |
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ぼくのクジが‥‥‥‥あれ?
あの、ハ、ハズレです。 |
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ええ? |
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コケー? |
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ど、どういうことや! |
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あ、すんません、オレ、当たりッス。 |
一同
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えーーーー!! |
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じゃ、オレ、最後の社長ってことで。
これにて、一件落着。
まんじゅう真っ二つ。 |
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なんちゅう展開や‥‥。 |
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まさかの下克上‥‥。 |
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あっ、ぐっさんがいない! |
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あっ、あそこだ! |
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なんと!
ヘリウム満載の風船で遥か上空に! |
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みんな、ありがとうーーー!
さようなら、さようならーーー! |
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ぐっさーーーん! |
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さようならーー!
いままで、ありがとうございましたー! |
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ありがとーー! ぐっさーーん! |
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ありがとうー、みんなーー!
これからは、外注としてがんばるよー! |
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外注、受けるんかい! |