フランスが長寿国?
斎藤一郎先生のことばにひじょうに驚いた
われわれ

だってフランス人って、煙草を吸う人も多いし、
よく食べるしお酒も飲むし宵っぱりだし、
しかもフォアグラとかフライドポテトとか好きみたいだし、
見てると生野菜とかあんまり食べてる感じもしないし、
ガツンと甘いものだって大好きだし、
ジムとかあんまり行ってないように思えるし、
日光浴なんかもすごく好きみたいで、
日焼けとかぜんぜん気にしていないどころか
焼けた肌が夏のバカンスのあとのステイタスだって
言うじゃないですかー。
その自由な感じは、まあ、
長生きしそうな精神性ではあるけれど、
「健康」「長寿」というイメージからは、遠い。
そのフランスが、じつは長寿国‥‥。ふしぎだ。

勝手なイメージのなかでの怠惰なフランス人

すると、横で聞いていたが横腹をつつき、
小声で耳打ちします。

「あれ? 武井さんの横腹、さすがの贅肉ですね」

そんなことはどうでもよろしい!
それよりなんだい、いま斎藤先生のお話を
聞いているところだというのに。

「いや、じつは、そういう本を読んだことがあるって
 思いだしたんですよ」

そうでしたそうでした!
その本というのは、西本が見つけてきた
『フランス女性は太らない 好きなものを食べ、
人生を楽しむ秘訣』

シャンパンの「ヴーヴ・クリコ」
アメリカ法人のCEOをつとめた
フランス人女性の書いた、
フランス的ライフスタイルのすばらしさを啓蒙する本です。
「こういうふうに考えて、
 こういうふうに食べて、
 こういうふうに暮らしているから、
 フランス女性は魅力的なのだ!」
ということが書かれていました。

ちょっと話がそれますが、
そもそも西本とこの本って、そぐわないですよねえ。
ここに至るにはちょっとした経緯がありました。
あれは伊勢丹の催事、チョコレートの祭典
「サロン・デュ・ショコラ」に取材に行った時のこと、
あるショップの責任者である
フランス人マダムの色香に、クラクラきちゃった、
というのが、はじまりです。

彼女は、あきらかに西本より年上の女性だったのですが、
たしかに色っぽく、うつくしかった。
デコルテっていうんでしたっけ、胸もとを大きくあけ、
姿勢がよく、けれども媚びた感じはしない。
彼女からちいさな箱入りのチョコレートを買った西本は、
ぽわーんとしながら「オレ、抱かれてもいいッス‥‥」
とまで言ったので驚きましたよ。まったくもう!
そして「なぜフランス人女性はあんなに魅力的なんだろう」
ということに疑問をもった西本が、
その本をみつけてきた、というわけです。
以上、ちょっと余談でした。

「斎藤先生はつづけます。

「フレンチ・パラドックスって言われているんですよ」

パラドックス! やっぱり不思議なことなんですね。

「そう、どうしてあの食生活をしている
 フランス人が長寿なのか、健康なのか?
 ぼくらの医学の業界では、フランス人って
 すごく特異的なんです。
 たとえば隣りのドイツやイタリアに比べると、
 脳梗塞と心筋梗塞が少ないんですよ」

あんなにあぶらっこいもの、食べてるのに。

「けれども、いろいろ調査していくと、
 フランス人の守っている文化や伝統が、
 すごく強いゆえじゃないかとわかってきました。
 たとえば彼らは、アメリカのファストフードを
 なかなか受け入れていませんよね。
 これだけアメリカがプロモーションをかけて、
 フライドチキンやハンバーガーを輸出しようとしても、
 フランチャイズ化しないし、チェーン化しない。
 断固として自分たちのライフスタイルを守る」

なるほど!

「フランスでカフェに行くと、
 うんと小さなテーブルで、
 食べたり飲んだりしていますよね」

そうですそうです!
カフェテーブルって、ちっちゃいですよね。
あれじゃ、大きな皿はひとつしかのりません。
しかも隣の人と肘がふれそうなくらい、ぎっしり。

▲わかりにくいですがパリのビストロ。ひとりぶんのスペースが狭い! 立ち食いそば屋なみ。

そういえばフランス人って
「大皿からみんなでとりわけ」
なんてこと、しないみたいですね。

「そう。つまりは、日本の懐石料理と一緒ですよ。
 ちょっとずつ、長い時間、
 いろんな種類を食べているんです。
 ‥‥ということは、おわかりですよね?」

はい! 先生、その食べ方は
「血糖値が急に上がらない」食べ方です!

「そうです。食べているものは違えど、
 食べ方に関していえば、日本の伝統的な食生活と
 かなり近いスタイルなんですよ。
 そして、もうひとつ、フランス人の食生活には
 だいじな長寿の要因があるんです。
 じつは『長寿遺伝子』というものがあることが
 医学的にわかっているんですが‥‥」

長寿遺伝子!

「これはもともとみんなが持っている遺伝子なんですよ。
 持っているんだけども、発現しているか、しないかの
 違いがあるんですね。
 その長寿遺伝子は、サーチュインのひとつで
 サーティーワンっていう
 アイスクリーム屋みたいな名前なんですけども、
 その遺伝子を活性化するためになにが大事かというと、
 ひとつは、カロリー制限です。
 カロリーをおさえると発現してくる遺伝子なんです」

げっ! また出ましたね、カロリー制限!
きびしいお言葉です。
横で西本は大喜びです。

「けけけ。武井さんは長寿遺伝子発現ゼロですよ、いま!」

うるさいというのだ。

斎藤先生は笑顔で続けます。

「カロリー制限をすると、長寿遺伝子が活性化して、
 いろんな病気の発症をコントロールしてくれるんですよ。
 でも、カロリー制限をするのって大変ですよね。
 だからカロリー制限をしなくても、
 カロリー制限したような薬だとか、
 食品だとかあったらいいねって、
 みんなが探しているわけです。
 そして見つかったのが、
 『レスベラトロール』っていう物質です」

レスベラトロール、初耳です。

「ポリフェノールの一種です」

あっ! ということは、わかりましたよ、先生。
フランス人が長寿遺伝子を発現させているのは
赤ワインをいっぱい飲んでいるから!

「正解です。レスベラトロールは、
 赤ワインの中にたくさん含まれています。
 そしてフランスは世界で最大の赤ワインの消費国。
 だから世界一レスベラトロールを摂っている国民ですね。
 そこで長寿遺伝子が発現して、
 糖尿病やガンを防いでいる、
 そういうふうに、いま、言われているんです」

おーーーーっ! 激しくうなずくわれわれ。
西本が、ぐいぐい身を乗り出して言います。

「先生、僕はもう芋焼酎はやめます!
 決めました! 赤ワインにします!
 今日からぼくは赤ワイン党です!」

なんというお調子者‥‥。

「(笑)いいことですよ。
 ぼくらは、蒸留酒を好んで飲む人、
 たとえばウォッカとかを飲む人には、
 それ、やめましょうよ、って話をします。
 蒸留酒を飲んでる人のほうが、食道ガンや、
 上咽頭ガンのリスクが高いんですよ。
 刺激が強いんでしょうね。
 さらに、たとえば葉巻を吸っていると、
 咽頭ガン、食道ガンのリスクが一気に高くなる。
 こういったことは、医学的には定説です。
 だから、ぼくらの学会の人たちは、煙草は吸わないし、
 ウィスキーとか、ハードリカーも飲みません。
 みんな、シャンパンかワインです。
 蒸留酒は、時々おいしいなと思って
 飲むのはいいんですよ。
 けれども毎日習慣的に飲むものであれば、
 醸造酒のほうがいいです」

「先生、日本酒はどうでしょう。

 日本酒も、いまは質がよくなっているので、
 いいと思います。
 けれどもレスベラトロールだけの話をすれば、
 赤ワインのほうが、
 白ワインや日本酒よりも多いということです」

いやあ、今回はうれしいなあ。
だって「おいしいうえに身体にいい」ですよ!
これこそぼくの望んでいたことじゃないですか!!

(つづきます!)

このことがきっかけで、
それまで家では芋焼酎の
「黒霧島」ばかり飲んでましたオレですが、
焼酎をやめて、赤ワインに一気に傾倒していきます。
そしていきついたのが
「ワインをおいしく飲むにはグラスがとても大事らしい!」
ということ。
そうやって「ワインがおいしくなるコップ」がコンセプトの
「ワインのコップ屋タカハシヨシヒコ」がうまれたのでした。
だから、ワインだけでなく、ワイングラスやコップも
アンチエイジング的には大事なんですよねー。

▲これが高橋禎彦さんのワインのコップなのだ。

2014-05-22-THU