「武井さん、結果が出ましたよ。あなたのDNAは‥‥」

ここは鶴見大学歯学部附属病院アンチエイジング外来。
やさしいやさしい斎藤一郎先生が、検査結果の用紙を前に、
ぼくに語りかけます。

「ミトコンドリアハプログループF、
 くわしくは、F1b1a、でした」

ハプロ? えふいちびーいちえー?
聞いたことのない言葉に、かなりキョトンとするわれわれ。
先生、それはいったい、どういうことなんでしょう???


「いわば‥‥飢餓時代のヒーロー、ですね」

飢餓時代のヒーロー?!
かっこいいような、そうでもないような。

ちょこっと話はさかのぼります。
アンチエイジングの基本的な考え方について
これまでたくさんのお話を聞かせてくださった斎藤先生。
聞けば聞くほど、
「やってこなかったこと」(有酸素運動とか)と
「過剰にやってきたこと」(食べすぎとか)が
あからさまになってしまった、わたくし。
「まずやるべきこと」は検査でした。
その後、あらためてぼくは大学附属病院に伺い、
ぼくは「アンチエイジング検査」と「DNA検査」を
(西本は「アンチエイジング検査」のみを)
受けたのでした。

アンチエイジング検査は、具体的には‥‥

をおこないます。そしてDNA検査のため、
口腔内の細胞をちょこっと取ります。
(別に痛くはありません。)
ちょっと変わった人間ドック、くらいの感じかな。

▲まず問診表(たっぷり)に記入します。

▲設問はけっこう細かいのです。

▲やや緊張しつつ、検査を待ちます。

▲呼ばれました。歯医者さんみたいでしょう? 歯医者さんだもの。(アンチエイジング検査とは、口腔の老化度の検査なのです)

▲このコップは「時間内にどれだけ唾液が出るでしょう」という検査用。けっこうヨダレマンでした。

▲髪の毛を切り取って、毛髪ミネラル検査もします。有害ミネラルの残留や、必須ミネラルの数値がわかるんだって。

▲いろーんな検査を終えて、後日の検査結果を待つのです。

わかっちゃいるけど、やめられない。

ここで話は冒頭の検査結果にもどります。
ぼくのDNAは、
ミトコンドリアハプログループF1b1a。
母親からのみ子どもに伝えられるミトコンドリアDNAは、
母親の母親、またその母親と、ずーっと同じ。
これを調べることで、
もともとアフリカで発祥したぼくらの祖先が、
どこをどうたどって今の場所にたどり着いたのか、
そのおおよその足跡がわかるというのです。
このミトコンドリアのDNAのタイプのことを
「ハプログループ」といい、現在、体質との関係の研究が
進められているものなのです。

「武井さんのF1b1aというのは、
 日本では全地域に見られるDNAで、
 日本人全体の3%ほどです。
 世界的に見ると、
 台湾を含む中国東部地域に多いグループですね」

ああ! なんとなくそのあたりの顔立ちに、
なじみがあります。台湾に行った時にちょっと思いました。
そういえば母の兄弟姉妹、ぼくの伯父や伯母ですが、
みんな顔が濃くて派手ですよ。

ちなみに、ウィキペディアによると、
このグループ「F」は、
東南アジア最大規模の人口を持つグループ。
日本には縄文時代、
南方諸島から上陸したことがうかがえるそうです。
このFのひとびとが顕著に多いのがニコバル諸島で50%、
インドのアルナーチャル・プラデーシュ州で31%。
ジャワに28%・小スンダ列島に23%、
長江以南の中国、
特に雲南省のラフ族にかぎると77%(!)、
広州に26%、ベトナム26%、
ラオスとフィリピンが29%、台湾原住民に27%。

うわー、祖先、ちりぢりー。
この並びを見ると、わりとこう、
たくましく生きてきた人々という感じがしますね。
「瞬発系・パワー系の競技者群において、
 ハプログループFの頻度が高い」ともあるから、
ぼくが筋トレが好きで持久走が苦手なのも、
理由があったんだという気がします。

「そうなんです。そして武井さんは、
 DNAから言うと、
 2型糖尿病に罹るリスクが高いんですよ」

2型糖尿病?! が、がーん!

「飢餓の時代には、武井さんのように
 少しの糖でも血糖に反映される体質は、
 効率がよかった。
 食べ物が不足したときでも、ちょっとの食べ物で、
 効率よく糖代謝が行われて、血糖となって、
 すぐに狩りに出かけることもできた。
 けれども、現代において、
 糖が過剰に摂取できるような状況からすると、
 血糖値が高くなればそれをコントロールしようと
 膵臓のβ細胞からインシュリンがドバッと出る。
 それを繰り返していると、膵臓がやられて、
 2型糖尿病になっていくわけです。
 だから飢餓の時代に生まれれば、サバイバーだった。
 かつて人類が飢餓の時代を乗り越えるときに、
 非常にいい体質だったんです」

けれども、現代においては、TOO MUCHであると‥‥。

「その通りです。長生きしたかったら、
 やはり、改善が必要ですよね」

しゅーん。その通りですよね。



さらにアンチエイジング検査の結果、
わかったことがいろいろありました。

●悪玉コレステロール値が高い
●血液中の中性脂肪も多め
●つまり、血管年齢は年齢に比べて老化が進んでいる!
●ホルモン年齢は良好に保たれている
●糖代謝も正常に機能している
●肥満関連因子は高め
●咬合年齢、歯年齢、唾液年齢は若いが、
 歯周年齢とのみ込み年齢は高め
●免疫機能、代謝機能は100点!
●抗酸化能、生活習慣、
 ストレス抵抗性はいずれも80点以上!



ああ、いいところと、わるいところが、
かなりハッキリ出ています。
それと‥‥ショックだったのがやっぱり
「血管年齢 67歳」
‥‥ですよ!


くわしい解説を読むと、高血圧の傾向があり、
高コレステロール血症で、
動脈硬化寸前だと書いてあります。
血圧が年々上がっているのは
人間ドックでもわかってたけど、
まさか動脈硬化の四文字を目にするとは‥‥。


ああ、うすうす思っていたことが数字になっちゃいました。
いいところもあったことが、かなりの救いです。
ホルモン年齢だけはやけに若いんだよね‥‥。

先生、これから、具体的に何をすべきか、
くわしくアドバイスをくださーい!

(つづきます!)

会社への帰路、
ぼくの検査結果を見た武井さん。





「むむむ! やっぱり健康だね。
 でも、ホルモン年齢は
 ぼくのほうが若いじゃない?!」
と、すでに危険水域に達している
その他の数値をないことにして
ホルモン年齢一本でぼくに勝負を挑む武井さん。
「あの、武井さん、この検査をした日って
 ぼく、フルマラソンを走った翌日だったんで
 そもそも身体がボロボロの状態だったんですよ。
 それに健康診断に勝ち負けはないですから」
と、言い返そうと思ったんですが、
危険水域数値を目の前にした
この日の武井さんは、落ち込んでいたように見えました。
原稿では明るめに書いてるけど。
「さすが武井さん!
 男性ホルモン出まくりじゃないですか!」
と、いいながら、二人で回転寿司を食べました。

2014-06-19-THU