2005年9月9日から10月30日までの現場からです。
  10月30日(日)更新

メキシコで保管されていた『明日の神話』ですが、
まずはそれを開梱することから
作業ははじまりました。
今日は、そのもようをお伝えします。
メキシコで『明日の神話』の画面には、
写真のように発砲スチロールがあてられていました。
それを鉄の枠で押さえるようにして、
保管されていたのです。
これは、作業班がメキシコの保管場所に到着して、
作品の損傷を確かめているようすです。
大きく割れてしまっているところもあります。
次回は、メキシコでの解体梱包作業のもようを
お伝えいたしますね。

それでは、また。
10月28日(金)更新

今日からしばらく、
メキシコで『明日の神話』が
保管されていたときのことや、
日本へ持ち帰るようすをお伝えしていきますね。

これは、保管をされていたときの写真です。
発砲スチロールを画面に当てたあとに、
青や赤のビニールシートで覆われていたんですよ。
  10月23日(日)更新

いま、修復現場の壁画は
全体の14分の5が立ちあがり、
あいた作業台のスペースには
最後のパネル(Gパネルと呼んでいます)が
乗せられています。

今日は、そのGパネルの、
欠損部を埋めるパーツの製作風景をお伝えします。
欠損部分のかたちを裏から
透明のフィルムに写しとります。
先ほどのフィルムの形に合わせて
ケイ酸カルシウム板を切り抜き、
欠損部分を埋めるパーツをつくります。
作業をしているのは、修復スタッフの村木玲子さんです。
(粉塵を吸わないようにマスクをしています)
切り抜いたパーツが
壁画の欠損部分に合うかどうかチェックします。
製作したパーツを、エポキシ接着剤で接着します。
裏からの作業はこれで終わりです。
これから裏面全体の補強を行ない、
壁画がすべて立ち上がったあとに、
画面から細かな絵の具のタッチを
再現していくことになります。
  10月19日(水)更新

みなさまからいただくメールを、
とてもうれしく拝見しています。
応援や励ましのメッセージは
修復現場の大きな力になっています。
ありがとうございます。

たくさんの方々に
いろいろな形で応援していただいいて
ひとつの絵を再生させていく
今回の『明日の神話』再生プロジェクトに
参加させていただいたことを
私自身、とても光栄なことだと思っています。
通常の絵画修復では味わえない経験を
させていただいています。

さて、先日は壁画立ち上げのようすをお伝えしましたが、
作業内容としては少し前に戻るんですけれども、
今日は、壁画の小さなパーツの接合作業について
書こうと思います。
壁画は、メキシコからの輸送をしやすくするために、
画面の損傷(亀裂)に沿って
分割して日本に持ち帰りました。
そして、日本で最初の作業が
ジグソーパズルのようになったパーツの
接着作業となったのです。
この箱の中に壁画のパーツを入れて、
割れた面の形を整えます。
実際の作業風景です。
作業をしているのは修復スタッフのひとり、
上條法子さんです。
割れた面には、メキシコで以前に
修復されたときの接着剤がたくさん残っています。
この接着剤が邪魔をして
図柄がなかなかきれいに合わなくて苦労します。
箱の中は粉塵を逃がさないように
集塵機で負圧に保たれています。
割れた面を整えるために、
歯科用の工具を使って慎重に少しずつ研磨していきます。
形を整えた面が
きれいに合うかチェックしているようすです。
きれいに合っていれば接着していきます。
  以上が小パーツ接着までの大まかな流れです。
次回は、欠損部パーツの製作と
接着作業をお伝えしますよ。
  10月14日(金)更新

今日は、壁画立ち上げの最後まで、
お伝えしますよ。
壁画の角度を、水平の状態から
ゆっくり起こしているところです。
緊張します。
壁画の下部に取り付けられた車輪と
レールを合わせているところです。
なんで垂直に立ててからレールに載せないのか?と
みなさんに訊かれそうですね。
『明日の神話』は大きすぎて
作業場のクレーンで吊り上げるのは、
この角度がギリギリなのです。
ここから先は、手動のウィンチで
慎重に巻き上げて壁画を立てていきます。
間近で見ていて、これはほんとうに
たいへんな作業でした。
そして、これが立ち上がった壁画です。
(もちろん、壁画の一部分ですよ。
 7枚のうちの1枚です)
ほかの太郎作品にはない、
スケール以上の迫力とオーラを感じます。
下から見上げると、こんな感じに見えます。
ずっと見ていると、首が疲れそうです。
  以上、壁画立ち上げのご報告でした。
  10月13日(木)更新

『明日の神話』の修復作業は、これまで
裏面の修復と補強に力が注がれてきました。
そして、いよいよ、壁画を立ち上げる日がやってきました。
今日は、立ち上げ作業のようすをお伝えします。
大人が4人も頭を寄せ合って何をしているかって?
壁画を吊すベルトにフックが通らなくて
苦労しているところです。
気が急きますが、ていねいに作業をします。
やっと吊り上げベルトがつきました。
いよいよ壁画の立ち上げがはじまります。
壁画が、ガラスのステージから離れた瞬間です。
いろいろな意味で緊張しました。
修復チームのリーダー、吉村さんも
注意深く見守っています。
「画面が見えた!」
2ヶ月間、ほぼ毎日壁画の裏ばかり見てきた自分には、
画面が見えたこのときは、
緊張と感動の一瞬でした。
次に、壁画を立ち上げるために、
作品を移動させます。
さあ、これから、
作品を徐々に垂直まで起こす作業がはじまります。
  今日、お伝えするのはここまでです。
続きは、また明日お伝えしますね。
10月9日(日)更新

今日お送りする写真は、
作業台の上に並べた壁画パーツ
6枚分すべての接合が終わったようすです。
残すは、作業台に載せきれなかった1枚のみです!

2ヶ月前の、バラバラの状態を考えると、
自分でも、よくここまで戻ったと思います。

今日は、もうひとつご報告があります。
壁画の最初の立ち上げ作業が、無事終了いたしました。
そのときの写真をたくさん撮りましたので
後日またお伝えしますね。

それでは、また。
今日は寝ます。おやすみなさい。
  10月6日(木)更新

こんにちは、みなさん。

今日は、先週行なわれた
壁画裏面とアクリル樹脂板とを
接着する作業の様子をお伝えします。
「明日の神話」はとても大きいので、
以前にお伝えしたリハーサル風景とは違って
たいへん大がかりな作業になりました。

接着準備をしている様子です。
右に組まれたタワーの上から、高低差を利用して
画面裏にエポキシ接着剤を流し込みます。
タワーの高さは、地上から5m。
接着剤は透明の管の中を流れていきます。
タワーの上で、流し込むエポキシ接着剤の
準備をしている様子です。
右側に設置してあるスポットエアコンで
接着剤の温度が上昇しないように、
冷やしながら流し込みます。
接着剤の温度を下げることによって、
接着剤の硬化時間を遅らせて
流し込みの作業時間を延ばし、
壁画の隅まで接着剤を行き渡らせることができます。
タワーの上で作業をなさっているのは、
壁画裏面補強をお願いしているアクリル樹脂の専門家、
井上さんのチームのスタッフ、久富さんです。
透明の塩ビ官の中を流れていくエポキシ接着剤です。
非常にゆっくりとしたスピードで流れていきます。
エポキシが、壁画裏面とアクリル樹脂板の間に
流れ込みはじめました。
エポキシの中に気泡がないかチェックをしている、
裏面補強担当チームのリーダー、井上さんです。
すでに流し込みの終わった壁画の裏です。
壁画にあった亀裂の跡が、
白っぽく見えてよくわかります。
アクリル樹脂板の接着が終わったら、
今度は写真のように
厚さ3cmのアクリル板で補強のリブを接着します。
この写真は、
欠損部分の形に合わせてパーツを制作して埋めた部分
(a1と書いてあるのが、わかりますか?)を、
アクリル樹脂板の接着が終わったあとに
撮影したものです。
  次回は、
作業内容としては少し前の作業に戻りますが、
欠損部分に埋めるパーツの制作や
亀裂を埋める作業のようすを
お伝えできればと思っています。

それでは、今日は失礼します!




10月2日(日)更新

こんにちは、みなさん。

今日は、作業場に壁画を立てるための
レールを設置する工事が行なわれ、
無事に作業が終了しました。

『明日の神話』の裏面補強を
いまは行なっているのですが、
それが終わりましたら、
裏面下部にキャスター(車輪)を取りつけて、
レールの上を壁画が
左右にスライドできるようになるんです。
ちょっと、びっくりでしょう?

これで壁画の側面にもスペースができるので、
側面を修復できるというわけです。

はやく表や横が修復できるように、
いまはコツコツと裏の接合と修復をがんばります。

では、また。
9月27日(火)更新

今日は作品の裏に
アクリル樹脂板を設置しようとしているようすを
『明日の神話』再生プロジェクトの
ゼネラルプロデューサーで岡本太郎記念館の館長である、
平野暁臣さんが見にいらっしゃいました。
この作業はとても大がかりなものになりそうです。
何といっても、作品が大きいですから‥‥。

それでは、また。
9月22日(木)更新

今日の写真は、ふだん修復の仕事をしている
山梨のアトリエです。
用があって、2ヶ月ぶりに戻りました。

愛媛行きの準備で
慌ただしく出て行った時のままです。


9月21日(水)更新

こんにちは。
今日は、修復スタッフのリーダー、
吉村絵美留先生の作業風景写真を紹介します!
これは、接着作業をしているところです。
「この体勢は辛い!」と言っていました。

2枚目は、作業場の顔料を並べてある棚を撮りました。
なんとなく、壁画の修復現場って感じがしませんか?
9月20日(火)更新

早朝からのテレビ中継のあと、そのままの勢いで
作業をしてしまい、スタッフ全員、
あくびと「眠い」のひと言ばかりの一日でした。

他人事ながら「明日の神話」のスケールの大きさと、
修復現場のようすを
短い中継時間で伝えるのは大変だろうなぁ〜、
と思いました。

ところで、「明日の神話」フォーラムのページで
解体状況に合わせたシグソーパズルのアイデアを
寄せていただきました。
商品化されたら、僕も是非欲しいです!
そのときは、欠損部は白いピースでつくっていただけると、
自分で「明日の神話」の一部を再現できたりして、
太郎さんと一緒に制作した気分になれて
楽しいのではないでしょうか?

実際の絵画修復で欠損部分の扱いは、
大きく分けて以下の3つになると思います。

1.作品のオリジナリティーを尊重して
  欠損部分は残し、損傷がこれ以上進まないようにする
  処置だけをする。
2.作品を見る人に修復部分が識別出来るように、
  欠損部分には中間色(グレーなど)や
  作品に近づけば修復部分が分かるよう補修を施す。
3.作品が描かれた当時の状態に近づくように、
  欠損部分に補彩を施して復元する。

以上の3つに分けましたが、
いずれの場合も修復家が
修復のためにあとから付け加えたものは、
オリジナル作品を傷めることなく
あとで簡単に除去出来る素材を使うことが
前提になっています。
(今回の「明日の神話」に関しては、
 通常の絵画とは違う特殊な素材が使われているため、
 一部除去しにくい材料も使っております)

今回の「明日の神話」修復方針は、
岡本敏子さんの
「太郎さんが描いた当時の綺麗な状態で
 みんなに見せてあげたいわ」
という要望に添って、
上に挙げた3つの方法のうち、3番の修復方法で、
欠損部分は4点の原画と写真などの資料を元に
復元します。

では、今日はゆっくり寝ようと思います。
おやすみなさい。








9月18日(日)更新

壁画の裏面を
透明のアクリル樹脂で補強するために、
東京からアクリル樹脂を扱うプロの職人さんたちが、
サンプルテストのため
現場まで来てくださったので、
今日はそのようすをお伝えしますね。

なぜ壁画の裏を
アクリル樹脂で補強するかといいますと、
ジグソーバズルのようになってしまった壁画を
接合しただけでは
強度的に自立するのが不可能だからなんです。

1枚目の写真は、
作品に見立てたサンプルを製作して
用意しているようすです。
この職人さんたちは、
普段は水族館の水槽などを作っているのです。

2枚目は、流し込む接着剤を攪拌しているところです。
見た目は、ちょっと蜂蜜みたいですね。
(でも舐めてみる気はしませんよ)

3枚目は、気泡を取り除いた接着剤を、
3メートル弱の高さから、重力を利用して
流し込んでいます。
このとき、壁画の裏とアクリル板の間には
あらかじめ接着剤の流れ込む隙間が
3ミリほど作ってあります。

銀色の枠とアクリル板の間には隙間があって、
その間からアクリル板と壁画の裏面の空気は
流れ込んだ接着剤に押し出されて綺麗に接着されます。
接着剤の性質上、黄色みがかっていますが
裏のようすは透けて見えます。
ですから、実際の作品では
裏から亀裂のあった場所が、修復後も見えるのですよ!
9月16日(金)更新

修復場所を貸してくださっている方に頼んで、
普段は入れない場所から
写真を撮らせてもらいました。
改めて「明日の神話」のスケールの大きさを
感じました。
写真を撮った場所がとても高い場所だったので、
ちょっとした恐怖も感じましたよ。


9月14日(水)更新

『明日の神話』のシンボルでもある
ドクロの部分の接合が終わりました!

以前「ほぼ日ニュース」に掲載されたときは、
ちょうどドクロの頭の部分で分かれてました。
亀裂に沿った細かい欠損部は、
壁画のすべてのピースを接合してから、
立ち上げて修復します。

ドクロの部分をステージの上から
(つまり、裏側から)見たようすです。
グレーの線が接着した部分で、
グリーンのベルトはパーツとパーツを寄せるために
ウインチで引っ張り合わせています。
段ボール箱は壁画のそりを押さえるために
工場にあったボルトをウエイトとして
拝借しています。
(通常の絵画の修復では考えられない光景です!)


9月13日(火)更新

修復作業は、
全体の7分の3の接合が終わったところです。
(順調です)
ただ毎日、絵の裏側ばかり見ているので、
絵画の修復というより、
感覚としては、
ひび割れた25メートルプールでも
直しているかんじです。
(あぁ、早く画面が見たいです)


先日は台風の影響で、暴風雨がきました。
愛媛県にも修復現場の近くの
いつもはカラカラに干上がっている
重信川も、ご覧の通りでした。

東京でもすごい雨でしたね。
ニュースで見てビックリしました。


9月9日(金)更新

みなさん、こんにちは。
愛媛で、『明日の神話』を修復している山田星仁です。
9月に入りましたが、暑い日がつづきます。
気温計が33度を指しています。
冷房設備がなく、窓を開けていますので、
蚊が「ぷぅ〜ん」と来ます。
血をたくさん吸われました(怒)。
そのせいか、今日はちょっと貧血気味でした。
蚊以外にも作業場には、
セミ、とんぼ、蝶々、スズメバチ(恐怖)など
いろいろ飛んできます。
まさに大自然の中で修復をしている感じです。

これから、『明日の神話』修復の状況を
お伝えしていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

山田星仁
『明日の神話』修復チームへのメッセージは、
メールの表題を「明日の神話」として、
postman@1101.comまでお送りくださいね。
お待ちしています!
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