2006.09.30

 

愛媛の『明日の神話』修復現場から、修復チームの山田星仁さんが
『明日の神話』の修復作業について、
書きつづってくださった記録です。


2005年9月9日から10月30日まで
2005年10月13日から12月22日まで
2006年1月12日から6月5日まで
  9月30日(土)更新

みなさま、ごぶさたしています。
『明日の神話』修復チームの山田です。
お元気でいらっしゃいますか?
『明日の神話』の汐留展示が終わって
はや1ヶ月が過ぎようとしています。

私の仕事は、最近やっと
愛媛へ行く前のペースに戻りつつあります。
『明日の神話』の修復のために愛媛へ発つ前は
「帰ったときにはきっと
 仕事がなくなっているんだろうなあ」
なんて思っていたのですが、
いまは修復を待つ絵画に囲まれて
すごしている毎日です。
さて今日は、展示最後の日となった
8月31日のようすと、
その後、壁画が入った木箱を吊り上げた
大がかりな移動作業のようすを
お伝えしたいと思います。
約2ヶ月間の展示が終わりました。
みなさんにとってはフィナーレでしたが、
私たちにとっては「これからまたひと仕事」です。
展示が終わったあとの作品の状態を
チェックしている吉村さんです。
『明日の神話』を見守っていた、
太郎さんと敏子さんの大きな写真も
役目を終えて取り外されていきます。
約2ヶ月のあいだに作品についたほこりをはらい、
画面にコーティング剤のニスを吹きつけている
吉村さんです。
さて、ここからは壁画の運搬風景を
お伝えします。
『明日の神話』は「TARO MONEY」の木箱に
再び収まり、ブルーのシートで覆われます。
展示されていた
地下2階から地上まで、壁画を1箱ずつ、
クレーンで運び上げます。
吊り上げられた木箱は、
11トントラックに2〜3箱ずつに分けて積まれ、
倉庫に向けて出発します。
  こちらのムービーにそのようすを
おさめましたので、どうぞごらんください。

『明日の神話』の一般公開も
「ほぼ日」のみなさまをはじめとする、
色々な方たちの力をお借りして
無事に終えることができました。

ありがとうございました!

このページをお読みのみなさま、
力不足ではございましたが、
1年間『明日の神話』の
「修復現場から」を担当させていただき
ありがとうございました。

またいつか、お会いできる日まで。
(もしかしたらその日はすぐ‥‥
 なんてことになればいいですね)
 
山田星仁
  6月29日(木)更新
こんにちは、みなさん。
6月21日に、汐留の作品設置作業を
見学してきました。
設置しているようすを
こちらの動画
ごらんください。
『明日の神話』は横の長さが30mもあるので、
どこか自分の中で
「作品の移動はできない」という
固定観念があるみたいです。
ですから、汐留で『明日の神話』を見ていると
不思議な気持ちになりました。
まず初日は3枚、
それ以降は1日4枚のペースで
開梱をしていくようです。
  もうすぐ、公開ですね!
それでは、また。
  6月27日(火)更新

今日は、壁画の
骸骨の部分を梱包する作業のようすを
お伝えいたします。
立っていた壁画を
ゆっくりと水平にしていきます。
こうやってゆっくり。
そして、クッション材を敷きつめた木箱に
うつ伏せの状態で壁画を入れます。
木箱に壁画を収めるようすを
こちらの動画でごらんください。
注意深く見守る吉村さん。
こうして梱包していきます。
木箱はほぼ日刊イトイ新聞の
TARO MONEYの寄付で
作ったものです。
  6月23日(金)更新

今日は、作業場にTARO MONEYの寄付で作られた、
壁画輸送用の木箱が運び込まれました。
木箱の数は全部で14個。
壁画を1枚ずつうつ伏せにして
梱包するスタイルです。
木箱の重さが1個500kgで、
絵が入ると約1500kgになります。
木箱ひとつひとつに付けられた
「TARO MONEY」のプレートがなかなかいい感じです。
木箱が搬入されるようすを、
動画でごらんください。
  次回は壁画を木箱に入れて
いく作業をお伝えします。
  6月22日(木)更新

みなさんこんにちは、
修復チームの山田星仁です。
今日は『明日の神話』の
テレビ中継とビデオ撮影のようすを
お伝えします。
早朝のテレビ中継に出演している吉村さんです。
補彩に使った細い筆を手にして、
修復作業の細かさと
絵の大きさを伝えようとしているところでしょうか。
やはり『明日の神話』のスケールの大きさを
テレビで伝えるのは大変みたいですね。
テレビ中継のあとは、再びビデオ撮影です。
ごらんの写真は、カメラのレンズの中に
『明日の神話』が入りきらないために、
作業場の外から撮影しているようすです。
足場の下からわたくし山田も
1枚撮ってみましたが、
余裕で入りません。(でかい!)
ドクロの部分を
クレーンに取りつけられたビデオカメラが
撮影しています。
やはり、プロの方が
照明をあてるとすごいです。
とてもドラマティックで
大きな絵巻物を見ているようです。
撮影風景を、動画でごらんください。
  今日の報告は以上です。
次回のレポートは、「ほぼ日」の
TARO MONEYの寄付で作られた輸送用の木箱に、
作品が梱包されていくようすを
お伝えする予定です。
  6月19日(月)更新

今日は、「明日の神話」の修復が無事に終わって、
報道関係者に公開されたようすをお伝えします。

完成のプレス発表がおこなわれた
6月6日は、
「ほぼ日」の創刊記念日でもあり、
去年の同じ日にメキシコから持ち帰られた
『明日の神話』の修復が
日本ではじまることをプレス発表した日でもあります。
(偶然ですかね?)
『明日の神話』の前で
修復完了の発表をしている、
再生プロジェクト・ゼネラルプロデューサーであり
岡本太郎記念館館長の平野暁臣さんと
絵画修復家の吉村絵美留さんです。
プレス発表とインタビュー風景を
動画でごらんください。

この日、こうして完成の発表ができたのも、
「ほぼ日」スタッフや読者のみなさまがた、
その他たくさんの方々からの応援があったからです。

ほんとうに、ありがとうございました。

1年間、たのしく修復作業ができました。

あらためて「岡本太郎」という人が、
いろいろな人たちに影響を与えてきて、
いろいろな意味でたくさんの人々に
愛されているのを感じた1年でもありました。

たぶんほかの作家の作品では、
こうはならなかったと思います。

わたくし山田も
よい経験をさせてもらったと
感謝しています。

以上で「修復現場」からのレポートは
最後となります。

なりますが、
これから、どうしましょう?

勝手に『明日の神話』の「いま」を
次回からお伝えしようと思いますが、
みなさま、いかがでしょうか。

ひとまず、これまで、
どうもありがとうございました。

愛媛より『明日の神話』修復チーム
山田星仁
  6月18日(日)更新

今日は、修復完成後の
写真撮影のようすをお伝えします。

今日からは、作品は
修復スタッフの手を離れます。
プロの照明の方たちと
プロのカメラマンによって
撮影がはじまりました。
まずは、作業場の窓から入ってくる
外光を黒い布でさえぎります。
上のほうの窓は、ふさぐのも大変です。
照明機材を足場に
吊り上げているところです。
重いので、取りつけも大変そうです。
照明装置点灯です。
まぶしいです!
このライトは、1灯で
修復に使っていたライト8個分の
明るさがあります。
照明が当たっている部分です。
このキノコ雲の眼の中が、
こんなに赤く描かれているのは
わたくし山田も知りませんでした。
ふだんは、赤黒いようにしか見えません。
(東京・汐留での公開のときには
 どんなふうに見えるのでしょう)
すごい数の照明です。
普段は、映画ロケとかに
使う照明だそうです。
写真撮影中です。
  この日は、深夜1時半まで作業が続きました。
カメラマンと照明スタッフの方、
遅くまでご苦労さまでした。
  6月17日(土)更新

みなさま。
『明日の神話』の修復が完了いたしました。
ここまでの応援、ありがとうございました。
(これからも、よろしくお願いします!)
このあとは、プロの方にお願いして
写真撮影とムービーの撮影があるのですが、
一足お先に、わたくし山田も
写真とムービーを撮ってみました。
まだ絵の間に、すきまがありますが
修復が終わった「明日の神話」です。
ムービーは、天井のクレーンに
山田のカメラを固定して
撮ってもらいました。
こちらをクリックして動画
ごらんください。
※映像が揺れますので、
 酔いやすい方は、お控えくださいね。
  今日のレポートは以上です。
次回は、写真撮影の風景をお伝えします。
  6月16日(金)更新

今日は、補彩作業が終わった作品に
保護膜として
コーティングをする作業をお伝えします。
事前に溶剤でとかして作っておいたニスです。
絵が大きいので、使う量もすごいです。
わたくし山田も、いまでは
『明日の神話』の修復に使う材料の多さには
慣れましたが、
普段の絵画修復では、
この量のニスを使い切るのに
10年はかかるのではないでしょうか。
いよいよニスの吹きつけです。
全身防護服に身を包んだ吉村さんが、
スプレーガンでニスを吹きつけていきます。
画面のつやを見ながら
慎重に吹きつけていきます。
画面にライトをあてて、
つやを見ながらニスを吹きつけるようすを
こちらの動画でごらんください。
  このコーティング作業を
画面全体に何度か繰り返すことで、
保護膜ができ、
補彩をした部分と
オリジナル部分のつやが合うことになります。

これで、ニスが乾燥すれば
修復作業は完了です!
  6月15日(木)更新

今日は、補彩作業が終わったあとの、
最後の作業となる「コーティング」の、
前のようすをお伝えします。
コーティング作業のときに
余計なところにニスがかからないように
養生が終わった状態です。
壁画の前に保護材が敷きつめてあるようすが
おわかりいただけますでしょうか。
いよいよ、いよいよ、
明日は、最後のコーティング作業です!
ほんとうに、いよいよです。
  コーティング作業のようすは、
次回お伝えしますね。
  6月14日(水)更新

みなさん、こんにちは。
愛媛の『明日の神話』修復チームの
山田星仁です。

「『明日の神話』修復完成」のニュースが
いろんなところで報じられ、
みなさまからたくさんの、あたたかいおたよりや
電報をいただきました。
おかげさまで、
ふつうに考えたら「ほぼ無理」と言ってもいい
短い修復期間で、
無事に修復を終えることができました。
これも、みなさまの応援があったからだと思います。
ありがとうございます。

壁画はいま、公開地の東京・汐留へ向けた、
搬出作業にとりかかっています。
そのあいだ、このコーナーでは、
ちょっと時差がありますが、
修復完成までの足どりをお伝えしていきますね。

今日は、「岡本太郎記念館」の館長、
平野暁臣さんが
修復現場にいらしたときのようすをお伝えします。
以前ぼくたちが組み立てた、太郎さんの飛行船を、
平野さんにお願いして操縦してもらいました。
平野さん、ふつうに飛ばすだけでは
おもしろくないようで‥‥
なんだかとても楽しそうです。
  こちらの動画では、
となりで新聞社の取材を受けている
吉村さんのところに
飛行船が、どんどん近づいていきます。

修復作業もいよいよ終盤に近づいたころには、
作業場からは修復に使い終わった道具たちが
少しずつ消えていくことになります。
冬の寒さから修復スタッフを守ってくれた、
吉村ハウスも解体されていきます。
ジグソーパズルのようになった『明日の神話』を
つなぎ合わせるのに使った
作業台の材木やガラスも、
新たな場所で再利用されるために
作業場を出て行きました。
  こちらの動画
吉村ハウスのガラスが取り外されるところです。
このガラス1枚、150kgもあります。
  6月11日(日)更新

今日は、巨大な壁画『明日の神話』を
修復する過程で出た、
使用済みの道具や材料「その3」をお見せします。
充填剤で絵の具のタッチを再現するときや
最後の補彩に使っている筆です。
これは、使用済みのものです。
この筆、本来は水彩絵の具用の筆なので、
これで充填剤や合成樹脂絵の具を使うと
写真のようにいたんでしまいます。
でも、この筆じゃないと出すことのできない
細い線があるのです。
そんなわけで、現在も使用済みの筆は
増えつづけています。
  6月9日(金)更新

今日は、巨大な壁画『明日の神話』を
修復する過程で出た、
使用済みの道具や材料「その2」をお見せします。
画面の付着物を取ったり、
小さな絵の具片を戻すのに使った道具です。
ほとんどが医療用の道具になります。
なかでもメスは、
画面に付着したセメントやペンキを削って
落とすのに使いました。
ほんとうは人体に使う物なので、
セメントを削ったりすると、刃は
あっという間に切れなくなってしまいます。
使用済みのメスの刃です。
切れない刃を使っていると
画面をかえって痛めてしまうので、
切れ味が悪くなったらすぐ交換です。
1000枚用意した替え刃も
ほとんどを使ってしまいました。
  6月8日(木)更新

今日は、巨大な壁画『明日の神話』を
修復する過程で出た、
使用済みの道具や材料「その1」をお見せします。
「なんだこれは!」
画面洗浄に使ったコットン(脱脂綿)の山です。
『明日の神話』の汚れを落とすのに
使用したコットンは、総計20kgでした。
竹串にコットンを巻き付けて、
地味にちまちまと画面を洗浄した結果が
これです。
  『明日の神話』に使う修復材料は、
コットンひとつをとっても、
絵が大きいだけに、通常の修復に使う場合とは
比べものにならないくらいの量になります。
材料をどれくらい用意するかを考えるのも
ひと苦労です。
  6月7日(水)更新

今日は、欠損部分の中でも
1、2を争う大きな欠損部に
補彩をするようすをお伝えします。
水彩絵の具で下塗りをした状態です。
船の描いてあるところ、
まだ、オリジナルとの境が
はっきりとわかります。
下塗りをした場所に補彩を施しているところです。
そのようすを、ビデオ撮影のスタッフたちも
注意深く見つめています。
手元のアップです。
作業をしているまわりには、
損傷を受ける前の写真や資料をひろげて、
参考にしながら復元していきます。
船のほっぺに補彩をしているところを
ムービーで撮ってみました。
クリックしてごらんください。

2005年9月9日から10月30日まで
2005年10月13日から12月22日まで
2006年1月12日から6月5日まで
『明日の神話』修復チームへのメッセージは、
メールの表題を「明日の神話」として、
postman@1101.comまでお送りくださいね。
お待ちしています!