坊さん。 57番札所24歳住職7転8起の日々。 |
第53回 “もうひとつの”マンダラ ほぼにちは。 密成です。 栄福寺の「手をつけるべき所」っていうのも いくつか事業を終える内に落ち着いてくるのかな? と考えたりもしてたんですが、 「一つ終われば、また一つ。」 という感じにやりたい事、やるべき事、 がどんどん、浮かび上がってきます。 今日は大工さんと、破損の激しい 大師堂の出入り口の戸をどうするか? ってことを相談してました。 とりあえず替えなければいけないってことは 以前に、決定していました。 でも、僕が留守から帰った時に洋室の応接間用のドアが、 倉庫に置いてあったので、 「なんなん(なに)、これ?」 と聞くと 「それ、使わないらしいから 大師堂に使おうと思って 大工さんに、持ってきてもらった。」 という事でした。 もちろん、雰囲気が合うはずないので、 大工さんに断って、今日、再び話し合い。 僕のコンセプトは、明確で 「スタンダードでオーソドックス」 多くの場合、僕のスタンスはこれです。 特に修復・修理関係はね。 “発光ダイオードの崇拝対象” みたいなことばっかり考えているわけでは、ありません。 となると引き戸・木製は必須条件。 後は、経費の問題です。 細かいことを書くと 例えば、 障子にする為に格子戸(こうしど)にするのと 普通に板で作るのでは経費が倍、違います。 障子のメリット? 光がたくさん入るのです。 「障子がいいけど、経費がなぁ。」 「大きくスパーンと切って、 光の入り口、作ってもいいけど・・・」 「いいじゃないですか、それで!」 「でも、おっさん 泥棒に破られたら 手が入るよ、障子と違ってね。」 なるほど、そうだなぁ。 他にも 外国の材料だと1枚で1、2万安い とか、色んな節約ポイントがあるんだけど 妥協したくないことばかり。 慎重に決めようと思います。 ところで 大工さんとの話し合いの単位は ほぼ例外なく尺貫法(しゃっかんほう) で行われます。 1尺は30.303センチです。 「高いなぁ、既成品で 手頃なの、ないん?(ないの?)」 「あるよ。でも既製品は5尺8寸がほとんどなんよ。 (数字は記憶違いかも) ここは、お堂のことやけんえーっと、(メジャーで測る) 6尺3分やねぇ。作るしかないわ。」 という感じ。 ばあちゃんに聞くと 同じ1尺でも曲尺(かねじゃく)と鯨尺(くじらじゃく) があって、大工さんが使うのはかねじゃくです。 鯨尺は曲尺での 1尺が1尺2寸5分。(約37.9センチ) 布屋さんは、コレだったらしい。 ややこしいね。 他にもお堂で、隙間が空いてる所があったりする。 「なんで、あんなに、隙間があくんだろう?」 「おっさん、あれは、生木でやったけん、 ちぢんだんじゃわい。」 そう言えば、この前、お坊さんの集まりで 木は乾燥させると値段がぜんぜん違うと 話してたっけ。 「おっさん、高い鉄砲なんかは、 200年置いた木、使うからねぇ。」 ふーん。 いよいよ、便所も進めなきゃ。 予定地はウチの畑です。 ところで、農地っていうのは、 ちゃんと利用目的を申請して 変更しなければ、建物を建てられないって 知ってましたか? 僕は知らなかった。 司法書士との仕事になります。 ちなみに農家じゃない人は なかなか農地を買えません。 これも、知らなかった。 お堂の後ろの壁も、老朽化してるなぁ、 と見ていたら また、思いついてしまった。 真言寺院では、御本尊の両隣に 曼荼羅(まんだら)を掛けることが多いんです。 栄福寺にはないので、欲しいと思ってます。 その曼荼羅の隣とか下に、 大きな窓ガラスを付けて 遠くの竹藪や、行き交うお遍路さんが見えるようにしたら すごく美しくて、気持ちのいい “もう一つのマンダラ” が出来るんじゃないかな? ワクワクしてしまったので 大工さんにも、言ってみる。 「今年とか、来年の話じゃないけど、よくない? 防犯の問題とか、あるけど、さ。 後ろから、丸見えだもんね。」 「おっさん、今は、 外から中が見えんで、 中からは外が見える、ガラスがあるんやで。」 なんと。 夢が、ひろがるね。 大きなコンセプトは僕が出して 細かい美しさ、バランス、材料は 建築家の意見も聞いてみたいなぁ。 四国遍路は、自分たちの住む世界、自然を 自分の足で歩くというのが 大きな瞑想体験だと僕は思うんです。 だから、それを、そのまま、 切り取った風景は、 “もう一つのマンダラ” と表現するのに値するのかも、もしかしたら。 と思うんだけど、みんなは、どう思う? ワクワクしない? キレイじゃない? 自然じゃない? 本質的じゃない? そういう感情をフラットに 出すのは、これから よりまともな、生活とか、人生を 僕達が、獲得するために、 とても重要なことになるんじゃないかな。 ちょっと考える以上に。 そうじゃない人は、たぶん、多いです。 そして、そうするのは、簡単ではないと思います。 場面によっては、びっくりするぐらい。 でも、がんばろうぜい! お互い。 ミッセイ |
2002-05-06-MON
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