坊さん。 57番札所24歳住職7転8起の日々。 |
第79回 雨のたびに季節は ほぼにちは。 以前、この連載で すこし触れた 「じいちゃんの衲衣」(のうえ) ですが、 京都の法衣屋さんで、 直してもらっていたのが、 帰ってきましたよ。 こんな感じです。 着衣すると、こうなります。 モデルは、 四国霊場55番札所「南光坊」の 俊匡(しゅんきょう)さん。 ばあちゃんに聞いてみると、 昭和27年ぐらいに買ったみたいです。 これは、春夏用なので 実際に使うのは、 来年になります。 楽しみ・・・、 と言ってしまうと、 衲衣は、 お葬式に使うことが多いので、 語弊があるんですけどね。 この前 檀家さんの家に、 お届け物があって、 20件ぐらいを 歩いて回っていたんですが、 2件でイモを、 たくさんもらいました。 さすが家訓が 「いも」だけは、あります。 「おっさん、このイモは たぁー(田)のイモじゃなくて、 畑のイモやけん、 こんまい(小さい)けど、 おいしいよぉー、 ひっひっひゃひっひひひ。」 ということでした。 どうしてでしょうね。 「水臭くないから。」 (ばあちゃん談) という説もございますが、 僕には、わかりません。 どなたか、知ってますか? どうして檀家さんの家を、 回っていたかというと、 「二十三夜さん」の お札と、おもちを配っていたのです。 旧暦の二十三日の日に、 月待をすると願い事が叶う、という 信仰がベースになっているんですが、 栄福寺では、 旧暦の1月と5月の23日に、 日天(にってん)さんのお札を、 9月の23日に、 月天(がってん)さんのお札を、 毎年、配っています。 今年は、10月28日が、 旧暦の9月23日だったんですが、 ちょうど、この日の夜、 関東に住む友達から、 「今、空にスッゴイ大きな 月が出ていますよっ!!」 というメールが来たので、 知ってる人には、 なかなか素敵な夜だったでしょうね。 栄福寺はとっても、 日当たりが悪いので、 外を歩いていると、 ポカポカしていて、 すごく気持ちよかったです。 農家の方に直接、渡せるように あえて昼食時に回ったんですが、 縁側に座ってニコニコしながら、 僕がやって来るのを見て、 「おっさん、 なんの、えーもん(いいもの) くれるん?(くれるの?)」 と迎えてくれる、おじいさんと、 おしゃべりしていると、 1日は、すぐに終わる気がします。 「時間が、ゆっくり流れてますね。」 というメールを頂戴するたびに、 「そーでも、ないと思うよ。」 と考えるんですが、 そういう部分も、 やっぱり、あるのかな? 都会に住んだことがないので、 わかりませんが。 速く流れていることの、 快感とか新鮮さってのも、 人間っぽいって僕は思うけど。 “本質”とか“人間っぽさ”って たぶん、たくさんあるんだよ。 そう思わない? 早朝に雨が降った、とても寒い日。 僕は檀家さんの運転する、 軽トラックの助手席に乗っていました。 看板を設置する土地を、 お借りした地主さんに、 報告とお礼に向かっていたんです。 この檀家さんは、 いつも難しい政治の話を、 しているような人です。 「うー、さっむいですね。」 「雨が降ったからね・・・。 おっさん! 秋は雨が降るたび、冬になって、 春は雨が降るたびに、あったくなるよ。」 という話をしてくれました。 僕は、 その人が無邪気な顔で 笑ったのを、 はじめて見た気がして、 なんか、うれしかったです。 そして、その話を聞きながら、 僕がいつも、考えている以上に、 自分にとって大切な存在を 考えたり、決めたりするのって、 難しい話じゃないのかな。 もっと、簡単な話なのかな。 と考えたりしました。 でも、たぶん、これも両方だね。 「難しいこと」 「簡単なこと」 両方ある。 「難しいこと」には、 かんたんな話が含まれるし、 むずかしい話には、 「簡単なこと」が隠れている。 そう思います。 そして、帰り道 冷たい風にあたりながら 自分にとって 大切なことを、 なんとなく考えました。 ミッセイ |
2002-11-14-TUE
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