坊さん。 57番札所24歳住職7転8起の日々。 |
第89回 大工さん、3回目の涙 ほぼにちは。 ミッセイです。 今日は長老の49日の法事でした。 (満中陰、まんちゅういん) 死後49日間(中陰)は、 死者の魂がさまよっている、 っていう信仰があるので、 これが、あける日を、 満中陰って言うわけです。 だから、 みんな49日を、 とても大切にしています。 お孫さんが、 「長老に引導を渡す。」 の回をおばあちゃんに、 プリントアウトして送ってくれたらしく、 祭壇の隣には、 絵の得意なお孫さんが描いた、 長老の肖像画の隣に、 「坊さん」の原稿が、 置いてありました。 おばあちゃんは、 僕が法事に行く前に、 電話をかけてきてくれて、 「おっさん、 私、うれしくて、涙が止まらんかったんよ。」 という話をされました。 お経が終わって、 僕の法話の時は、 こんな話をしました。 「あの原稿を、 皆さんが、読んでくださって、 感動したと聞いて、 うれしく思いました。 でもね、 もっと、うれしくなったのは、 長老の事を、 ぜんぜん知らない、 東京の青山でデザイン会社をしている、 姉妹とか、 青森の音楽好きの二十歳の女の子から、 「すごーい、よかった。」 って、言ってもらえたことなんです。 長老の生き方とか、 それを受け入れて、 送り出す僕達の姿なんかが、 “けっこう、生きてるって、いいなぁ。” みたいな、 メッセージになって、 ぼんやりとした、 印象を残せたとしたら、 それは、ほんとうに、うれしいことです。」 僕が、インターネットで、 なにやら、している。 というのは、なかなか、 年輩の方には、伝わらず、 「おっさん、コンピューターの研究は、 どちらで、されているんですか?」 と聞かれたり、 「おっさん、 ファミコンが得意らしいねぇ。」 とか、言われ続けました。 かわいいし、 そのままで、 全然、かまわなかったんですが、 インターネットが、 人の体温を運び始めたことを、 みんな、なんか、感じてきたみたいです。 「おっさん、よーわからんが、うれしいわい。」 今日は、納骨もあったので、 お墓にも行きました。 おばあちゃん3人と歩いていると、 「この家は、むかし、 遍路宿(おへんろさんが、泊まる宿)でねぇ。 私も子供の頃、配膳の手伝いをして、 15銭もらってた。」 「私は、御杖を、この小川で洗ってた。 (お遍路さんは、宿に着くと、 まず、杖を洗います。 これは、今でもそうです。) ただ働き、だった。ふふふ、おせったい。」 みたいな話を聞かせてくれました。 おばあさんと、話していると、 よく思うのですが、 女の人って、 いくつになっても、 “娘さん”の部分があるよね。 なんか、いいと思います。 家に戻って、 みんなで、食事をしました。 坊さんは、たいがい、 “一番、上座” を、勧められるので、 僕は、それに、従うことにしています。 なので、同じテーブルは、 70歳以上の方が、ほとんどです。 長老の弟さんが、 こんな事を、言ってました。 この人も大工さん。 「おっさん。 あの、原稿、読んでね。 おれは、生きてて、3回目、泣いたの。 後の2回は、小学生の時。 よく、憶えてる。 3回目。 なんだか、知らんが、涙が出た。 なんでだろう?」 泣いてくれたのが、 うれしいのじゃなくて、 数が少ないのが、 うれしいのじゃなくて、 なんだか、とっても、うれしかった。 「そりゃあ、おっさんの、表現力じゃろー。 やり手じゃけん。」 「いや、違う。 “うわっつら”じゃないから。 ホントの事だからや。 心の事だからや。」 うれしかったなー。 他にも、栄福寺の昔の話が聞けて、おもしろかった。 「おっさん。 前の、おっさんと、オレはコンビでね。 子供を集めて、遊びを、いっつも、考えてた。 “幻灯機”(げんとうき)っていう、 スライドみたいなの、買ってね。 今で言う、“映画”みたいなのを、 上演してたんだ。 声は出ないから、 おっさんとオレが、 ナレーションよ。 “犬塚 子供の会” (ウチの近くの犬塚池から、 採ったんだろうな。) っていう、名前、付けてね。 会の歌も作った。 作詞・作曲、オレ。 兄貴から、ハーモニカ、 習ったこと、あったから。」 じいちゃんは、 寺の運営と教師の仕事で、 いっぱい、いっぱい、 だったと思ってたのに、 やってたんだなぁー。 プロジェクター買って、 境内にスクリーン張って、 「トトロ」とか、やったら、 最高だねぇー。 って、友達と、 「夢!」 なんて、 話、僕もしてたけど。 じいちゃん、 もう、やってんじゃん。 見直したなー。 もちろん、尊敬してるけど。 「とにかく、お寺は、遊び場だったよ。」 昔を懐かしんで、 同じスタイルにする、つもりは、 ぜんぜん、ないけど、 なんか、ワクワクするなぁ。 今日の法事は、 いいこと、いっぱいあったな。 ミッセイ ―おまけ― この原稿を送信した直後に、 イトイさんからメールがやって来ました。 それはそうと、年上の、昔の子供として言うのですが、 >“現投機”(げんとうき)っていう、 > スライドみたいなの、買ってね。 こりゃ、漢字がちがいますぜ。 「幻灯機」あるいは「幻燈機」です。 ぼくも、持っていましたから。 ということでした。 僕も、何回も漢字、聞いたんですよ。 「ホントに、この漢字ですか〜?」 「おっさん、つまり、 “現実”をスクリーンに“投げつける”わけよ。」 という説明に、みんなで、大納得でした。 たぶん、イトイさんの記憶違いだなぁー、 とGoogleで「現投機」検索してみました。 中国語のサイトばっかり・・・。 「幻灯機」は・・・、 ズラーーー、でした。 みなさんも、海馬の働きに注意しましょう! っていうか、持ってたんだ! |
2003-01-26-SUN
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