坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第91回 高野山、とても綺麗な女の人の話。


ほぼにちは。

ミッセイです。

今日、母親に、

「これに、値段、付けといてね。」

と新しい「お守り」を渡されたんですが、
このお守りの、ネーミングが、

「長寿全うポックリ守り」

というんですね。

「なんで、こんな、名前なんだよー。」

と、びっくりしたんですが、
ポックリ(ぼっくり、木履)は、
着物の時に履く、
女の子用の下駄のことなんです。
(知ってました?)

しかし、どうだろう?
欲しいですか?

「ポックリ守り」

むむむむ。

栄福寺、納経所にて、
本日から販売中です!
400円っ!!


長寿全うポックリ守り


先日、
僕は近くのお寺の、
節分の法会に、
出仕してきました。

四国51番札所の、
「石手寺」さんでは、
1600キロの大豆を用意したんだってー!
すごいね。

僕が参加したお寺の法会も終わり、
出仕したお坊さんの中で、
最長老のお坊さんと、
最年少の僕が、
二人だけ残って、お話ししていました。

仏壇の話とか、
先祖供養の話とか、
いろいろ話している内に、
「昔の高野山大学」
の話になりました。

「じいちゃんに、
“相撲部”
 の同窓会の案内が、
 今でも、来るんですよ。

 じいちゃんって、
 ホントに相撲なんか、
 やってたんですか?
 やせてましたしね。」

「それはね、ミッセイさん。
 昔、米が食べられない時代に、
 なぜか、
 相撲部は、お米をいっぱい、持ってたの。
 太るための。

 で、相撲に興味ない人達も、
 相撲部に入部して、
 米を食べに行ってたんだよ。

 それかもねー。」

「なるほどー。」

みたいな、話をしていました。

「ところで、その時代って、
 大学に女の子っていたんですか。」

「女の子?」

「女の子です。」

「ミッセイさんは、何人いたと思う?」

「うーん、13人!
 ぐらいですか?」

「実はね・・・、

 ひとり。

 一人だったんだよ。」

「ひとり!
 どんな方だったんですか?」

「すごく、綺麗な人だった。

 高下駄、履いてね。
 はかま、付けて。」

「坊ちゃんの、マドンナみたいですね。」

「そうだね。そういう感じだったな。

 男のお坊さんの中で、
 一人でいてもね、
 すっと背筋を伸ばして、
 ぴっ、と前を向いてね。
 
 綺麗な人だったよ。」

「みんな、
 その人のことが、
 好きだったんじゃないですか?」

「好きだった。みんなが。
 
 でね、その人は、私より、
 一級、先輩で、
 お寺のお嬢さんだったんだけど、
 卒業して、何年かしてから、
 私の同級生と結婚したんです。
 彼が、婿養子になって。」

「今でも、御健在なんですよね。
 お会いして、
 お話ししてみたいですよ、僕。」

「いや、死んじゃった。
 結婚して、5年ぐらいだったかな?
 それ以来、連絡、ないけどね。

 綺麗な人だったのにね。」

という話を聞かせてくれました。

別に
なんてことない
話かもしれないけど、

親元を離れて、
高野山のお寺で生活しながら、
大学に通う何百人もの、
若いお坊さん達には、
たった一人の“マドンナ”がいた。

その人は、
姿勢がとても良くて、
いつもピッと前を向いて、
歩いていた。

という話を聞くと、
なんだか色んな場面が浮かんできました。

この人は、
今も健在のたくさんの、
老僧の、
 
“素敵な人”

として、今でも、
鮮明に記憶に残ってるんだろうね。

早く亡くなった人だから、
いろんな後悔が、
いくつか、あるんだろうけど、

今となっては、
まぁ、いい人生だったな。

って、思ってるんじゃないのかな?
 
と、僕は個人的に想像しました。



ミッセイ

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2003-02-07-FRI

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