第127回 蚊の市民権
ほぼにちは。
ミッセイです。
今日は、ついに、
子供達の「お大師さま」の日だったんですが、
「お経の時、しゃべったら、
お経を止めて、
その子を、じっとみる。」
という作戦で、まずまずの勝利を収めました。
お堂の中は、すごく暑かったので、
法話は、あんまり聞いてくれないかなぁ、
と思っていました。
で、実際、弘法大師の話の時とかは、
あんまり、聞いてくれなかったんだけど、
「きのう、人が亡くなったから、
きのうの夜は、枕経(まくらぎょう)
というのに、行って、
今日、これから、お通夜に行って来ます。
明日は、お葬式。
みんなは、まだ、
あんまり、考えないと思うんだけど、
人って、死ぬんだなぁ。
って、思います。
せっかく、お寺に来たんだから、
今日は、
人が死ぬこととか。
生きてる時に、コレはしたいなぁ。
ってことを、
考えてみるのも、いいかもしれないなー、
って、思いますよ。」
という話をはじめると、
すっと、静かになって、聞き始めました。
死っていうのは、
なにせ、わからないんだから、
不思議だよね、圧倒的に。
僕達にとっても。
夏休みの子供達を集めて、
お寺に一泊して、
何十人ものお坊さん達と過ごす、
「わんぱく道場」
というのが、
近くのお寺であったので、
1日だけ、お手伝いに行ってきました。
考えてみたら、
子供とあんなに長い時間を過ごしたのは、
自分が子供の時、以来でした。
「ねーねー、お坊さん、クイズです。
私は何年生でしょう?」
「うーん、そうだなぁ・・。」
「正直に思ったことを、言うのよ。」
「ははは。4年生!」
「ブーッ!!
1年生っ!」
「へー、おっきいね。」
「つづいて、しつもん。
わたしは、キスをしたことが、
あるでしょうか?」
「うーーーん。
ないっ。」
「ブーー!
ある、ある、
あるのでした。」
「おー、誰と?」
「あとで、教えてあげるけど、
同じ班の、人なのでありまーす。」
という女の子もいたりしました。
二日目の、
「流しそうめん」
に使う、竹がいることになって、
竹が豊富にある、
栄福寺に若い坊さん3人で、
竹を切りに、いったん帰ってきました。
そして、竹林に入ったんですが、
もう、おっそろしいほどの、
蚊がいて、
なんか、日本じゃないみたいでした。
しかも、坊さんって、
頭も刺せるから、
すごい蚊にとっては、
「やりやすい」
みたいで、
3人とも、頭が真っ赤になりました。
帰ってきた3人に、
母親が有無を言わさず、
「虫除けスプレー」を、
かけて回っている姿は、
GHQの衛生班みたいでした。
しかも、
刺されてから、虫除けスプレーって・・・。
僕は、蚊の季節になると、
よく思うんですが、
蚊って存在が、
ずっと、いなかったとして、
ある年に、急に発生したとしたら、
すごい、パニックになるだろうね。
「続いて、吸血虫のニュースです。
今年、異常発生している、
“蚊”は、
小さな虫ですが、
なんと、
人間の血を吸い、
自らの栄養にします。
厚生省では、
特定の種に、刺された場合には、
高い死亡率の脳炎を引き起こす、
可能性があるとして、
注意を呼びかけています。」
いやぁ、恐いよ。
しかも、
事実ですよね、たぶん、ほぼ。
僕は、コレを、今年から、
「蚊の市民権」
と呼んでいます。
もしかしたら、意外かも知れませんが、
僕は、坊さんという仕事でも、
ふだんの生活でも、
かなり、臆病なんです。
「これを、したら、
この人の機嫌を損ねるなぁ。」
とか、
「今は、時期が早くて、
反応が恐い。
もっと、土壌ができてから。」
とか、しょっちゅう、考えています。
もちろん、部分としては、
坊さんという仕事にとっても、
すごく、重要なんですが、
なんか、実はとんでもない存在のはずの、
“蚊”の人達が、
「毎年のことなので、
なにとぞ、
ご勘弁のほどを、よろしく。
ちゅーーー。」
と、今年も活動されているのをみて、
そして、
「毎年のことだから。」
と、特に、
「蚊、撲滅運動」
とかが人間の中で、
起こる雰囲気が、
ないのを、みていると、
好きなことを、好きなように、
自分なりに、いい方法を、考えて、
すっと、やってしまえば、
意外に多くのことは、
メンドーにみえる方々も、
いい意味で(でもないか)
諦めてくれるのかなぁ、
と、思ったりしました。
“社会の度量”
みたいなものは、
僕が、ささやかに、
脅えている(!)よりは、
すこし、大きいのかもしれない。
蚊も、許してもらってるんだしねぇ。
と、考えると、
いくつか、
たくらんでいること、
あるよなぁ。
もちろん、細心の注意で、ね。
明日は、お葬式。
亡くなった、
おばあさんが、
作った“巻きずし”が、
僕は大好きでした。
のりが少し、
「ジョリ」と生っぽくて、
三つ葉がさわやかで、上品で、
びっくりするぐらい、
アナゴに存在感がありました。
少し前のお盆で家に行った時、
おばあさんは、
もう、入院していなかったけれど、
息子さんが、
(といっても僕の父親よりも、年上なんだけど。)
不思議な模様を、
カラフルに描いた
とても綺麗な「ひょうたん」を、
僕にくれました。
息子さんと、長く話したのは、
初めてでした。
「親子で、器用なんですね。すごいな。」
そんな思い出を、今日、お通夜で、お話しました。
「みなさんが、おばあちゃんを、思い出す時、
おばあちゃんは、肉体を持ちます。
僕は、そう思います。」
心を込めて、引導、お渡しします。
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