坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第144回 作務衣は出席不可だったなぁ。

ほぼにちは。

ミッセイです。

これを読んでいる人達にも、
どんなイヤなことがあっても、
これを思い出したら、
なんとなく、顔がほころんでしまう。
一瞬、忘れてしまう。

みたいなエピソードが、
あるんじゃないかと思うんですが、
僕にも、やはりそういうのが、あります。

「恋の話」とかだと、
色っぽくていいんですが、
これは、僕が高野山で
大学生をしていた頃の話です。

大学の授業の一般教養科目で、
「社会福祉」
という授業が、あったのですが、
そこで、
「生活の中での身近な福祉問題」
みたいなレポートが出ました。

そこで、
今は、地元のお寺に戻って
お寺の副住職をしている、
僕の友達のレポートが
ものすごく、印象的だったんです。

痴呆症だったその人の、
祖母の方の話をテーマにしていたんですが、
問題は、書き出しにあります。
こんな感じでした。

「僕の、おばあちゃんはボケています。
 てゆうか、キテおり」

という書き出しです。

だいたいレポートで、
普通の会話のように、

「てゆうか(て、言うか)」

を使うのも変わってるんだけど、

「おばあちゃんが、キテる。」

というのが、
あまりに実感がこもりすぎていて、
体全体が脱力したまま大笑いしました。

今でも、時々思い出して、
ニヤニヤしてしまいます。


お坊さんになって以来、
僕はお寺で仕事をしている時は、
たいがい『坊さん』の、
おサルのアイコンのような、
藍染めの作務衣を着ていたのですが、
最近なんかの拍子に洋服を着て働いていたら、
(例えば今日だったら、
 黒のコーデュロイのズボンに紺色のセーター)
妙に動きやすくて、
ずっと定着してしまっています。

なんというか作務衣って、
一言で言って、
「ルーズ」過ぎるんです。
僕の感覚だと。
だから字を書く時は、
まくし上げて書かなければならないし、
着ていて、なんか気合いが入らないんです。
まぁ、20年以上、洋服を着てきたんだから、
「慣れ」なのかもしれないけれど。

だから法衣屋さんが来た時に、

「もうすこし、タイトな感じで細めに作れますか?」

と聞いたら、

「まぁ、作れ言われたら、作りますけどねぇ・・・。」
 
とあまり乗り気でなかったので、
作りませんでした。

でも、作務衣って何がいいって、
着てたら坊さんだと、わかることです。
これって結構重要な事だと思います。

いつだったか、
お坊さんと話している時に、

「ミッセイさん。
 僕達、坊さんは、もう、
 坊主頭にしなくてもいいんです。

 ほとんど現代的な価値観で、
 まぁ、人並みのを生活してるんだしね。

 でもね、坊主頭のほうがいいんです。
 見てる人が、安心するから。

 あっ、あの人、坊さんだ、って。
 そういう、ものなのよ。」

という話をされていたのを、
その時は、ふーんという感じだったんですが、
今でも、なんとなく憶えています。

自分も自分が坊さんって、
わかりやすいしね。

だから、
再び作務衣にシフトしないとなー、
と考えてます。

で、思い出すのは
やっぱり、高野山大学時代なのですが、
この大学は毎月21日が全授業、休講でした。

これは、弘法大師の月命日で、
生徒は弘法大師のご廟(びょう)のある、
「奥の院」にお参りすることになっていました。

「えっ、今日、廟参(びょうさん)やん!
 へっへっー、休講だー!」

みたいな感じで、みんな喜んでいました。

そこでは、大学職員が出席をとっていて、
規定数に達さなかった場合、
卒業できないという
一応の決まりになっていました。
(現実的にこれで、卒業できなかった人は、
 聞いたことはないけれど。)

そこでは、ひとつだけ、
服装のルールがあって、

「作務衣は出席を認めない。」

というものでした。
なぜかというと、
作務衣ってお坊さんのジーパンみたいなものなんです。
つまり本来、作業服です。
(あくまで高野山の僧にとって、
 ということですが。他はわかりません。)

宗祖に拝みに来ているのに、
作業服とは、何事ぞ。

というわけですね。 
ちなみにジーパンは、OKでしたが。

「作務衣を着ているということは、
 僧侶であるはずである。

 僧侶であるからには、
 作務衣の非礼を知っているはずである。」

という論理でしょうね。

だからアロハで行っても、
短パンで行っても、ミニスカートで行っても、
「一番」と書いたハルクホーガンのTシャツで行っても、
出席は取ってくれるのですが、
作務衣で行くと、出席をとってくれないばかりか、
スキンヘッドの教務課のお兄さんから、
ありがたい法話を頂戴する事になります。

そう考えると、
お遍路さんに納経をする時、
「阿弥陀如来」と墨で書くのですが、
そういう時は、
むしろ洋服の比較的フォーマルな格好で、
書いた方が、
作務服で書くよりも、ふさわしいのかも、とも思います。

それか、
毎日は無理でも、
フォーマルデイを設定して、
高野山の古式僧服の
空衣(うつお)で書く日を作るのもいいかもね。

そういえば、
フリース作務衣というのを前に買って、
(けっこう高かった。)
うれしそうに毎日着ていたのですが、
あったかいんだけど、
パジャマをずっと着てるみたいな感覚があって、
これも、なんか、定着しませんでした。

スーツの上からかぶると、
「坊さん風」な格好になるという、
黒色のマントみたいな物も、
実は坊さんの中でかなり定着してるんですが、
僕はアレを見るたびに、

「そこまで、するか・・・。」

と、笑いはしないけど、
口を縦に拡げて微笑んでしまいます。

なんか、バシッといい僧服ないですかねぇ?
みなさん。


ミッセイ


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2003-12-07-SUN

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