坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第164回 お墓になる杖

ほぼにちは。

ミッセイです。

ちょっと、びっくりしたんですが、
今、手帳を開くと、

11日連続で、
外に行って、何かに参加したり、
話し合ったりする予定が入っています。

こういうことは、
坊さんである、
僕にとっては、
かなり珍しいことです。

お坊さんをしていると、
本当に頻繁に、

「毎日何してるんですか?」

とか、

「昼ごはんは、何食べるんですか?」

と聞かれるのですが、
高野山で同級生だった坊さんと、
たまに電話で話したりすると、
そういうのが結構、
ストレスだったりするみたいです。

ちなみに、僕は、そういうストレスを、
ほとんど感じないみたいで、

「えーっと、
 きのうはチャーハン!肉入り。」

とかいうタイプなんですが、
結局、ほとんどの人が、

「坊さん」

が、なにをしているか、
あまりにもわからないので、
そういう質問が発生するんでしょうね。

その距離感は、
マジカルな雰囲気を醸し出すには、
結構便利なのかもしれないけれど、

僕自身は、
そういう便利さは、
感覚的に好みではないので、
なにか別の「便利さ」を、
僕が担うことで、
これから、
仕事をさせてもらったらいいなぁ、
と思います。

ちなみに、例えば、
僕がどういうスケジュールで、
ここ最近で出かけるかというと、

「高野山真言宗の布教研修会」
(愛媛は道後温泉にて。
 ちなみに講師は、天野祐吉さんでした。)

「大丸デパートお砂踏み会場で修法」
(今治大丸、7階特設会場にて。
 オープニング前からすごい人が並んでいて、
 びっくりしました。)

「子供達との宿泊研修会の打ち合わせ」
(今治、神供寺にて)

「法を授かる“伝授”の為の儀式
 “許可”(こか、って読みます。)
 に参加」
(京都、泉涌寺にて)

「四国88カ所霊場 霊場会 通常総会」
(徳島にて)

「坊さんの野球チームの練習」
(これは遊びですね。)

という感じになります。


少し前に、
近くのお寺で本堂が新築されたので、
完成記念の落慶法会に、
参加してきました。







そこで、

「晴れ舞台だし、
 みんなで、袴(はかま)を付けようか!」

という話にお坊さん達で決まり、
じいちゃんの葬式以来、
久しぶりに袴を付けました。



改めて袴を見てみると、
すごく微妙で淡い
ぺーミントグリーンに近いような緑色で、

「うわー、気持ちいい色だなぁ。」

と、思いました。

この気持ちのいい色を、
昔の人も、

僕が感じたのと似た感じで、

「いい色だなー。」

と思い、
この色に染め始めたのかと考えると、
うれしい気分になります。

音楽や芸術や、
人との出会い、
いろんなものに感じることですが、

「あなたも?そこ見てたか!」

と言いたくなるような、

「ひひひ」

と笑いたくなるような、

“うれしい既視感”

という感覚は、
坊さんの仕事には、
その気になれば、
けっこうあるような気がします。


おいしい樽酒も頂いて、
栄福寺に帰ると、
石垣にお遍路さんが、
杖を並べて置いていて、
その景色がとても、綺麗でした。



この杖は「金剛杖」と言って、
塔婆と同じように、

「キャ・カ・ラ・バ・ア」
(地・水・火・風・空)

の梵字が書かれていて、





巡礼者にとっては、
崇拝対象になります。

また、巡礼の途中で命を落とすことがあれば、
その杖が、
そのまま墓標になりました。
(昔は、けっこう亡くなる方も多かったみたいです。)

僕が思いを寄せる、
多くの表現者達が、
「死」の持つすばらしさについて、
たくさんの感情を届けてくれます。

僕自身、
「葬式」という場所で、

「僕達に関する素晴らしきなにか」

を強く感じることは、
多いのですが、
正直に言うと、
僕は死に対して、
ある意味で強い恐れを持っています。

こわいです。

わからないから不安ですし、
今のこの世界で、
やりたいことがあるので、
自分にまつわる死のイメージが、
好きではないです。

でも、
死を思わざるを得ない杖を持って、
毎日、たくさんの人が、
四国のお寺にやってくるのを、見ていると、

みんなどこかしら、
死に惹かれているんだなぁ。

と思います。

それは、もちろん多くの場合、
自殺とか直接的ものではなくて、

不思議なものに対する
あこがれのような、
おびえのような、
言い表しにくい思いであったり、

“生きていること”への、
予感みたいなもの
なのかもしれないですね。


ミッセイ

ミッセイさんからのお知らせ。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-06-21-WED

BACK
戻る