坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第166回 サンキュー、キョート。

ほぼにちは。

ミッセイです。

ここ最近、
仕事とか自分のことが、
うまく、みえていません。

今までなら、

「こうありたい。」

「こうしたい」

というのが、
時にはっきりと、
時におぼろげに見えていたと思うんです。

うまく実現できなくても、
体が動かなくても、

その先にあるなにかが、
とても、すばらしく思えて、
それが、なによりの勇気でした。

それが、見えない。

「もしかして、やばい状況?」

そんな風に考えられる内は大丈夫さ、
と自分の中の誰かは、
僕に声をかけるのだけど、

「本当に、やばいかも。」

という声だってちゃんと聞こえます。

だから、
講師の先生が病気で、
先送りになっていた、
京都広告塾の最後の授業も、

「今は、自分のことを、
 自分でもっと考える時かも。」

と思い、
昼前まで、
ヤンキースの試合を観ていました。
(ははは!)

でも、
やっぱり行こう、と思って、
京都に向かいました。

電車の中で、
本屋の元同僚が、
僕のためにセレクトしてくれた、

「現代でばりばり活躍する坊さん達」

を何人も集めた本を読みました。

へー、すごいなぁ、と思いながらも、

「自分がこうあれたら、
 最高にうれしいだろうなぁ。」

という思いは、まったく感じませんでした。

それは、もちろん、
批判なんかではなくて、
ただ、ただ、正直な感想です。

僕には僕だけのサイズがあります。

僕が坊さんという役割でやりたいことは、
「歌」に似たなにか、
であると、よく思うんです。

「歌」というわけわからないもの。

説明をうまくできた人を、
あざ笑うような特別な気分。


初めて京都を訪れた時と同じように、
新幹線からは、
東寺の五重塔がみえ、

そうなると、やっぱり、
まず東寺にお参りすることになります。

入場所のお姉さんが、
じーっと、
僕の顔を見ているので、

「大人です。」

と言おうと思ったら、

「お坊さんですよね。
 どうぞ。」

と言われ、無料で入場できました。
こんなの初めて。
システムが変わったのかな。

ソフトクリームを食べて、
とても大きなお堂を観ていると、

「栄福寺の下の畑に、
 これぐらいの大きさのお堂ができたら、
 気持ちいいだろうなぁ。」

と考えました。
10億円かかるのだろうか、
20億円かかるのだろうか。

答えがわかるはずのない、
考えをしばらく続けながら、

「一生かかって、それをしたとして、
 それは、夢ではないな。」

そう思う。


すこし、
早めに学校のある
インターナショナルアカデミーに行くと、

雑誌に掲載された、
若く亡くなったイラストレーターが、
体の調子が悪くて講義に行けない時に、
ここでイラストを学ぶ生徒のために、
送った手紙が、
教室の入り口の扉に貼られていました。

そこには、

「思い込むことの強さ」

「好きなことをやることの強さ」

が柔らかく力強い言葉で書かれていて、
京都に来てよかったな、と思いました。
言葉は、発光することがあるのだと思いました。
(玄光社『イラストレーション』
 NO.148 (最新号)45ページ
 ペーター佐藤さんの「第12期生の皆様へ」)
 
スタッフの女性は、
この言葉をバックに入れて、
持ち歩いていると言っていました。

授業のコピーライターの女性は、

「誰に向けてを
 考え過ぎるよりも、

 とことん、
 自分が深く感じたことを書くと、
 商品として、力がある。」

ということを、繰り返し言われ、
そうだ、と思いました。

その日は、
久しぶりのクラスメイトと、
食事をしたので、
京都に泊まりました。

次の朝、
花が好きな女の子が、

「そこに行くためだけに、
 京都に行きたい。」

と言っていた花屋さんで、
花束を作ってもらい、

すぐ近くの清少納言のお墓に行って、
般若心経を念入りに唱えました。
(読んだこと、ないんですけど。)

四国までの長い道のり、
花束を持っていると、
気持ちがよかったです。

花束を持って、
移動を経験したことのない、
男性諸氏には、おすすめです。
僕は、はじめてでした。


栄福寺に帰って今、

「いらないものは虚栄心、
 いるものは誇り。」

「いらないものは諦め、
 いるものは、引き受けること。」

なんていう言葉をぐるぐる、
つむぎながら、
うん、うん、おもしろそうやん、
って考えてます。


ミッセイ

ミッセイさんからのお知らせ。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-07-18-SUN

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