坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第167回 その言葉をこえて。

ほぼにちは。

ミッセイです。

先日、
広告塾の最終日で京都に行った時に、
一休さんで有名な、
大徳寺に行ってみました。

そこで、
「旦那の間」という、
お寺を支える人が訪れた時に、
住職が対応するために使ったという
応接間のような部屋を、
見学する事ができたのですが、
すごく、
気持ちよさそうな部屋でした。

黒光りがしている古い板間の、
広い部屋の真ん中に、

「ポツン」

とお香を焚くための器が置いてあるという、
シンプルな部屋です。



僕が勉強している密教は、
建物や空間が、
けっこう派手なのですが、

やっぱり、
禅の持っているこういう気持ちよさは、
本当にきれいだな、と思います。

今よりも貧しい時代には、
カラフルで装飾的なお寺が、
本当に感動を持って、
訪れた人を感動させたことも、
想像しやすいですし、

自分達の持っている、
“こころ”みたいなものも、
どこか過剰ではみ出すような、
派手さを持っていると思うのですが、

だからこそ、
かもしれないけれど、
シンプルなものは本当に大好きです。

栄福寺にも、
いつか、こんな部屋が欲しいなぁ。

その部屋の襖絵が、
奈良美智さんの描く女の子の絵だったり、
川内倫子さんの光や海の写真だったら、
かっこいいだろーねー。

そもそも、
お寺って、
そういう場所でもあるんだろうな。

うー、想像しただけで、
たまんないねー。
うーーー。


今日、少し前に買った、
故人の宗教学者が喋ったことを、
編集者の方がまとめたであろう感じの、
本を読んでいました。

僕はその人の全集が欲しいと思っていて、
よくヤフーオークションや古書の検索サイトで、
探したりするのですが、
けっこう値が張ります。

その中で、
「存在」という言葉は、
元になった
英語と対応させても、
ドイツ語と対応させても、
いくつかの欠点がある。

そこで、

<あるということ>

とすれば、どうだろうか。

ということが書かれていて、

「そういうことを、
 考えること自体が、
 おもしろいなぁ。」

と思いました。

そして、
こういうことが、
つまり、

「表現すること。」

ってことのヒントなのかなー。
と思いました。

「感情や状態をより、
 自分や誰かに対して、 
 正確に“そのまま”あらわそうとすること。

 “そのまま”には、
 その人のオリジナルの
 手触りみたいなものが多く含まれるので、

 そこにはエモーショナルでソウルフルな、
 なにかが発生すること。」

そういうのが、
“表現”って呼ばれるものなのかな。

言葉はツールですので、
時にとても限定的なものだと思います。

限定的であるからこそ、
説明したり物語る価値があるのだと思います。

でも、
僕達は、どこか、
一度、あらわれた言葉に対して、
過剰な信頼を寄せている時があるので、

言葉の不完全な部分に対して、
どこか不用心であると思います。
僕はそうです。

言葉だけでなく、
あらわれた、
多くのものに対して、
そういう側面があるのではないかと思います。

しかし、耳をすませば、
自分の感じた本当の気分を、
そこにあらわれた言葉や
<そこにあるもの>が、
うまく表現できていないことに、
僕達は気付くはずです。

それは
枝切りばさみで、
鼻毛が切れないように、
当然の事なのですが、

僕達は、
あまり気にせずに、
生活を続けます。

でも、僕は、なんか、
そこを、埋める作業を、
ひとつ、ひとつ、こなしてゆくこと、
こなそうとすることは、

苦しいこともあるだろうけど、
基本的にうれしいこと、
なんじゃないかと思います。

流通している
言葉やなにかと、
自分の感情の間にあるものに対して、
好奇心や違和感や冒険心を強く感じ、
自分や誰かに伝えようとすることは、
とてもおもしろいと思いますし、

おもしろいからこそ、
どんな「個人」や「仕事」にとっても、
(例えば坊さん!)
「お客さんのいる」
おもしろさではないかと思います。

そして、それを、埋めてゆくことは、

「違う言葉」を思いついたり、
「物語」を考えたり、
「音楽」をつくったりすること、

という形をとることも
あるのだろうけれど、

生きる、ということを、
埋める、という側面から見れば、

子供を育てたり、
話をしたり、
夕焼けを見たりする、

という形をとることも、
大いにあるんだろうなぁ、
ということが、
僕が素直に想像することです。


ミッセイ

ミッセイさんからのお知らせ。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-07-25-SUN

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