第168回 僕の仕事は、お坊さん。
ほぼにちは。
ミッセイです。
たぶん、
去年も書いたと思うんですが、
今年も子供達が、
たくさんのお坊さん達と一緒に、
お寺に泊まって、
座禅をしたり、数珠をつくったり、
プールで泳いだりする、
「わんぱく道場」に今年も参加してきました。
今年の僕の分担は、
「お坊さんのお話」
です。
小学生の1年生から6年生までが、
100人近くいる場所で話すのは、
もちろん、はじめてでした。
(主にお年寄りに話すことが多いですから。)
作戦は、いつものように、
「なんとかして、質問してもらう。」
だったんですが、
子供達が、
奪い合うように手を挙げて、
発表しようとするのには、
驚きました。
これは、
僕達の子供時代とは、
明らかに違うなぁ、と思います。
とても、いい事なんじゃないかな。
僕はたぶん、
年齢のわりには、
人前で話す場面が多いのですが、
話す時に決めていることが、
ふたつあります。
ひとつ目は、
「自分が自分に聞かせたいことを、話す。」
ということ、です。
これをしないと、
準備をする時間を含めて、
たぶん無駄なことになりますし、
自分の話せる、
相手が知りたいことは、
自分の個人的な話のような気がするのです。
ふたつ目は、
「1人だけでも、
続きを待って、
聞いているかもしれないということを、
常に自分に確認する。」
ということです。
聴衆が「のっていない」ことは、
話す人には、すぐにわかります。
そういう時は、
本当に話すのをやめたいなぁ、
と思うのですが、
聴衆としての自分は、
「“場”はのってないけど、
僕はおもしろいので、
最後まで、ちゃんと話して欲しいなぁ。」
とよく、思うんです。
だから、
話しながら、
そういう誰かを想像したいと思っています。
なかなか、
うまくいく時、ばっかりではないんですけれど。
というわけで、
前置きが長くなりましたが、
今回は、
「僕の仕事は、お坊さん。」
という話をしました。
自分の仕事をもう一度、
確認しようとする僕が、
切実な言葉を持てば、
子供達は反応してくれるかもと思って、
こんな話を用意しました。
・ ・・・・
こんにちはー。
今日の僕のお話は、
という話をしようと思っています。
ところで、みんなは、
将来やってみたい仕事って、ありますか?
どうでしょう?
「ハイ!ハイ!ハーーイッ!!」
(たくさんの子供達)
はい、どうぞ。
「野球の選手。」
好きな選手とか、いますか?
「ふふふ、秘密。」
そうですか。他にいますか、はい。
「一級建築士です。」
具体的ですね。
僕のお兄さんは建築事務所で働いてるよ。
はい、どうぞ。
「パン屋さんです。」
いいねー。
パン屋さん。
今日、お寺にパン屋さんの、
トラックで来てた子がいたけど、
この中の誰かのお父さんは、
パン屋さんなんだろうね。
ところで、
僕は「お坊さん」なんだけど、
お坊さんって、
何してると思う?
みんな知ってる?
どうだろう?
はい。
「えーっと、
長い距離を歩いたり、
調べものをしたりしています。」
そうだね。そういう坊さんもいるね。
どうですか?
「はい!
お寺に引きこもって、
隣の人と、ジャンケンをしています。」
ははははは!
ジャンケン!
もしかしたら、
そういう人も、いるかもね。
はい。
「人が死んだら来ます。」
そうだね。僕も行きます。
僕は、思うんだけどね、
お坊さんの仕事は、
亡くなった人が幸せになるように願ったり、
病気の人が治るように祈ったり、
こういうことが、多いんです。
これは、ずいぶん変わった仕事です。
パン屋さんがパンを作ったり、
本屋さんが本を売ったりするのと、
かなり、違っています。
形がないですからね。
ところでみんなは、
お願い事ってありますか?
ひとつだけ、叶えてくれるとしたら、
お願いすることって、
なんかありますか?
はい。ありますか?
「お城が欲しいです。
お城に住みたいです。」
お城かー。
「死んだおばあちゃんが、
幸せだといいと思います。」
うん。そうですか。
「お金持ちになりたいです。」
お金持ち。
はい。ありがとう。
みんなにはお願い事を、
いっぱい言ってもらったんだけど、
お坊さんをしていて、
人のお願い事をあずかったり、
自分がお願い事をしてると気付くんですが、
お願いを持つ、
っていうぐらい、
ワクワクして、おもしろくて、楽しい事って、
あんまりないって、思うんです。
だから、これを、ひとつ教えてあげます。
お願いを持つことが、
おもしろいって事を、
教えてあげようと思います。
大人になっても、そうなんだと思うんです。
そして、僕は、
お坊さんの仕事って、
もっと、あると思うんだよ。
ってことを、
考えることだと思うんです。
だから、今度は、
みんながお坊さんに教えてください。
どんな時に、うれしいですか?
それを考えるのが、
僕の仕事なんです。
だから、知ってたら、教えてね。
はい。
「ゴハンを、食べる時が、うれしいです。」
ごはん。うれしいね。
「先生に、ほめられるとうれしいです。」
うん。うれしい。
「ヒットを打った時がうれしいです、野球で。」
あっ、それは、うれしい。
はい。ありがとう。
みんなから、うれしいことを、
いっぱい聞いて、思いました。
こういうことかもしれない。
かもしれないね。
そんな風に思いました。
これは、発見かもしれません。
ありがとう。
じゃあ、僕も。
うれしい時って、
こういう時が、
多いんじゃないかと思うんです。
これも、うれしいよね。
まさか、自分が。
今までなら、
できなかったことを。
できるなんて、
考えもしなかったことが、できた。
僕に、できた。
これは、うれしいよね。
だとしたら、
もしかしたら、
こんなことも、言えるかもしれないよ。
どうだろう?
そうかもしれないと思うんです。
5メートルしか泳げなかったのに、
25メートル、泳げるようになった子がいた。
たぶん、しんどかったと思うんだよ。
そう思うんだよ。
うれしいには、
しんどい時があるかもって、思うんだ。
最後に、お坊さんは、
インドのおシャカさんのことを、
尊敬しているので、
すこしだけ。
おシャカさんは、
「やさしい人」
と、
「今までより、
いい方法を考える人」
が、うれしくなるって、
考えた人だと思うんです。
この「やさしい」を、
「慈悲」(じひ)っていいます。
そして、
「いい方法を考えること」を、
「智慧」(ちえ)っていいます。
こういうことだね。
どうだろう。
本当かな?
どうだろうね。
今日の話を、
いっこだけでも、
いつか思い出してくれると、
うれしいです。
ありがとう。
・・・・・
ミッセイ
ミッセイさんからのお知らせ。 |
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
お話を頂きました。)
空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。
手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。 |
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