坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第172回 音楽みたいに。

ほぼにちは。

ミッセイです。

最近レンタルビデオ屋さんで、
借りた映画で流れていた、
くるりというバンドの、
「ハイウェイ」という曲が、
ずーっと頭を流れていて、

のどが渇いた時に、
ジュースを飲むみたいに、

すこし時間が出来ると、
2階の自分の部屋で、
「ハイウェイ」を聴いています。

そして、
彼らのアルバムを制作している風景が、
収録されているDVDを眺めては、

「あの笑顔、
 明日の法事でもできんことでは、
 ないかもな。」

とかって考えたりしています。

今年のライブツアーで、
四国にやってきたくるりを聴きに、
僕は松山と高知に行きました。

そこで、メンバーの岸田くんが、
27歳であることを知り、

「27になるまでは、なんかしたいな。」

と深く感じ入った26歳の僕は、
なんかってなによ、
と自分に聞いている内に、
27歳になっていました。


この広い世の中には、

「言語がどういうふうに
 発生して来たのかというと、
 音楽から発生してきたのだ。 
 そして、日常語は、詩から発生した。」

という、
かっこいいアイデアが
あるそうなのですが、

僕も時々、
漠然とした“音楽”という存在で、
宗教と自分の事を考えます。

それは、さっき書いたような、

「大丈夫、明日の法事も音楽だ。」

みたいな感覚と一緒に、
やって来ることが多いです。

そして、今日の朝、

仏教とか宗教とかお寺という存在が、
本当に音楽みたいなものを、
含むとしたら、
例えば、

「音楽を聴く」

という状態は、
どういう状況なのか?
ということをノートに書き付けていました。

そしてら、
なんだか、すこしだけ、

「自分がこの役割で、探すもの」

の輪郭がおぼろけに、
浮かんできたような気がしたので、
すこし、まとめてみようと思って、
今、この文章を書いています。

仏教の中で、
音楽を聴くということは、

お釈迦さんのアイデアに触れたり、
お経に触れたり、修法をしたり、
それを感じようとすることで、

それを、うけとめ、


という個人や、

個人達が作る社会や、
いろんな意味での世界の、
精神とか魂とか心とか体とか、

なんというか、
僕達をひっくるめたものの、

置きどころをこしらえたり、
よりいい状態に
近づこうとすることだと思います。

また、そもそも、
その“置きどころ”ってなんだろう?
と考えたり、
“近づこうとする状態”
を模索し想像し感じることだと思います。

時にお風呂に入りながら、
恋をしながら、
レフト前ヒットを打ちながら。

それは、
「音楽を聴く」
というよりは、
むしろ、

「音楽を演る。」

というような、
かっこいいことなのかもしれないね。

それは、「思想」と比べると、

「ひっくるめた」

感じがすごく強いと思うんです。

でも、もう一度、
音楽を引っ張り込んできて
考えてみると、

「う〜ん。
 僕は、この音楽の持つ“置き場所”と、
 近づこうとする状態が好きだ。」

なんて、普段、思わない、

「ええなぁ。なんか好きや。」

で終わり。

そして、ほとんどの場合、
僕達は“自分のための音楽”を、
瞬間的に知ることができ、
また瞬間的に味わうことが出来ます。

この部分が、
宗教と音楽を近くで隔てる、
大きなヒントであると、
僕は感じるのです。

つまり音楽が達成するような、
“瞬間”に、
“まとまった時間”を与えようとすること。
その時間が住む“空間”を与えようとすること。

例えば心の中で、
すきな音楽をずっと演奏しているよう状態を、
創り出そうとする試み。

それが宗教が達成しようとすることの、
ひとつかもしれないと僕は感じるのです。


もちろん、目指したり、
理想した通りには、
人は動かないし世界も変わらないと思います。
僕もそうです。

でもそこに、
今までより、
なにか好きだと感じる出来事が、
発生するような小さな可能性が、
少しだけでも増えるとしたら、

なにかを試みることは、
相対的にみて、
退屈なことでは、ないかもね。


ミッセイ

ミッセイさんからのお知らせ。
シンメディアという出版社刊行の
『季刊 巡礼マガジン』
というシブイ名前の雑誌で、
「おもいだす空海」という連載を、
最新号の31号から始めました。
(ほぼ日を読んだ編集者の方から、
 お話を頂きました。)

空海の著作の言葉に、
僕が短いコメントと、
写真を添えるという、
見開き2ページでの連載です。

手に取られる機会があれば、
ちらっと覗いてみてください。


このページへの激励や感想などは、
メールの表題に「ミッセイさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2004-09-12-SUN

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