坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第196回 栄福寺に訪ねてきた二人と。

ミッセイです。

最近、
お父さんを亡くした友達が、
挨拶回りの途中で栄福寺に寄ってくれました。

「急すぎて、
 まだよくわかってないような感じなんですよ。

 ホント、どこ行ったんかなぁ。」

と素直に言っていました。

僕は、その時、
わからないけれど、
こんな風に思いました。

「僕も全然わからんけど、

 ここには、
 
 エネルギーみたいものがあって、
 そこに、行ったんかな。
 
 輪廻(りんね)って考え方とは、
 たぶん、全然違うのかもしれないけれど、

 お父さんと誰かと
 例えば500人ぐらいの人とか、
 人の声とか風とか木とか商品とか、

 そういうものが混じって、

 後の“ひとり”って、
 できるんじゃないかな。
 
 自分も含めて。」

「なんとなく・・・、
 いや、
 わかるかもしれないですね。

 でも、
 神とか仏とかって、
 あれかもしれんね。」

と言って、
彼は“太陽”を指さしました。

「あれがないと、
 なんにもできないし。」

「ははは、大日如来様っ!」

僕らは笑いました。


昨日、
栄福寺に僕より4つぐらい上の、
近所に住んでいた、
同級生のお兄さんが訪ねてきました。

いろいろ、
話を聞いていると、

奈良・薬師寺の再建にも携わるような、
滋賀の宮大工集団に5年間在籍して、

今は大阪で独立して、
大工さんをしているということでした。

「自分が初めて仏さんと、
 触れたのはここやったんよ。

 住職のお薬師さんとか、
 お大師さんの話を聞いて。

 かねつき堂の下で、
 みこしを洗って。

 それがなかったら、
 なにそれって感じやったもん。

 だから、
 今日は住職の話を、
 聞きに来ようと思ったんやけど、
 まさか、
 アユム(僕)が坊さんになってるとは、
 思いもせんかったよ。」

と言っていました。

「関西でしか仕事したことないから、
 ここのお寺の
 蛙股(かえるまた、建物の重さを支える部材)
 の形って、すごい変わってるように思うわ。」

「あっ、それ、
 じいちゃんも、
 よく言ってましたよ。」

「そうやろう、そうやろう。」

とすごく、うれしそうに笑っていました。


僕は子供達に限らず、
何年も同じ話をするのが、
いまだに、
気分的に慣れない所があるのだけれど、

やっぱり、
こういうこともあるのだなぁ。

そして、
やっぱり、
一人の人は、
いろんな人とか、
いろんなもので、
つくられていくって思ったよ。

よかったねぇ、じいちゃん。


ミッセイ

お知らせ。
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。

栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)

全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。

詳しくは、こちらまで。


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2005-04-13-WED
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