第204回
ラダックへ!
(アルチ・ゴンパの三層堂と大日堂での体験)
ほぼにちは。
ミッセイです。
ラダックのマンダラを訪れた僕達は、
最初の目的地、
アルチ・ゴンパ(寺)に向かうため、
アルチの村に到着しました。
村の人々は、
やはりチベット系の人達
(と顔の感じから僕が思うのだけど。)
が多く、
農作業している服もちょっと、
民族衣装っぽい感じでした。
僕はああいう服って、
正装かと思っていました。
山はやはり岩肌なのですが、
人が生活しているだけあって、
畑には緑色もずいぶん豊かで、
やはりそういう風景はほっとします。
所々に綺麗な、
黄色の花が咲いているのですが、
周りの色の数とか鮮やかさが、
普段自分が生活している場所より低いせいか、
その黄色が目にまぶしいぐらいに感じます。
自然界でああいう色の感じ方をしたのは、
僕は初めてかもしれません。
この辺りで使われている、
「ラダック語」では、
こんにちは、さようなら、ありがとう、
とたくさんの意味で使える、
「ジュレー」
という便利な言葉があるのですが、
僕が、
小さな声で、
「ジュレー」
と声を掛けると、
ほとんどの人が笑顔で、
「ジュレー」
という言葉を返してくれます。
特に子供達は、
僕が自分のカメラを指さして、
「写真を撮っていい?」
とゼスチャーで伝えると、
わーっと集まってきます。
ちなみに、
この赤ちゃんのジャンバーは、
ピカチュウですね。
とあるチベットのお坊さんが着ていた、
えんじ色のTシャツには、
漢字で「中田」と書いていました。
たぶんサッカーの中田英寿選手の、
Tシャツだと思われます。
(在籍していたローマのチームカラーと、
チベット仏教の僧服の色が妙に似ている。)
この辺りには、
商店のようなものはあまりなかったのですが、
車の行商さんの荷台に、
服とか生活雑貨が積まれていて、
現地の人はそれを物色していました。
歩いてしばらくすると、
アルチ・ゴンパに到着しました。
いくつかのお堂があるのですが、
お堂の外観は土壁でシンプルな感じが多いです。
日本のお寺とは、
ずいぶん違います。
屋根に不思議な突起のある、
お堂もあります。
まず、
入っていたのは、
「三層堂」
と呼ばれる、
三つの縦に並んだ空間で、
構成されたお堂です。
ありとあらゆる壁に、
様々な仏、
色々な形を持ったマンダラが描かれていて、
力強く、
上層階から
漏れてくれる光と一緒に、
心に、
意識に、
なにかが、
飛び込んできます。
なんだろう。
この心。
アルチ・ゴンパの壁画は、
11世紀から13世紀のもので、
日本で言えば平安後期から鎌倉初期の時代の、
国宝級の質のものばかりということです。
アルチ・ゴンパ、三層堂の十一面観音
そんなマンダラが三層堂の二階には、
10種類、ずらっと並んでいます。
金剛界マンダラの一種
でも、
僕が吸い込んだ空気は、
「国宝級」
とかって、
言葉では、
うまく、あらわすことができません。
第一、
僕には、
細かいマンダラの知識とかが、
実はあるわけではないんです。
だから、
アルチ・ゴンパだけでなく、
すべての訪れるゴンパの仏やマンダラに対して、
「自分の中の、
物語のようなものに、
話しかけてくるような、
共鳴するような、
出会いをしたいな。」
とずっと思って、
会いに行きました。
この感覚は、
日本に帰国してからの、
仏教との付き合い方でも、
そうありたいと思ったんです。
知識というよりは、
生の“自分”に、
自然と混じり合うような、
体験のような思想でありアイデア、
僕にとっての、
宗教ってそんなもんかなって思ったな。
というより、
僕はそういう出会いしかできない気がします。
そして訪れる場所で、
僕が持ちたかったのは“敬意”です。
お寺にはいると、
現地のガイドもドライバーも、
頭を床に付けたり、
真言を口にする
唇の前でしっかりと手を合わし、
まずは拝みます。
ここで僕達が訪れるのは、
尊敬となにかを託された、
存在です。
そういった“仏”に対する、
敬意を持った、
「来訪者」でありたいと、
そこで考えていました。
次に訪れた「大日堂」は、
残念ながら、
撮影の許可がおりなかったのですが、
(さっきの三層堂もかなり規制が厳しかった。)
本当に素晴らしい、大好きなお堂でした。
お堂を包んでいる
無数の光がたまらなく綺麗なんです。
僕に、
メールをくださる読者の方は、
「日本のお寺の持つ“暗さ”が、
とても好きです。
日本人って、
ああいう感覚を、
ずっと大事にしてきたと思うんです。」
という事を、
時々僕に伝えてくださって、
僕も高野山のお寺が持つような、
「暗さ」
ってすごく好きなんですが、
この大日堂には、
構造的に
明るさと暗さを両方取り入れてあるんです。
内部が二層に分かれていて、
入ってすぐの部分は、
ふんだんに、
できる限りの光が入るようになっています。
そこで、
僕達は光に囲まれるような体験をします。
そして、
「内部にある入り口」
のようなものを、
くぐってさらに中へ進むと、
ひんやりとした、
暗すぎない暗さを持った、
静寂な空気のお堂空間が待っていました。
「対照的な光」
をあそこまで、
柔らかく気持ちよく感じた事って、
たぶん、なかったなぁ。
もう、
いつまでも、
そこにいたくなるような空間で、
僕の兄は建築事務所に在籍しているので、
「ここに来てもらって、
こんな感じのお堂を、
栄福寺に設計してほしいなー。
あったらいいだろうなぁ。」
とワクワクしっぱなしでした。
だから、
アルチの自由時間では、
迷わずもう一度、
このお堂を訪ねて、
思う存分ひとりで時間をすごし、
お経をあげました。
すばらしい時間でした。
今でも、
あの時の時間と空間の感触を、
ありありと心に思い浮かべることができます。
さて僕達は、
川を越えた丘の上にある
「チャチャプリ寺」に向かいます。
ミッセイ
お知らせ。 |
講談社から刊行中の雑誌、
『週間 四国88カ所 遍路の旅』で、
栄福寺掲載号の20号が発売になっています。
55番の南光坊さん、
56番の泰山寺さんと共に、
57番、栄福寺の境内や仏様、
咲いている花なんかを写真でも、
見ることができますよ!
僕も、
「月を見ていると、
照らされた光も光だと思う。」
というような、
短い文章を寄せています。
なお、
この号の巻頭インタビューは、
建築家の安藤忠雄さんです。
夕日に照らされた、
瀬戸内海としまなみ海道の、
表紙が目印なので、
興味がある方は、
のぞいてみてくださいね。 |
四国88カ所のお寺が88枚の切手になります。
原画の撮影は「坊さん」の文章の中でも、
何度か登場した三好和義さんです。
栄福寺は11月5日発売の第一集、
20ヶ寺の中に収録されます。
(紅葉が綺麗な秋の風景)
全国の郵便局でも、
通信販売の申し込みが出来るようですよ。
詳しくは、こちらまで。 |
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