坊さん。
57番札所24歳住職7転8起の日々。

第225回 
本堂の縁がヒノキになりました。


こんにちは。
四国の坊さん、ミッセイです。

僕の住む栄福寺は、
「四国八十八ヶ所」以外にも、
「伊予府中三十三ヶ所」という巡礼の
札所でもあります。

この「伊予府中霊場」は、
近所のお寺ばかりなので、

何人かのお坊さんで集まって、
この巡礼をバスで御参りしてきました。



僕は、
古いお地蔵さんや石仏が好きなので、
それを探して拝んだり、



新しいお地蔵さんに、
かわいいニット帽を被せた姿に、
みんなで笑ったりしながら、



なかなか楽しい巡礼でした。

途中、
軽自動車の車輪が路側帯に乗り上げて、
立ち往生していたので、
バスを停めて坊さん達で、
車を持ち上げたのですが、

運転していた若い女性は、
あっけにとられた感じで、
ほとんど「どっきりカメラ」という感じでした。

バスが停まって、
ラッキーと思っていたら、
降りてきた人達が、
全員、作務衣を着た坊さんだった、
なんて変な夢みたいですよね。

***

栄福寺の本堂は、
だいたい築100年で、
お寺の中では、
新しいとも言える建物なのですが、

御参りの人達が立つ「縁」の部分が、
グラグラになって、
ちょっと危ない状態になっていました。

これは、
栄福寺が普通のお寺からは、
考えられないぐらいの、
御参りの人達が来られることと、

松の木で縁を作っているので、
「松食い虫」が、
少しずつ攻めてきているようでした。

そこで、
縁をこの際、
新しくすることにしたのですが、

今回の仕事を、
僕の同級生で一緒の部活をしていた男の子が、
宮大工の修行をしてきた人と組んで、
大工さんをしているので、
彼ら二人に頼むことにしました。

一度、
作業場を訪れた時に、

「自分はヒノキがすごい好きなので、
 たくさん買っておいて、
 いつでも使えるように乾かしているんだ。」

と言っていたり、
近所のお坊さんから、
いい評判を耳にしていたのです。

普通ですと、
お寺の縁に使えるような、
大きなヒノキは、
個人の大工さんは、
なかなか持っていないらしいのですが、
やはり彼は持っていました。



古い松の縁をはがしてみると、
やはりかなり痛んでいます。



痛んだ場所だけを、
新しくしても不格好になってしまうので、
とりあえず前の部分は、
新しく総ヒノキの縁になりました。



真新しいヒノキの縁を前にした、
お遍路さんは思わず靴を脱いで、
座ってお経をあげる人がいたり、

「とても足で踏めません。
 なにか紙を敷いてくれませんか?」

と言われたり、
日本人の「木」や「ヒノキ」に対する、
直感的な敬虔な気持ちを、
手触りのある実感で感じることが出来て、
おもしろいな、いいなぁ、と思いました。

完成した日は、
たまたま夕方に友達のお坊さんが、
遊びに来たので見てもらうと、

「これだけのヒノキを、
 よく急に言って持ってたなぁ。」

と驚いていました。

それを翌日、同級生の大工さんに言うと、

「そうやろう。そう言ってたやろう。」

と笑みをこらえながら、
(シブイ雰囲気の人なので。)
うれしそうに頷いていました。

「ようするにオタクだな。
 ヒノキマニアじゃないか、あなたは。」

と冗談で僕が言うと、
(ゆるい雰囲気の人なので。)

「ふふふふふふ」

とついに声を出して笑っていました。

はがした松の木で使える木は、
父親がお寺のベンチを、
作ってくれるらしいです。


ミッセイ


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2007-04-04-WED
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