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私をリングサイドに連れてって。

史上初の快挙! 徳山昌守
王座獲得試合を急遽放送


去る8月27日(日)大阪府立体育館で
WBC世界S.フライ級王座交代劇がありました。
勝ったのは金沢ジム所属、ランキング4位の
徳山昌守選手(25歳)。
彼の本名は洪昌守(ホン・チャンス)といい
在日朝鮮人3世を公言し、
初の世界チャンピオンとなりました。

今回の試合は単なる朝鮮籍ボクサーが
世界チャンピオンになったというだけではなく、
相手のチョ・インジュー選手が韓国人ということで
南北対決という点で世界が注目した試合でした。

分裂国家選手の対決ということで、リング上では
韓国、北朝鮮、統一旗、日の丸と
四種類の旗が登場し、通常のタイトルマッチとは
一味違った雰囲気が漂いました。

徳山選手は東京都大田区生まれの25歳。
五人兄弟の末っ子として生まれました。
東京朝鮮高級学校でボクシングを始め、
3年生の時に朝鮮高級学校全国大会で優勝。
1994年9月にプロデビュー。
1996年に全日本フライ級新人王を獲得。
1997年にはスズキ・カバトの持つ日本タイトルに
2度挑戦するも、引分けと負傷判定に泣きました。
1998年12月には、かつて2階級制覇した井岡弘樹に
5ラウンドTKО勝ちして、
再び注目を集めました。

この間、日本の高校全国大会には出場できず、
新人王獲得後に、街でのつまらないいざこざにも巻き込まれ、
ジム移籍などのつらい経験もしてきました。

今回、徳山選手のトランクスには
「ОNE KОREA」というメッセージが刺繍され、
コメントでも「祖国統一」という強い思いが
各メディアで報道されました。

一方、チャンピオンのチェ選手は
川島選手を破った強打のフィリピン、
ジェリー・ペニャロサ選手からタイトルを奪い、
昨年は山口圭二選手を圧倒的な強さで破り、
5度の防衛に成功しています。
S.フライ級に一時代を築こうかという
勢いのある実力選手です。

試合は予想を上回る、熱戦になりました。
4ラウンドに徳山選手のきれいなワンツーがヒットして
チェ選手からダウンを奪いました。
その勢いをそのまま保ち、終始優勢のまま試合を終え
3-0の判定で見事に王座を獲得しました。

彼の偉業は、祖国初の世界王者ということだけでなく、
日本のジムに所属する選手の
世界初挑戦18連続失敗(3つの引分け含む)を
ストップさせたということもあります。
18人の選手というのは、
三谷大和、飯田覚士、佐藤健太、原田剛志、
渡久地隆人、塩浜崇、坂本博之、畑山隆則、戸高秀樹、
ウルフ時光、名護明彦、石井広三、安部悟、越本隆志、
川端賢樹、佐井敦史、西岡利晃、セレス小林、という
そうそうたる選手たちです。

奇しくも今回のシドニーオリンピックで
南北朝鮮が開会式で同時入場するという
快挙も聞こえてきています。
スポーツの持つ公平さが国際政治の壁を打ち破る
ひとつの形といってもいい出来事でしょう。

日本ではいろいろな事情もあり
この試合の放送がない、などという
週刊誌などの記事を目にした方もいると思われますが、
それは間違いです。
WOWOWでは9月30日(土)午後6時から
この試合を急遽放送することになりました。
徳山選手の感動の試合を、ぜひご覧ください。

WOWOW 小田真幹

ご意見はこちらまで Boxnight@aol.com

2000-09-14-THU

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