私をリングサイドに連れてって。 |
日本人選手が大活躍してない時期には、 ボクシング人気も停滞するけれど、 「自国選手びいき」から離れて、いま、世界を見渡せば ボクシングって、近年にないくらいの大豊作期なんだ。 ヘビー級はもちろんだけど、 デラホーヤのような大スターもいるし、 ハメドのような劇画以上のヒーローもいる。 世界のボクシングを、どこよりも しっかり中継してくれているテレビ局 といえばWOWOWですが、 WOWOWの格闘技といえば小田真幹さんでしょう。 |
ラスベガスで1年ぶり、天才ボクサーの激突!! 1年ぶりのラスベガス モラレス対パッキャオ第1戦から1年余りのラスベガスで ボクシング観戦した。 滞在週のベガスは大小の団体のコンベンションが重なり ホテルは飽和状態。 関係者にお願いしたホテル(並です)は 1泊$400ドル(約\48000)と通常の4倍。 さすがはエンターテインメントの本場、 不況知らずの人込みで溢れていた。 天才ボクサーの激突 今回の試合はIBF世界ウェルター級タイトルマッチ 「ザブ・ジュダー対フロイド・メイウェザー」。 なぜベガスにきたのかというと、 メイウェザー(29歳)のビックマッチが一番の理由である。 すでにS.フェザー、ライト、S.ライト級の 3階級を制覇している。 とにかく早い、そしてバネ、キレ、防御、 全てにおいて芸術的なボクシングを見せてくれる 世界最高の選手なのである。 黒人独特のテンポとリズムと才能は見とれてしまう。 その才能をいかんなく発揮して4階級を狙う。 そして今回の相手のザブ・ジュダーである。 彼もメイウェザーと同じ才能を持つ 天才肌の黒人ボクサーなのである。 サウスポーから繰り出すワンツーのキレは凄まじく、 S.ライト、ウェルターの2階級を制覇している。 複数階級制覇している二人の天才ボクサーの激突は、 世界タイトルのみならず、 アメリカ黒人ボクサー最強決定戦となるからである。 専門家の予想は天才型といえども メイウェザー有利が多数だった。 王者はジュダー、挑戦者はメイウェザー まさに舞台は整った。 計量(左がジュダー、右がメイウェザー) 2大犬猿プロモーター共同開催 今回関係者の注目を集めたのは犬猿の仲といわれる トップランクのボブ・アラムと ドン・キングの共同開催だった。 共に74歳、 かたやハーバードで法律を学んだ白人ビジネスマン、 かたやストリート出身叩き上げの黒人興行家である。 長いキャリアでもこれまでたった3回しか 共同開催していないことを見ても 仲が良くないことはみてとれる。 しかし不思議なもので 世界的なメガイベントとなるとの嗅覚が働くと 呉越同舟で、犬猿の仲のはずが 一時的なビジネスパートナーとなる。 これもアメリカらしさなのかもしれない。 それほどこの対戦はビジネス的にも「うまみ」があり 29歳と28歳のピークにあるボクサーの 「旬」を嗅ぎ取り実現する「価値のある」試合なのである。 お互い勝つことを前提としている ハイリスク、ハイリターンのガチンコ勝負である。 試合週は月曜日から両選手のラスベガス入り、 最終練習、記者会見、計量と ベガスも徐々に盛り上がっていく。 ・いよいよ最強ボクサー決定 試合は土曜日の夜。場所はトーマス&マックセンター。 観衆は1万7500人とほぼ満員の中、 メインイベントが始まった。 お互いラップでの入場。 今回は観客も黒人層が多くゴング前に すでに客席はノリノリ状態。 いよいよ試合ゴングが鳴る。 試合内容は一般のファンが楽しめるものであるかどうか 疑問があった。 天才ボクサーがお互い一瞬のスキを狙うので、 フェイントが細かすぎ、反応も良すぎるため、 見た目にパンチの交換にはならず 防御戦に見えてしまうからだ。 しかしこの高いレベルの駆け引きは 非常にスリリングだった。 手を出せば隙ができる、そこを狙う。さらに先手を狙う。 実践しようとしているのは基本のものだが、 この二人が行うと全く違ったものになる。 他の世界レベルのボクサーにも 反応できないレベルなのだ。 試合は不利を予想されていた ジュダーのクイックなワンツーを メイウェザーが警戒し、かいくぐりながら、 得意の右ストレートを当てる流れで進んだ。 序盤2回メイウェザーの右に サウスポーのジュダーも右をあわせ ダウンを奪ったかに見えたが、 レフリーはスリップと判定、 ジュダーはペースを掴み損ねた。 しかし本当にレベルが高い。 その後試合のペースはジュダーのワンツーに対応した メイウェザーが徐々に支配を始める。 変幻自在の攻めとデイフェンスで ジュダーの表情が見る見る変わっていく。 メイウェザー(右)の見事な右ストレート ・前代未聞の大乱闘 そして10回終了間際に事件は起こった。 ジュダーが明確なローブローを放ち、 痛がったメイウェザーが頭を下げた後頭部に さらにパンチを浴びせたのだ。 追い込まれていたのはわかるが、 誰がみてもわかるジュダーのダーティファイトだった。 その瞬間なんと、メイウェザー陣営から 叔父のロジャーがリングに入り ジュダーに向かっていったのだ。 それに反応するようにジュダーの父親、 ジョエルもリングに乱入。 堰を切ったように両陣営がリングになだれ込み 殴り合いを始めたのだ。 過去にタイソンがリング上で 問題行為をしたことはあったが、 陣営がなだれ込んでの殴り合いは初めての経験だ。 カジノが雇った屈強な警備員がすぐに事態を収拾したが、 前代未聞の出来事となった。 試合はその段階から再開。 そこからも冷静さを保ったのはメイウェザーだった。 カッカするどころか冷静に一発を喰うことだけを避けて 残りの2ラウンドを進めた。 判定は3−0でメイウェザー。 これで彼自身のマイルストーンとなる 4階級制覇となった。 トータルでみるとメイウェザーの能力が優っていた。 ただしジュダーのワンツーが メイウェザーの最後の攻めを諦めさせたことも事実。 乱闘は残念だったが、本当に素晴らしい技術を見た。 今回この試合を帝拳のホープ、 粟生隆寛選手と共に観戦した。 日本の誇るフェザー級のホープも 「瞬きが出来なく、早い」と 興奮を隠し切れない様子だった。 この後メキシコに渡り、 マルコ・アントニオ・バレラのもとで 5月20日に暫定ライト級の世界戦が決まっている ジムの先輩、稲田千賢選手と共同練習を行う。 写真粟生 日本のホープ粟生選手(右) 写真協力:福田直樹 |
2006-04-13-THU
ホーム |
いままでのタイトル。