BOXING
私をリングサイドに連れてって。

日本人よさらに海外へ出でよ!!
〜サンフランシスコにて〜


17日の月曜日、サンフランシスコにやってきました。
まず、アメリカのサッカー報道に関することを少し。

「日本−トルコ」はサンフランシスコのスポーツバーで
観戦することができました。
時差の関係で17日(月)午後11時30分キックオフ。
韓国−イタリアは翌早朝4時30分だったので、
アジアサッカーの歴史的瞬間を見るができませんでした。
日本戦はESPNの冷静な英語実況で見たため、
負けても贔屓ではなく「日本強し」を感じました。
個人的にも、特にあの雨の中でミスを恐れず、
果敢に攻め続けた事は
これまでの日本に感じられなかった
勝負への「気迫」を強く見る事ができました。
サイドチェンジや狭いエリアでのパス回しなどの技術、
スタミナと戦術、献身的な動き、勝負にかける執念、
まさに戦う新世代を目撃した印象です。

実際はというとまさにその通りです。
特にアメリカのネットワークテレビは
ニュースでもアメリカ戦以外、
ほとんど露出がないのです。
おかげで韓国−イタリア戦のゴールシーンを
未だに見ておらず、
新聞の記事から想像するしかありません。
今は何といっても野球で、
MLBと佳境を迎えている大学野球が
大きく報道されています。
街も同じです。
日本戦の放送も実はお願いして
スクリーンに出してもらったのです。
放送に従事している者の個人的な感想ですが、
アメリカではテニスとゴルフのメジャータイトル以外は
他国の時間に合わせてスポーツを見るという文化が
ないと思います。
MLB、NBA、NHL、NFL、ボクシング、テニス、ゴルフ、
モータースポーツなど、
日本でもお馴染みのスポーツは
全てアメリカの放送スケジュールに沿って生中継されるため
自然に見る生活になっており、
無理する必要がないからです。

しかしベスト8までいくとさすがに変化が出てきています。
あまり知られていませんが、
女子は優勝しているほどなんです。
ゴルフのメジャー、NBA、NHLが終了したという
タイミングもあるのでしょう。
さらに西海岸(特にカリフォルニア)には
因縁深い話題もあったのです。

それはアメリカとメキシコの関係です。

17日(月)アメリカ−メキシコの隣国対決は
アメリカの完勝でした。
かつて北米・中南米・カリブ海地域を支配していた
名門メキシコ。
過去にカリフォルニア州、ニューメキシコ州を中心とする
国土の約半分をアメリカに奪われ、経済不況も重なり
カリフォルニアを中心に大量の人々が
移民として祖国を離れた過去から、
メキシコにとってサッカーは自然と
試合を越えた感情を持ち「勝つ喜びを味わえる」
伝統スポーツであったのです。
それを証拠に特にアメリカ戦は強く、
1937年から1980年まで24戦無敗。
サッカーは、巨大経済の隣国、アメリカを破り
歴史的な悔しさの溜飲をさげることのできる
唯一といってもよい誇りだったのです。

サッカー以外でも、
80年代メジャーで純メキシコ人のバレンズエラと
ボクシングのチャベスの人気は物凄かったですし、
アメリカ国籍ですがメキシコの血を引く、
メジャーのガルシアパーラ、
ボクシングのデラ・ホーヤ、バルガスなどが
やはりヒーローとして人気があります。

しかしサッカーでは直近の6戦は
アメリカの5勝と関係が逆転しています。
アメリカ人持ち前の強靭な肉体と
プロ組織化による技術、戦術、経験で
急速に追い上げているのです。

もちろんアメリカ人も傷つきながら強くなったのです。
決定的だったのが98年のアメリカ大会です。
地元で有利なはずだったアメリカが、
なんと会場を埋め尽くしたヒスパニック系の観客に圧倒され
屈辱の敗戦を経験したのです。

これを機にサッカーに対する両国の
緊張と感情が一気に高まりました。
今回の試合でもファウルの多さや
試合後のユニフォームの交換が
なかったということで象徴され、
今後も軋轢は続くだろうと言われています。

良きも悪きも何でも一番でないと気がすまない
アメリカを象徴しているのが
サンフランシスコの新聞の見出しでした。

「ワールドカップで米移民の忠誠心をテストする」

(次に対戦するドイツからの移民ももちろん多数います)

「アメリカ、世界へ」
「アメリカ、歴史の扉を開く」

(8強進出で初めて「世界」なのです。この国では
 決勝トーナメント進出だけでは評価されないのです)

これが日本だとしたら、日本居住の移民に対しては
もっと配慮した記事になるでしょうし、
決勝トーナメント進出でひとまず未来は明るい、
満足すべしといった収め方も多くでるでしょう。

日本敗戦後の報道を見聞きしていないので
単純比較はできませんが、
この「何でもどこまでも強くあるべき論」アメリカと
「美しき努力評価論」日本の
文化、国民性の違いを感じました。

さてサンフランシスコといえば、
ジャイアンツの新庄剛史選手です。
18日のタンパベイ・デビルレイズ戦に
7番センターで先発出場しました。
私がこの目で初めて見る日本人メジャーリーガーです。
注目度ではシアトルが圧倒的ですが、
新庄もバッティングはチーム内で
打率9位、ヒット数6位、打点数8位、HR数8位と
微妙な数字で脇役ながらも、
守備では不動のセンターとして評価されています。

しかし今回はその守備で大ポカをやってしまいました。
1回先頭打者のレフト寄りの大飛球を追いかけた際、
芝生と土の部分に足を取られ、なぜかフェンスに向って
ヘッドスライディングのように転倒し、
3塁打にしてしまいました。
直後、ボンズに励まされていたほどです。
その後味方のリズムの悪さやミスが続き、大量失点。
バッティングでも4打数1安打と
ミスを補うほどの活躍はできませんでした。
日本ですとミスした選手は
変えられてしまう場合がありますが、
信用されている証拠でしょう、交代はありませんでした。


4打数1安打の新庄選手

しかし体格に劣る日本人が
大資本、スポーツ大国アメリカのフィールドや伝統国で、
世界の列強相手に持ち前の努力と技術で
のびのびプレーし活躍するのは頼もしい限りです。
ワールドカップの記録的な視聴率を見ても一目瞭然です。
このグローバルな姿を一度見てしまったら、
どんなケースでも日本国内に選手達を縛る形にするのは
時代に逆行してゆく行為になってゆくでしょう。
サッカーやアマチュアのオリンピック種目にしても
海外遠征や国際試合の経験が
「ここぞ」という勝負所で必ず関係してくると思います。
本当に強国に勝つためには
強国での厳しい経験が必要ということです。
指導者だけを「輸入」するだけではなく
選手の「輸出」を容認し、
「本場の経験」という付加価値をつけて臨まなければ
グローバルスポーツ化が進む21世紀に
日本選手活躍の未来はないのではないでしょうか?

もちろんプロは特に様々な背景や歴史や経済がありますし、
選手個人が背負うリスクも大きく、
単なる海外志向だけでは成し遂げれられないでしょうし、
簡単なことではありません。
しかし10年後の2012年には
海外で活躍する日本人は珍しい存在ではなく、
イチロー、新庄を見て育ったというメジャー野球世代と
今回の中田、稲本を見て育ったという
ワールドカップサッカー世代らが
本当の世界スポーツ界の頂点に立ち、
日本国中にさらなる夢を見させてくれること、
そんなことに近づければ素晴らしいと思います。


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2002-06-20-THU

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