BOXING
私をリングサイドに連れてって。

デラ・ホーヤ、リベンジならず判定に泣く!!


今年のラスベガス開催では一番、そして
もちろん世界的にも大一番となる
「デラ・ホーヤ対シェーン・モズリー」
試合は観衆の期待通りの
高度なボクシング技術の応酬となった。
ベガスでは3月にロイ・ジョーンス戦も行われたが
大学のアリーナでの開催だった。
やはりボクシングはカジノ開催がしっくりくる。
それほど独特な雰囲気を持っている。
タイソンやルイス等ヘビー級が
先行き不透明となっている中で
現在ボクシング界を背負うのは、
やはりオスカー・デラ・ホーヤということになる。

その証拠に、会場のMGM入場チケット最高値は
$1,200(14万4千円)。
でも早い時期に完売。
通常買える人々が買えない事態となったため
ブローカーでは$15,000(約180万)という
破格値で流通していたそうだ。
わずかに16,214人しかこの試合のチケットを
入手できなかったといえる。
それほど貴重な一戦だ。

WBA・WBC世界S.ウェルター級タイトルマッチ。
「オスカー・デラ・ホーヤ対シェーン・モズリー」
スピード、パワー、技術。
ボクシングの魅力を全て備えた、
黄金の中量級の一戦というだけでは無い。
デラ・ホーヤにとって彼が唯一負けを認めた相手、
モズリーと、待望のリベンジマッチなのだ。

前回の対戦では敗れてはいるものの、
1階級上となるS.ウェルター級での安定性、
大舞台での経験、ラスベガスでの人気、
モズリーの最近の不調で
オッズ含め予想は全てデラ・ホーヤ有利。
主役のデラ・ホーヤが入場する。
いつものように固い表情が印象的だ。
すでにリングにあがっているモズリーは
さらに緊張している様子だ。
やはり両者にとってもボクシング人生のなかでの
大一番であることがひしひし伝わってくる。
マイケル・バッファーの
「LET'S GET READY TO RUMBLE」のコールが
すでに聞こえないほどボルテージは上がっている。

9月13日(土曜日)ラスベガス、MGMグランド20:22。
運命の再戦のゴングが鳴った。
立ち上がり、息を呑むようなジャブの応酬で始まった。
速射砲のような3連発ジャブ、
両者のスピードにただ驚くばかりだ。
モズリーの生命線はスピードとクイックネス。
黒人選手独特のものでシュガー・レイ・ロビンソン、
シュガー・レイ・レナードとならび
現代の「シュガー」、華麗という意味で称される。
デラ・ホーヤはパワー、スタミナ、足の速さ等、
トータル能力で優位に立つと見られていた。

そしていきなりモズリーの左フックが
デラ・ホーヤの顔面を捉えた。
一瞬体勢を崩すデラ・ホーヤに会場の悲鳴がこだまする。
劣勢を予想されたモズリーには非常に大きい一発だ。
そして試合は戦前の能力予想通りに展開されていく。

序盤からポイントを取り合う接戦。
しかしモズリー自分のスタイルである、
左手を下げジャブを出しやすい黒人選手独特の
スタイルでデラ・ホーヤと対峙する。
自分の能力に相当自信があるのだろう。
機敏なジャブと、いきなりの右ストレートや左フックは
恐ろしいほどにスピードと切れがあり、
ときおり見せるボディブローは観衆が驚くほど
デラ・ホーヤに鋭く突き刺さる。
さらに微妙なフェイントで常に幻惑する。
トータルで優るデラ・ホーヤだが、
天性のスピードで仕掛けてくるモズリーに
てこずっている印象だ。
しかしこの試合に進退をかけているデラ・ホーヤも
簡単には引き下がらない。
ジャブ、左フック、右ストレートなど
見事なコンビネーションでポイントを取り返す。

6R位からモズリーが明らかに前に出て
プレッシャーをかけ始める。
ポイントの差はないが、
デラ・ホーヤが受けにまわっている。
こんな姿は敗れたトリニダード戦、
大逆転で制したクォーティ戦以来だ。
明らかに苦戦、それも大苦戦。
それでもラウンド後半にはラッシュを見せて
中盤を凌いでいく。


前にでるモズリー

勝敗の分れ目となったのは、後半だった。
10R象徴的なシーンがあった。
モズリーの左フック顔面へのフェイントで
デラ・ホーヤの神経は顔に行った。
そこに助走をつけて右ボディブローが炸裂する。
苦悶の表情を浮かべるデラ・ホーヤ。
明らかに不安な表情となるのが
リングサイドからも見て取れる。
対照的にモズリーはテンポ良く、
隙あらばKOを狙うかのように調子を上げる。
そのあまりの軽快さに観客が
「シュガーダンスだ!」
と叫んでいる。
もがき苦しむデラ・ホーヤ。
しかし手数では圧倒し、復讐への執念を見せ、
一発逆転の緊張も常にはらませる。

そして12R終了。
判定は3人のジャッジが
わずか2ポイント差でモズリーを支持。
デラ・ホーヤのリベンジは失敗に終わった。
ファンが期待していたストーリーは儚くも散った。

今回モズリーは完全に悪役だった。
計量でも、入場でもモズリーを見ると
観衆は常にブーイングだった。


勝利に喜ぶモズリー

デラ・ホーヤは、夢の6階級制覇、リベンジ、
進退をかけた試合と発言していただけに
ファンにはショックは大きい。
それでもシナリオ通りに行かないのが
ボクシング。だからこそ面白い。

一緒に観戦したマルコ・アントニオ・バレラの
トレーナを務める田中トレーナーは
「スピードとテンポで先手を取られた。
 メキシコ系が苦手とする黒人スピード系にやられた」
との見方。
デラ・ホーヤも前回の対戦を踏まえ
モズリーの能力は把握し、研究も行ってきたはずだが、
それでも克服できなかった。
それを「相性」といっては失礼かもしれないが、
何かそんなイメージを持った。
それほどデラ・ホーヤのやりにくそうな表情が
印象に残っている。

進退をかけた戦いだったが、
逆に谷底へ突き落とされた形となるデラ・ホーヤ。
辞めるのは簡単だが、
ボクシングという宿命をさらに背負い、
宿命の相手、モズリーとの第三戦に
決着をつけてからにしてほしい。

また、前日となる9月12日帝拳の稲田選手が
オーリンズで見事2RTKO勝ちを収めた。
ジャブ、コンビネーションを繰り出し、
アッパーで仕留めるなど見事な内容だった。
ラスベガスでの日本人の活躍も早く見たいところだが、
まずは日本ライト級タイトルということになる。
道はまだまだ長いがこちらにも頑張って欲しい。


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2003-09-16-TUE

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