徳山、貫禄の完勝!川嶋封じる。
この日のメインイベントは
WBC世界S.フライ級タイトルマッチ
「徳山昌守 × 川嶋勝重」
日本のジム所属選手の対決とあって注目されたが、
主役はやはり徳山選手だ。
すでに世界王座6度の防衛を果たしており、
近年の選手では安定度は図抜けている。
世界戦成績も7勝3KOと世界に誇る抜群の勝負強さと
経験を持ち備えている証拠である。
打ち合いが好きな人には物足りないかもしれないが、
ジャブとストレートは世界トップクラスといっていい。
パンチ一つが凄いわけではなく、間合いやスピード、
キレなど複次的な要素も多分にあり、
だからこそ相手にとって余計に厄介なものとなっている。
試合の展開は突進の川嶋、
かわし的確に隙を突く徳山という予想だった。
世界を制す徳山の左ジャブ!
試合開始とともに満を持していった川嶋が突進。
オープニングヒットを奪ったが、その後
全く徳山にパンチを当てることはできない。
2Rになると様子を見ていた徳山が
武器のジャブを使い始め
面白いように川嶋の顔面を捉える。
さらに右ストレート、余裕があれば
右アッパーなども織り交ぜ、会場は歓声に包まれる。
以前にも紹介したが
「左を制す者は世界を制す」
という言葉がある。
的確なジャブは相手の出足を止めるだけでなく、
相手の攻撃心理までも壊すことができるのだろう。
その効果通り、ジャブ対策に神経を集中せざるを得ず、
ストレートやアッパー、ボディブローなどの
ケアが疎かになり、川嶋は前にでるも
一向に必殺のパンチを当てることができない。
渾身のフックもモーションが大きく、膝を折り頭をさげる
ダッキングでかわされてしまう。
川嶋の突進衰えず終盤の激戦へ
しかし川嶋もさすがに世界5位である。
超一流のボクサータイプ徳山を常に追い詰める
執拗なファイターだ。
そのスタミナは相当のトレーニングによってしか
養われない。
パンチの空振りや突進しては逃げられるという
厳しい展開にも
自分のボクシングスタイルで徳山を倒そうという
意思が感じられる。
終盤になっても一向に衰えないその動きに
会場はおおいに湧いた。
しかしさすがに最終ラウンドは疲労が見て取れた。
それでも押し相撲のように体ごと執拗に向かっていく
もはや執念のみというシーンだった。
徳山判定勝ち! その強さとは?
試合は徳山の3−0の判定勝ち。
やはり徳山はリングで対峙しなければわからない
才能を兼ね備えているのだろう。
長い距離、鋭いジャブ、微かなフェイント、
見事なフットワーク、さらに右ストレート、
ボディブロー、アッパーカット、これらは技術。
そして経験。
あとは「勘」、「感覚」ともいうもので
文章では表現しにくいが、あえて言うと
「今だ」という瞬間把握のイメージと
現実のズレがほとんどないということだろうか。
逆に川嶋は「上手くいかない」「あれれ」という感じで
最後まで戦ったということではないか。
ボクシングといえば強打、KOという特徴を持つ選手が
一番わかりやすい。
徳山はこれとは対極の位置にいる
技術がメインとなる感覚のチャンピオンであり、
ぱっとは理解しづらいが、
テクニシャンの代表格といってもいい。
この日は6Rくらいにジャブを打った際
左手を骨折していたことが判明。
それでも右主体に切り替えて
危なげない判定勝ちに持ち込んだ。
技術と経験に基づき、非常事態発生にも
戦略プランを変更し、7度目の防衛に成功した。
個人的には見た目以上に安定したボクサー徳山の
さらなるステップとして、
統一戦や世界トップクラスの強打を持つ選手との
戦いを見てみたいと思う。
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