BOXING
私をリングサイドに連れてって。

9月15日、待望のゴールデンカードいよいよ実現!


私がこれまでで一番期待していた、
そしてどうしようもなく見たいと思っていた
黄金カードがついに日本時間9月15日(日)
ラスベガスで現実のものとなります。

WBA・WBC世界S.ウェルター級王座統一戦
「フェルナンド・バルガス×オスカー・デラ・ホーヤ」
の一戦です。


クールなデラ・ホーヤ(左)と
動物的なバルガス(右)


先日引退を表明したトリニダードに負けた二人ですが、
それでも今年一番、いや近年一番の魅力を感じます。
なぜそんなにも期待し、見たいのか?
私自身自問自答してみました。
もちろんWBAチャンピオンのバルガスと
WBCチャンピオンのデラ・ホーヤの
タイトルの統一戦であり、
超一流人気ボクサーの激突という要素は当然あります。
しかしそれを上回る魅力、その答えは、
恐らくこの超一流の二人のボクサーが
全てにおいて対極のライバル、いいかえると
「エリート対叩き上げ」「冷と熱」という
宇宙的な対立物同士の戦いであるからだと思います。

そしてもちろん、
S.ウェルター(154lbs=約69.85kg)という階級は
スピード、パワー、スタミナそれぞれの要素が優れている
世界的に非常に層の厚い一流アスリート達の頂点、
つまり 見ているだけでワクワクする
体重クラスということもあります。

しかし今回のポイントはずばり「同血の争い」です。
メキシコの血を引く両者の因縁に
ついに白黒がつくという期待感が最も正確でしょう。
同じメキシコ系の血を引き
西海岸で活躍するアメリカ人の両者ですが、
デラ・ホーヤはアメリカ特有のヒーロー路線で
すでにスーパースターとして君臨しています。
バルセロナ五輪でアメリカ唯一の金メダルを獲得、
5階級制覇を成し遂げ、女性に絶大な人気を誇り、
CDも出し、引退後は建築家になるといったビジョンを持つ
才能多彩なエリートです。

肝心な局面や一流選手との試合では
壮絶な打ち合いを避け、
スピードと距離と技術での勝利が多く、
リスクを避ける超優等生なボクシングですが、
試合内容は素晴らしいものが多いのも事実です。

それに真っ向から反発するのがバルガスです。
以前は「アステカの戦士」、
最近では「フェローシャス」(獰猛な)と名乗り
どこまでも攻撃的な姿勢を賞賛する
メキシコボクシングを継承する
KOアーチストとして世界頂点に登りつめました。
相当な不良少年時代にボクシングに出会い、
力だけで活路を見出してきたバルガスにとって
デラ・ホーヤは
「アメリカに同化したメキシコをルーツと見せる
 ニセヒーロー」
と映っているのでしょう。

また、同じカリフォルニアの
メキシコ系中量級スーパースターとして
常にデラ・ホーヤと比較され続けたことに対しても
「俺と奴は違う」という不良のような反発意識が
かなり充満しているでのしょう。
すでに数年前から数々の侮辱の言葉を
デラ・ホーヤに向けています。

99年11月、私たちはカリフォルニアのビックベアで
バルガスの独占取材を行いました。
その時点ですでにデラ・ホーヤとの確執は
周知の事だったので、その旨水を向けてみると
一言だけ「奴はおかまさ」と言って、
その顔は嫌悪、そしてあざけ笑うような
何ともいえない表情に急激に変化しました。

この瞬間から私にとってこの試合が現実となれば
ボクシングという形を取って行う
「決闘」が見られるという期待感になったのです。


記者会見でも獰猛なバルガス/2000年8月

「モラレス×バレラ」第一戦、第ニ戦を例にとっても
メキシコ系の対決というのは決して誰のためにではなく、
ただ己の誇りのために
相手を打ち倒す美学を追求するという、
見ていても物凄い衝突が起きます。
ピリピリする緊張感とあふれ出るエネルギーが
リングと会場を支配するのです。

現在29歳のデラ・ホーヤを追いかけた25歳のバルガスが、
ついに言葉ではなく、
拳で決着をつける日がやってくるのです。

――今回リングはさながら「闘牛場」となる。

バルガスが地下に充満してきたマグマを一気に噴出し、
荒れ狂う闘牛のようにデラ・ホーヤに襲いかかる隙を伺う。
試合展開を大きく左右するのはデラ・ホーヤの戦術。
打ち合いに応じるのか、足を使い距離を取り
スピードで圧倒してしまうのか。
慎重だが、デラ・ホーヤの身体能力は超人的。
特にスピード、フットワークを駆使すれば
バルガスの強打を完封してしまう可能性も
充分にあるが・・・・・。
その証拠に対専門家やラスベガスのオッズは
デラ・ホーヤ有利と出ている。

怜悧な天才ボクサー対動物的な直感ボクサー――
しかし私は今回に限り、バルガスの異常ともいえる
デラ・ホーヤへの「マグマ」を考えると
非常に面白い結果が待っているのではないかと
思っています。
結果は別として超一流の両選手が
トリニダードに「負けて得た」ものを使い
もう一段上のレベルの試合にしてくれるのではないか、
とも期待しています。

そしてさらに凄いと確信しているのが
観衆のフィーバーです。
アメリカの人種別人口第二位はヒスパニック系です。
すでに黒人人口を抜いています。
カリフォルニアを中心とする西海岸、
アリゾナ、ニューメキシコ、ネバダも
その昔はメキシコだったことを考えると
当然かもしれません。

西海岸で圧倒的人気を誇る対極の両者の激突に
ブルーカラー層が多いヒスパニック系移民の人々が
どう応援し、どのくらい盛り上がるのか
全く想像がつきません。
恐らくヘビー級ビックマッチ並み、いやそれ以上の
空前絶後に近い体験ができるのでは?と
こちらもひそかに大きく期待しています。

「怜悧な天才ボクサー、デラ・ホーヤ
 ×
 動物的な直感ボクサー、バルガス」

21世紀の中量級随一の戦い、本当にお薦めです。

WOWOWではこの試合の模様を
日本時間9月15日(日)午後4時から
独占衛星中継します。
ぜひご覧ください。


ご意見はこちらまで Boxnight@aol.com

2002-09-03-TUE

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