新鋭、新井田世界奪取!
天才、俊才、潜在能力の高さが
以前から評判だった新井田豊選手が
初挑戦で世界王座を奪取しました。
会場となったのはパシフィコ横浜。
横浜ベイが一望できる非常に気持ちのよい会場です。
1日のセレス小林選手の防衛戦もそうでしたし、
24日の徳山選手の防衛戦も横浜で予定されており
この1ヵ月の間で横浜で世界戦興行が3つもあり、
今や世界戦のメッカともなっています。
パシフィコに関しては、当初は
コンサート会場でのボクシングで違和感がありましたが、
不思議とすっかり慣れてしまいました。
世界戦は今回で3回目。
全てWBA世界ミニマム級タイトルです。
第一回はガンボア-星野、二回目は星野-チャナ。
そして今回の試合です。
2試合とも王者が負けるという「王座転落」の会場です。
その順番?からすると新井田選手の勝ちとなりますが、
果たしてそうなりました。
天才、抜群の素質が強調されていた新井田選手ですが、
勝つには勝ちましたが
試合全体では大苦戦という印象を受けました。
記者会見等でチャンピオンのチャナは
「日本選手は単調でやりやすい」
また新井田選手を挑発するような発言を再三行うなど、
単なる強がりではなく、若く才能溢れる挑戦者を牽制し、
心理戦を仕掛けていたと思います。
そしてその巧妙な術中に
新井田選手ははまりかけました、いや
はまったといってもいいでしょう。
35歳と軽量級では大ベテランとなるチャナの武器は
47戦という経験です。
それと反比例するように、パワー、スタミナ、切れは
大橋選手に勝った93年に比べると相当落ちています。
しかし間の取り方、接近戦ではさすがに
チャナが一枚も二枚も上手です。
また打ち合いでも、不利な状態からの反撃も
チャナの気持ちが勝ってました。
スタミナが切れた後もさらに前に出て先制を仕掛け、
闘争心が感じられました。
さらにヘッドバッド気味の前進や
クリンチ、押し合いなど、歴戦プロの技術を駆使し、
キャリアの16戦と浅い、新井田選手に
ペースを取らせませんでした。
チャナに指示するタイの英雄
カオサイ・ギャラクシー
新井田選手はこれまでのボクシングと
全く違う次元の体験をしたと思います。
カウンターを狙うあまり、見てしまう癖を
ことごとくつかれ、常に後手にまわりました。
そのため一発を狙い大振りになり、手数が減り、
そこに細かいパンチをもらう、
そんな繰り返しで試合が進みました。
彼の持ち味である「切れ」も
初めての世界戦、事前の心理戦という要因で
今ひとつでした。
105lbs(47.6kg)がリミットというミニマム級で
103.5lbs(46.9kg)、
1.5lbs(約700g)もアンダーというのも異例です。
これも初世界戦のプレッシャーが
影響しているのではないかと思います。
心理的&肉体的には真夏の体調管理、
「天才」と称される環境、同じジムの先輩である
ポスト畑山という過度の期待なども
22歳の彼には重くのしかかったのでしょう。
打ち合いの場面では、チャンスは作るものの
恐らく綺麗で華麗なKOイメージが先行してか、
がむしゃらさが感じられず、
「ここだ!」「今だ!」という場面で、
自分から間と時間を取ってしまい、
挑戦者としては燃焼せずという印象が残りました。
私は今回、勝敗の分かれ目が見えませんでした。
実は実際チャナの2ポイント勝ちにした位です。
実際は3-0の判定でしたが、
1ポイント、3ポイントが2名という僅差でした。
しかし相手ペースの中で世界を取ったのは
やはり凄いことです。
単発ではありますが、クリーンヒットを
ジャッジが評価したのでしょう。
ときおり見せる左アッパー、フックは威力抜群でした。
地元開催や運も味方にしました。
陣営全体の勝利ともいえるでしょう。
この経験をぜひ活かし、今後の活躍に
つなげていって欲しいと思います。
これで日本の誇る世界チャンピオンは
S.フライ級のセレス小林選手、徳山昌守選手、
ミニマムの新井田選手と3名になりました。
9月24日には徳山選手が3度目の防衛戦を
横浜アリーナで行います。
世界でも中量級のスーパーマッチ
「トリニダード対ホプキンス」が
9月16日(日本時間)に行われます。
(もちろんWOWOWで当日放送いたします)
日本人選手の活躍と究極の対決の
結末はどうなるのか秋の楽しみです。
WOWOW 小田真幹
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