川嶋05年年明けを打ち合いで制す!!
得意の右ストレートを放つ川嶋(右)
日本開催での世界タイトルマッチとしては
久しぶりに闘志あふれる打ち合いを
堪能することができた。
WBC世界S.フライ級タイトルマッチ
「川嶋勝重対ホセ・ナバーロ」は
新年早々の3日、肌寒い有明コロシアムで開催された。
「エリートは雑草に敗れる運命」
各紙面の記事には
大橋会長の刺激的なコメントが掲載された。
それもそのはず、
今回の挑戦者ナバーロはランキング1位。
さらに21戦全勝、アメリカの五輪代表という
看板に偽りない「本物」。
なにしろアメリカで五輪代表となるには
相当レベルの高い選手でなければならない。
あのタイソン、ロイ・ジョーンズは国内選考で泣き、
本戦に出場した著名選手は
モハメド・アリ、シュガー・レイ・レナード、
デラ・ホーヤ、ホリフィールド、バルガス、
メイウェザーなどボクシング界を担うスターが揃う。
21歳でボクシングを始めた川嶋とは好対照な経歴。
まさにエリート対雑草。
試合が始まるとその逸材が見事な立ち上がりを見せる。
サウスポーから繰り出すジャブやフットワーク、
ディフェンスやステップワークなどバランスも素晴らしい。
チャンピオン川嶋の叩き上げのボクシングとは質が違う
非常に美しいスタイルだ。
川嶋は左右のフックと
徳山を屠った右ストレートの強打が売り物。
しかし大きめのパンチとなるため
ナバーロのテクニックの高さが目についてしまう。
時折当たるパンチはKOを瞬間的に予感させるが、
現実にするほどまでの連打には持ち込ませない。
ナバーロは徹底的に
川嶋の右ストレートが当たらないように右に右に回り、
時折隙を見ては3発、4発の連打を浴びせる。
パンチは軽いものの前に出る川嶋にはカウンターとなり、
7Rくらいには
ポイントでの勝敗は厳しいだろうというくらいに
支配されていた。
しかし雑草と称される川嶋は試合の後半に真骨頂を見せる。
支配されても連打をもらっても愚直に前に出て、
自分のパワーパンチを徹底的に振り続ける。
その姿は古い表現だが、根性そのものだ。
その絶え間ないプレッシャーにも
エリート、ナバロは持っている技術と時に足を使い、
時に正面で打ち合うなど自分のスタイルを崩さない。
しかし10R、セコンドが打ち合うなとの指示を行い、
ナバロが足を使って川嶋をかわしにかかる。
これが前にでる川嶋を勢いづかせる結果となる。
渾身の力でパンチを振り続けてきた川嶋は
バランスを崩しよろめきながらも強振をやめる事はしない。
ボクシングの面白いところは、
作戦であっても一度下がってしまうと勢いが逆転し、
それを技術で変えることはできないところだ。
ぎりぎりの精神状態だからこそ
選手心理がもっとも良く表れ、
過去にも大逆転を生んできた
「人間」ならではの現象なのだ。
最終12Rは川嶋はよろめきながらも、
最後までKO勝ちを狙い、ナバーロも応戦。
目の覚めるような徹底した打ち合いで試合終了。
判定は2−1。
僅差でチャンピオン川嶋が2度目の防衛に成功した。
ナバーロは本当に強敵だった。
特にテクニック的には
圧倒的な差があるにも係わらずの逆転判定勝ち。
川嶋の不器用さと愚直なまでの攻撃姿勢、
両方を見れた試合だった。
しかしと12RまでKOを狙った姿勢と
その根源となる凄まじいスタミナは
近年、日本人ボクサーには見られない体の強さを感じた。
恐らく物凄い練習量をこなしている証拠だろう。
そして精神力。
限界を超えての我慢戦で相手に負けず、
自分にも負けず、接戦をものにした。
この勝利は川嶋にとって非常に大きいものとなる。
5月には1勝1敗の徳山との
3度目の対戦も予定されている。
今日の出来で臨めば恐らく圧勝となるだろう。
2005年大きく飛躍が期待できる
中身のしっかりした内容だった。
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