スポーツもテロに立ち向かう!!
町は恐ろしいくらいに静かです。
今私は西海岸サンフランシスコにいます。
空港もホテルも閑散としていました。
そして今日米大リーグ再開試合
「ジャイアンツ対アストロズ」を見てきました。
奇跡的にも国際線運行が再開したので、
当初予定していた夏季休暇をそのまま取りました。
「こんな時期に!」「危険じゃないの?」
そして何かあれば、(気配さえでも)
飛行機やホテル状況が悪いほうに変化するのも
覚悟の上です。
しかし一方でアメリカ自体がどうなっているのか
そしていち早く再開を決定した
世界でナンバー1のプロスポーツMLBが
人々にどう受け入れられるか?を
肌で感じたかったのも事実です。
これはスポーツ自体が体現できる反テロ行為、
すなわち平和と暴力には屈しないという
自由の国アメリカの精神の象徴の確認と思いました。
テロ直後の報道では、WOWOW放送予定だった
「トリニダード対ホプキンス」も当然延期ですし、
MLBもシーズン終了か?と憶測されました。
当然ですよね。世界の中心都市で
あんな事件それも生映像まで完璧に配信されて
しまうのは人類史上初めてといっていいのですから。
野球選手のインタビューも否定的なものばかりでした。
「今は野球の他にやることがある」
「今はそういう時期ではない」
「ショックで野球には集中できない」
「野球なんて小さなものだ」
さらにMLB再開については野球がプレーオフ、
ワールドシリーズへの影響を第一に考え
商業主義に犯されている、とも批判されました。
他の北米のスポーツはNFLが後追いで出した以外は
まだ正式な予定が出ていません。
F1なんかはかなりもめてる様子ですね。
決定を延ばすのも苦慮している様子です。
そんな状態なので、今回の再開は
プロスポーツを代表するMLBの「面子」および、
「強制再開」的な印象を受けていたんです。
しかし試合前のセレモニーを見ていると
その印象とは全く違いました。
約20分程度でしたが、一言でいうと
野球というスポーツによって結びついたミサなんです。
SFFD(消防)、SFPD(警察)が
グランドにいることが紹介されると
観衆はスタンディングオベーションします。
事故によって失われた多数の犠牲者への弔辞、黙祷、
「God Bless America」の斉唱。
SFFD、SFPDチーフによる同時始球式。
4万1千人の観衆はその間、
配られた星条旗と蝋燭に火をともし、
粛々と祈りを捧げます。
これまでもスポーツイベントを多数見てきていますが、
このような一体感を体験したのは初めてです。
それは感動的でもあり、
しかし多くの犠牲に対する怒りでもあり、
さまざまな感情が入り混じっていることを
感じることができます。
一番強く感じたのは、皆が現状から一歩踏み出すことが
今後の平和への礎になるということです。
セレモニーの最後は観衆全員が
「USA」「USA」コールを叫び続け試合が開始されました。
試合はやはり勘が戻っていないというのか、
集中し切れないといった場面もありました。
ジャイアンツの40歳ベネズエラ出身大ベテラン、
ガララーガが球場最長となる148m弾を
レフトスタンドに叩きこみました。
しかし、最終回100マイル(160KM)を誇る
抑えのネン投手が連打で逆転を許し、負けました。
この日の観衆は4万1千人。
MLB再開がファンに受け入れられたといっていいでしょう。
1989年このBay Area地域はおおいに沸いていました。
サンフランシスコと対岸のオークランドが
ワールドシリーズで対決することになったからです。
NYでいうサブウェイシリーズです。
しかしその最中にあの大地震が起こったんです。
阪神大震災と同じく高速道路が倒壊し、
火事が起こり多くの人が犠牲になりました。
そういう点ではこの地域の人々は
自然による大惨事を乗り越えてきています。
神戸と同じではないでしょうか。
会場に向かう人々はみな笑顔で
何となく救われた気がしました。
帰りは後味悪い逆転負けなんで無言でしたが・・・・。
今後の状況によっては
予断を許さない時期が相当続きますが、
1日1日普通に過ごしていくことしかありません。
しかし街は異常です。
観光客がいないので当然ですが、
どこもかしこもガラガラです。
いつもは満員まで待たされる
空港からホテルへの有料バンも
私一人で早々に出発しました。
ホテルも手違いで予約できなかったのですが、
朝10:30にその場で部屋にチェックインできたくらいです。
しばらくはこの違和感を感じながらでしか
過ごせないでしょう。
しかしスタジアムを包んだオーラは
本当に素晴らしいものでした。
1日も早い事態の完全解決を望み、
単純にスポーツが楽しめる世の中に
早く戻って欲しいと思います。
WOWOW 小田真幹
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