BOXING
私をリングサイドに連れてって。

メキシコスーパースター対決!
バレラ執念のリベンジでモラレス破る!


フェザー級(126lbs、約57.1kg)最強の称号は
メキシカン同士の激しい激突の末、
マルコ・アントニオ・バレラが勝ち取った。

WBC世界フェザー級タイトルマッチ
「エリック・モラレス対マルコ・アントニオ・バレラ」
は現地時間で6月22日(土)、
ラスベガス、MGMグランドガーデンで行われた。

二人はこのクラスでは名実ともに
世界トップの実力者であり、
ハメドを入れて世界3強という、夢のような試合なのだ。
そして因縁。
中心部メキシコシティー出身のバレラと
地方ティファナ出身のモラレス。
誰もが認める犬猿の仲、2年前S.バンタム級で初対時も
壮絶な打ち合いが行われ、モラレスがダウンしたものの
僅差の判定でモラレスに軍配が上がったが、
判定内容を問う関係者もいたクロスゲームだった。
勇敢な選手を好むメキシコ人気質もあり
ダウンを獲られたモラレスの勝利を叱責する感情も
非常に高いのも特徴的だ。



2年の時を経て、
クラス最強とリベンジとメキシカンの名誉を賭けて行われる
期待の試合である。
この間、バレラはハメドに勝ち順当に実力を見せ、
モラレスは強敵相手に苦戦続きと減量の問題を感じさせ
評価はバレラ有利と、かつてと逆転していた。

砂漠の街、ラスベガスの気候には何回来ても圧倒される。
息苦しくなるくらいの熱風と痛いような日差し、
日中は6月ですでに30度を軽く越える。
極度の乾燥のため汗が出ず、
即、蒸発して飛んでいってしまう。
冗談ではなく、日本に戻って嫌なのが湿度が高く、
汗をかくことだ。
今回はUFCのミニ大会もあり、様々なイベントが
次から次へと行われるためか物凄い活気だ。
テロ直後の前回訪問時と比べると、
ほぼ100%回復したと見える。
唯一違うのは日本人が少ない事くらいだろう。

会場のMGMも約1万5千人の観衆が詰め掛けた。
日本だと武道館は満員札止め、
横浜アリーナがほぼ満員くらいの
想像を越えた凄い興行である。
メキシカン決戦のため、西海岸を中心とした
ヒスパニック系が一同に集結した、
通常のビックイベントとは異なる
一種異様ともいえる雰囲気だ。
この試合はヘビー級でなく、黄金の中量級でもなく
日本でも一般的であるフェザー級の試合なのだ。
そして全てがメキシコのためのイベントといってもいい。
世界はスケールが本当に大きい。

両者が入場する。
会場内はすでに隣の人の声も全く聞こえなくなるほどの
大歓声が続々湧き上がる。
バレラには大歓声、モラレスには大ブーイング。
どうやら前回の疑惑判定に対するものらしい。
しかしこの圧倒的音の洪水は物凄い。
まるで音のホワイトアウト現象のようだ。
単なる音の集積ではなく、波動、鼓動にさえ
思えてくるほど体を突き上げられる。
ワールドカップもこんな雰囲気なのだろうか?

注目の試合が開始された。

両者の特徴は、必殺の長い右を持つモラレスと
近距離でのハードな連打というバレラという
対照的なものである。
序盤はモラレスが攻撃を仕掛ける。
左を中心にバレラを追いかける。
バレラは足を使い様子を伺う。
戦闘を期待していた観衆には意外な展開だ。
5R終了間際、ラウンド終了10秒前の告知音と
終了のゴングを間違えたモラレスがバレラに背を向け
コーナーにゆっくり戻る。
すかさずバレラが襲いかかる。
6Rから試合は一気に動き出す。
今度はバレラが前に出て距離をつめて
プレッシャーをかけ始める。
バレラは後半勝負だったのだろうか?
それほど急激な攻防の変化なのだ。
バレラが攻めるときは、一瞬小さく丸くなり
弾けるようにパンチが繰り出される。
緊張感が一気に高まる凄まじい攻防が続いた。


左がバレラ、右がモラレス

集中と恐怖と居合と勝利への意思が同居し、
そして自らを奮い立たせている。
両者の表情は凄まじいものになっており、
思わず背筋がゾッとしてしまった。
終わって欲しくないと思う矛盾を感じるほど
ピリピリとした緊張と期待に圧倒される試合だ。

終盤を制したのはバレラだった。
渾身のパンチでモラレスを攻撃し続けた。
モラレスは右目が腫れ、鼻も赤くなり
相当のダメージとスタミナ切れを感じさせながらも
懸命に応戦する。
12R終了。
両者が抱き合う姿は一切ない。

運命の判定は3-0でバレラに軍配が上がり、
モラレスはタイトルを失ったとともに、
プロで初の黒星を喫した。
序盤を制したモラレスと後半盛り返したバレラ。
試合の流れが一気に変わる難しい試合だった。
私はバレラの4ポイント勝ち。
攻めていく姿勢が物凄かった。

ともあれ非常に印象に残る好試合だった。
願わくば二人は和解せずにこのままボクシング史に残る
永遠のライバルとして再び激突して欲しい。
会場を後にすると、MGM内はメキシコ一色。
この日ばかりはいつも試合後、大騒ぎするアメリカ人が
一歩引いた形となっていたのが印象的だった。

WOWOWではこの試合のリピート放送を
6月29日土曜日夕方6時から放送します。
メキシコ天才ボクサー同士の緊張の
フェザー級頂上決戦をぜひ体験してください。


ご意見はこちらまで Boxnight@aol.com

2002-06-25-TUE

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