BOXING
私をリングサイドに連れてって。

中量級決戦!ラスベガス現地レポート

今回はラスベガスに来る前にサンフランシスコに
入りました。
街は早くもクリスマス一色でしたが
ここラスベガスは違います。

20世紀を締めくくるにふさわしい
ビックマッチがついにラスベガスの
マンダレイベイホテルで実現するからです。
現在の中量級の名声を全て背負う2人が
現役ピーク時に激突します。

WBA・IBF世界S.ウェルター級王座統一戦
WBA世界S.ウェルター級チャンピオン
フェリックス・トリニダード(プエルトリコ)

IBF世界S.ウェルター級チャンピオン
フェルナンド.バルガス(アメリカ)

これは単なる統一戦ではありません。
世界ボクシング界でお互いの名声と
プライド、実力を賭けた戦争といってもいいでしょう。



この2人がどれほど凄いかを説明しなければ
ならないでしょう。

まずはフェリックス・トリニダードです。
プエルトリコ生まれの27歳。
戦績は38戦全勝(30KO)のパーフェクトレコード。
彼の特筆すべき点は2点あります。
1階級下のIBFウェルター級のタイトル
を93年〜00年まで7年間、15回防衛したことです。
さらに凄いのがこの間世界戦で
判定勝ちがわずか3回という点です。
近年の中量級では偉業ともいえる記録を残しています。
プエルトリコの天才パンチャーの異名は
伊達ではありません。
もう一点は過去アメリカの誇る
金メダリスト3名に勝利していることです。
パーネル・ウィテカー(ソウル大会)、
オスカー・デラ・ホーヤ(バルセロナ大会)、
デビッド・リード(アトランタ大会)が
苦杯を味わっています。
WOWOWでも生中継したデラ・ホーヤ戦を
除いては完勝し、デラ・ホーヤ戦でも
あのデラ・ホーヤにプレッシャーを
かけ足を使わせ観客をうらなせました。
ボクシング大国のアメリカの実力派選手を3度に渡り破り、

母国ではすでに伝説的英雄となっています。
彼の特徴は切れるパンチとバランスの良さです。
手数こそ多くありませんがいざゴングが鳴ると
常に相手にプレッシャーをかけて隙を作らせ
狙い撃ちするという一見地味ですが
実は非常に攻撃的なスタイルです。
昨年9月デラ・ホーヤ戦取材で彼のシャドー
を見ましたが、バランスが良く、
力が抜けていて非常にシャープでした。
一番強く感じたのは力が入っていない事です。
リキんでないというのが正しい言い方でしょう。
的確で強力なパンチがスムースに最短距離で
伸びてくる、バランスも良いので角度の良い
パンチがすぐ出せる、
本当に素晴らしいボクサーです。

対するフェルナンド.バルガスは
カリフォルニア生まれの22歳。
20戦全勝(18KO)とこちらもパーフェクトレコード。

彼の特徴は何と言っても野性味でしょう。
悪くいえば暴力的ともいえます。
とにかく倒す、というときの
ラッシュは世界トップクラスです。
デビュー以来破竹の17連続KOを記録。
IBFS.ウェルターのタイトルをすでに5回防衛しています。
判定勝ちは僅か2試合で、それもベテランの
サウスポーロナルド・ライトとデラ・ホーヤと
激戦を演じた「ガーナの大砲」
アイク・クォーティー戦です。
この判定2試合でかなり成長した形跡があります。
8月のトンプソン戦をラスベガスで観戦しましたが、
記者会見での乱闘もあり、ボクシングを超えた
ストリートファイトのような試合でした。
しかし会見で喧嘩を売ってきた指名挑戦者を完膚
なきまでに叩きのめしました。
しかしただ荒っぽいだけではありません。

繊細な一面も持っています。

昨年11月に彼のキャンプ地であるビックベアに取材に
行きました。試合直前でもあるのも係わらず取材を
許可してもらいスパーリングを撮影しようとしたら、
撮らないでくれと言われました。
その日はキャンプ打ち上げで12Rフルスパーリング
を行っていたのです。
私たちがそこで見たものは、
サウスポーのパンチを食ううバルガスでした。
撮影を許可しなかったのは、
練習の様子を誰にも記録させたくなかったのです。
彼はその時点では実はサウスポーが苦手
だったと思いました。
実際かなり良いパンチをもらっていました。
もちろんパートナーは3名いて4Rごとに交代し、
彼が疲労のピークにあったことも否めません。
しかし前述したライト戦では苦戦しましたが、
その経験が彼をさらにタフににしました。

その強引なまでのプレッシャーと連打が、
特徴のこちらも天性のファイターです。
相手を追い込む足の速さと連打は動物的
なものがあります。
ただディフェンスはそれほど上手くなく、
プレッシャーかけ切れなかった場合、
また逆にかけられた場合の対処に
一抹の不安はあります。

注目の記者会見ではトリニダードが
注目すべき発言をしています。
「この試合はデビッド・リード戦にくらべ
 遥かに楽だ。早い回でのKOができると思う」
バルガス恐れるに足らずとも取れる
余裕の発言です。
一方のバルガスは
「馬鹿にした奴は見返すだけだ、
 大口叩くのは弱きな理由があるからだ」
と発言しました。

ラスベガスはどう評価しているかというと、
トリニダード 1.5倍
バルガス 2.5倍 
トリニダード有利と出ています。

また試合の長さが
12R判定まで行く     2倍
12R判定まで行かない  1.7倍
KO決着とでています。

トリニダードのTKO勝ちというのが
堅いというオッズです。

ちなみに引き分けは15倍です。

どちらにしてもお互いファイタータイプなので
下がったら勝つことは難しくなることは
間違いないでしょう。
常に前に出る自分のボクシングを
どちらが貫けるかが勝敗のポイントになるでしょう。

デラ・ホーヤの予想は、バルガスが足を使えれば
勝機はあるが、使わなければ
トリニダードということでした。
ちなみにデラ・ホーヤは足を使って
僅差の判定でトリニダードに敗れました。
オッズはほぼイーブンでした。

戦績やビックマッチの経験という
意味でもトリニダードは非の打ち所がないでしょう。

しかし過去何度もこのような不利を
覆してきたボクサー達がいました。
果たして今回はどちらでしょうか?
理詰めな天才トリニダードか?
瞬間的野性的天才バルガスか?

非常に楽しみな一戦です。
なおWOWOWではこの試合を
1月6日(土)午後6時から新春スペシャルで
放送いたします。お楽しみに。

ご意見はこちらまで Boxnight@aol.com

2000-12-02-SAT

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