イーグル京和、高山に完勝し王座返り咲き!!
骨折のトラブルを乗り越え
イーグルがWBC世界ミニマム級王座を奪回した。
8月6日、土曜日、真夏の東京、
後楽園ホールで行われた世界戦で
チャンピオンの高山勝成を判定で下した。
3−0の完勝だった。
イーグル(角海老宝石、タイ)は2004年1月、
メキシコの強打、日本でもおなじみの
ホセ・アントニオ・アギーレを
打たれないで打つ見事なボクシングで
ミニマム最強という称号のおまけつきで王座に輝いた。
しかし好事魔多し。
2004年12月、メキシコのベテラン、ブストスと
2度目の防衛戦も完璧な試合運びだったが、
突如の肩の骨折(右肩甲骨関節窩[か]骨折)。
まさかトラブルでの王座陥落だった。
そのブストスを破って
第10代のWBC世界ミニマム級王者になったのが
今回の相手となる高山勝成(グリーンツダ)。
ブストスを挟んで8代と10代の王者が顔を
合わせることとなった。
私にとって後楽園ホールの世界戦は新鮮だ。
通常は世界戦となると大会場が用意されるが、
日本ジム所属の外国籍選手となると
人気のバロメーターとなるテレビ放送と券売の関係から
大会場は難しい。
このことが小さい会場での世界戦観戦という
至極の環境を用意してくれる。
ミニマム級は105lbsがリミット。
僅か47.6kgという17階級あるボクシングで
もっとも軽い階級だ。
迫力のヘビー級とは対照的に
常にスピード、キレ、スタミナが要求される過酷な階級だ。
試合内容も細かな点が
採点に大きな影響を与えることがある。
しかし今回の試合はイーグルが主役だった。
いつものように笑みを浮かべて入場。
試合中もその笑顔が消えることは無い。
しかもその笑みは不気味な迫力を醸し出すものではなく
むしろ本当に楽しい微笑みのような笑顔なのだ。
チャンピオンの高山にとっては
試合前から厳しい状況は周知のものだった。
日本王者にさえなっていないと揶揄される
ラッキーチャンピオンという評価。
完璧な実力者イーグルが相手。
敵地東京、さらにボクシングの殿堂後楽園ホールでの試合。
真夏の中での試合に向けた調整。
プラス材料は世界王者となった誇りからくる自信と
故障明けのイーグルがいきなり世界戦という
勘の狂いくらいだろうか?
私の周辺の予想はイーグルの中盤から後半のKOか
大差の判定勝ち。
私自身もほぼ同じ予想だった。
試合開始。
とにかく細かな動きと手数で
ペースを奪っていくタイプの高山が
意外にもイーグルの懐に入り打ち合いを仕掛ける。
しかしイーグルも多彩なコンビネーションと
様々な角度からのパンチで高山を突き放す。
無尽蔵のスタミナを駆使して
何とかイーグル攻略を図る高山に対して
イーグル敢然と受けて立つ。
現段階でのボクサーとしての完成度、格は
やはりイーグルが間違いなく上。
1対1のボクシングでは
この状況を打破するのは容易ではない。
しかし高山は愚直なまでに
自分の特徴を活かしたボクシングで
徹底的にイーグルに向かっていく。
相手との戦いを越えた「自分」とさえも戦いの域、
それは技術よりは精神の戦いと
置き換えることも可能だろう。
手数とスピードで勝負する高山とコンビネーションと
ボディを中心とする攻撃的ボクシングのイーグル。
両者の手数は全く減ることなく
じりじりと暑い後楽園ホールのリング上で交差する。
後半に向かうとイーグルが徐々にプレッシャーを強める。
8Rには応援団が「勝成」コールで
高山の背中を後押しする。
11R、12Rにはイーグルがスタミナ切れから
連打を許すシーンもあり会場は大いに湧いた。
11代目として再び王座に返り咲いたタイ人王者は
2名の子供を抱きかかえ喜びに浸った。
この日隣接する東京ドームでは
NFLのプレシーズンマッチが行われ、
後楽園ホールでは世界タイトルマッチ。
夏の高校野球も開幕し、
いよいよ真夏のイベントが真っ盛り。
今年の8月6日は広島の原爆投下から60年目となる
節目の年ということだ。
30代後半の私には当時のことは報道でしか見聞できないが、
平和にスポーツを楽しめる時代に生きていることを
改めて実感し、真夏の後楽園ホールを後にした。
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