BOXING
私をリングサイドに連れてって。

ロイ・ジョーンズ歴史的快挙達成!
ヘビー級王者に!


ロイ・ジョーンズがボクシング界における
「歴史的偉業」を達成した。
L.ヘビー級王者が2階級上のヘビー級、
それも現役世界チャンピオンを予想外に完封してしまった。

ほれぼれするような躍動感、類まれなスピードとキレ、
独特な防御感とまさに誰もが
「ロイ・ジョーンズ」になりたいと惚れてしまうほど
ワンマンショーといっていい試合だった。



戦前の予想はきれいに二つに分かれた。
計量での体重差15kgがそのまま試合に出るという
ルイスのパワー支持派と
スピードとキレ、そして天性の防御感で常識を覆すという
ジョーンズ派である。

ラスベガスでのカジノのオッズではなんとジョーンズ有利。
ボクシングの本場アメリカは、ヘビー級チャンピオンより、
ジョーンズのトータルなセンスを
高く評価したということになる。

ボクシングではあるがある意味ボクシングでない、
「格闘」の魅力の原点ともいうべき、
小さい者対大きい者という
世界注目のWBA世界ヘビー級タイトルマッチ
「ジョン・ルイスvsロイ・ジョーンズ」
今や現代ボクシングのメッカ、ラスベガスの
トーマス&マックセンターで行われた。

まずはロイ・ジョーンズの入場。
ジョーンズはこれまで見たことのない
緊張した表情が印象的だ。
通常の試合では常に趣向をこらして
入場をも楽しんでいる感さえあるのだが、この日は違う。
やはり本人もこの一戦の重要さが
わかり過ぎるほどわかっているのだろう。

そしてジョン・ルイスの入場。
ラテン系初のヘビー級王者として落ち着いた入場である。
やはり15kg差は大きく
試合前の精神的落ち着きは保たれている。

試合開始のゴングを待つまでの間、
痙攣するような陶酔感を覚える。
通常のタイトルマッチとは違う、
特別な意味を持つ試合がいよいよ始まる。

注目の1R、188cm102kgのルイスが
ぐいぐい踏み込んでゆく。
体格の有利を最大限に活かす常套手段でもある。
何度も押されるような形でロープを背にする
87kgのジョーンズ。
試合前の緊張がさらに何倍にも瞬間的に膨れ上がる
スリリングな展開だ。
ルイスの動きは鋭い。ジャブもシャープだ。
しかし時折見せるジョーンズの
アッパーやショートストレートも非常に鋭く、
ヘビー級のルイスといえども何度も喰うと
ダメージは避けられない。
一気にペースを奪おうという大柄なルイスの
弱肉強食ともいうべき先制攻撃を
大きなダメージなしで避けることができた。

2R、3R、ルイスは落ち着いて様子を見にかかった。
しかしここからがジョーンズの独壇場の幕開けだった。
的が大きいだけに動きを止めると狙い打ちが始まった。
ノーモーションから右ストレート、左フックを繰り出す。
それでも十分なエネルギーをもつルイスが
相打ちを狙い繰り出すジャブやフックでは
ヒヤリとするタイミングのものもあった。

この世紀の大勝負の分水嶺は4Rの攻防にあった。

ジョーンズの恐るべき能力を改めて感じたルイスが
なんとか先手を打ちペースを取り返そうと
パンチを放とうとしたその瞬間
ジョーンズ狙いましたワンツーの右ストレートが
カウンターになり炸裂、
なんと現役ヘビー級王者ルイスがぐらついたのだ。
このパンチでヘビー級王者、ルイスが
ジャブしか出せなくなってしまったのだ。
右を出すとカウンターを狙われ、
15kg差というアドバンテージが吹っ飛んでしまう
「恐怖」を感じたのだろう。

「恐怖」を感じたルイスと与えたジョーンズ。
こうなるとあっという間に攻防が逆転する。
突進でジョーンズ狩りを目論んだルイスだったが、
いったん狩り立てられる側にまわるとそうはいかなかった。
攻撃はするものの強さはみられず、
歯車が欠落した機械のようにちぐはぐだ。
そこをジョーンズのパンチが見事に確実に切り裂いてゆく。
終盤には鼻血も出し、倒されることはなかったものの、
完全な引き立て役にまわってしまった。

今回のジョーンズの挑戦は「格闘」という観点からいうと
間違いなく現代のロマンでもあったが、
それは天才ならではの苦悩の賜物でもあった。
現在、強すぎるジョーンズには
ライバルといった存在がいない。
いくら無敵でもボクシング界は
タイソン、レノックス・ルイスといったヘビー級人気選手や
デラ・ホーヤやハメドといったカリスマ選手の方が
人気、知名度、報酬、全ての面で上回ってしまう。
そこでジョーンズは
ルイスというヘビー級に挑戦する非常識を達成して
近代ボクシング一番の名声を得ようと
あえて挑戦をおこなったのだ。
そしてジョーンズは計算通り完勝した。

ミドル級、S.ミドル級、L.ヘビー級、ヘビー級の
4階級制覇を成し遂げたジョーンズ。
今後タイソン戦やレノックス・ルイス戦などが
見られるかというと残念ながら話は別である。
今回はWBA王者ジョン・ルイスという選手の全てを研究し、
勝てると判断し挑戦したのであって、
その上のレベルである選手達との対戦は
慎重に考えていくはずだからだ。
タイソンは前に出る馬力が桁違いとなる。
レノックスは破壊力と距離難度がさらに上がる。
クリチコ兄弟も200cmなので同じように厳しい。

しかしロイ・ジョーンズは
カプリシャス(気分屋)なところがある。
飼い馴らされていない野生の魅力と天性の能力で
さらに世界をあっと言わす、
大きな頂を目指すかもしれない。

なおこの試合を見逃した方は4月14日に
リピート放送
を予定しているのでぜひご覧ください。


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2003-03-04-TUE

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