BOXING
私をリングサイドに連れてって。

メキシコ人意地を賭けた戦い!!
モラレス対チャベス



本日の日本時間2月29日(日)、
ラスベガスMGMグランドで
WBC世界S.フェザー級タイトルマッチが行われる。
『エリック・モラレス対ヘスス・チャベス』
フェザー級の名誉王者、モラレスが
1階級上のチャベスに挑む。

西海岸は現在天気が不安定らしい。
乗り継ぎ地のサンフランシスコは大雨。
さらにラスベガスでも金曜日午後まで
まれに見る大雨に見舞われている。
しかし土曜日は表面的には静かながらメキシコ勇者の
意地を賭けた戦いが行われる。

遅れてきた王者、マタドール(闘牛士)ヘスス・チャベス。
ボクシングファンでも聞き覚えがない方もいるだろう。
彼は見た目とは裏腹にその生涯は波乱に満ちている。

7歳の時にメキシコの貧困地デリシアスからシカゴへ移住。
アマチュアで実績を上げた。
しかし17歳の時に
ハリソン・ゲンツという名のギャング団と関係を持ち、
どれだけ悪いかを見せつけるような日々を過ごし始めた。
そして武装強盗の共犯として逮捕。
さらに約3年間の投獄生活。
94年4月出獄すると、50ドルを手渡され、
メキシコ行きの飛行機に乗せられた。
アメリカ市民権を持っていない重犯罪者には
仕方の無いことだった。

生まれたデリシアスから再びシカゴに密かに入国。
しかしギャングは再び接触してきた。
家族はギャングから離れるために叔父を頼り、
テキサス州オースティンに移り住んだ。
刑務所ではタバコを1日に2箱吸い、
体重も9キロ増えていた。

心を入れ替えアマチュアで実績を残しプロへ。
97年には世界ランクに入り、タイトル挑戦も近かった。
しかし運転免許取得で不法滞在が明らかになり、
移民局に確保された。
しかしさまざまな働きかけで奇跡的に滞在を許可された。

金曜日に行った独占インタビューでは
非常に静かに思いを語ってくれた。


経歴が嘘のような聡明なチャベス

一方のモラレスはメキシコ人としては伝説の
フリオ・セサール・チャベスに次ぎ
2人目の3階級制覇を目指す、いわずと入れた強打者。
USAトゥデイのトップ50人アスリートで
わずか2名ボクシング界からランキングされた
有能なアスリートでもある。
毎年クリスマスには地元ティファナの
中心地で子供たちに贈り物を贈る。
さらに大学で学び、遠征先にはパソコンを持参、
出身高校にパソコン30台を寄付するなど、
名実ともに単なるチャンピオンではなくすでに名士である。


スーパースター、モラレス

西海岸は現在、ヒスパニック系移民なしでは語れない。
02年の調査では全米人口の13.4%がヒスパニック系。
これがネバダは人口比21.3%。
カリフォルニアではなんと34%と跳ね上がる。
(2002年国勢調査局調べ)
しかし問題もある。
ティファナで1日8時間労働で得られる賃金は
45ペソ(450円)。
サンディエゴだと1日$54(5500円)と
10倍以上の格差があるそうだ。
違法入国する人数は年間約50万人程度と推定されている。
しかし年間300人強が不法入国途中で命を落とすなど、
夢に現実が立ちはだかっていることも確かだ。

しかし夢も実現する。
2002年にワールドシリーズ優勝した
アナハイム・エンジェルス。
あのディズニーが所有していたが、
アルテ・モレノという広告業の大金持ちが
新しいオーナーとなった。
メキシコ系の4世で、大リーグ初のラテン系オーナー。
そこで進めたのが南カリフォルニアの
ラテン人口層(650万人)に合わせた選手獲得。
今年のストーブリーグで注目の4選手を
フリーエージェントで獲得した。
バート・コロン(4年約55億円、ドミニカ共和国)
ウラジミール・ゲレーロ(5年約77億円、ドミニカ共和国)
ケルビン・エスコバール(3年約20億円、ベネズエラ)
ホセ・ギーエン(2年約6億6千万円、ドミニカ共和国)
まさにサクセスストーリーである。

もちろんボクシングも例外ではない。
モラレスを筆頭に、バレラ、チャベス、
そしてデラ・ホーヤ、バルガス等の選手が
いまやラスベガスの中心選手といっても良い。
ボクシングのリードするのは間違いなく
ヒスパニック系の選手たちである。
この試合は一般的にはブルーカラーの多いヒスパニック系の
アメリカの中でのルーツのアイデンティティを示し、
さらにメキシコ勇者2名の誇りをかける戦いとして
単なるタイトル戦ではない。
対照的な境遇で育った2名のボクサーが
故郷、将来、名誉、
語り尽くせない全てを賭ける戦いとなるだろう。

運命のゴングは日本時間日曜日。
WOWOWではこの試合を3月8日(月)午後8時から
放送いたします。


ご意見はこちらまで Boxnight@aol.com

2004-02-29-SUN

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