海馬。 頭は、もっといい感じで使える。 |
第1回 脳を活用する生き方のために 前回の実験には、ストレスを感じた人が多かったようです。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ・今回の実験では、片方のコインに視点を合わすと もう一方がボケて、両方に視点を合わそうとしたら コインが中央に寄って来るのですが、 結局ピントが合わないまま、 息が上がって気分がどんどん悪く・・・。 ただ、しんどいながらもこういう実験って楽しいですね (いわ) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ いらいらしてしまったかた、すみません! しかし、いらいらしたということが正解なのですよ。 最初は、片方のコインしか見えないはずです。 どちらか片方しか見えなくなっちゃうんですよ。 そして、じっと見続けているとわけがわからなくなる。 両目でちゃんと見て、 光の刺激が脳に伝わっているはずなのに、 なぜ、見えるのは片方だけなのでしょう? それも、脳が整合性をつけようとしたからなのです。 目と目の間に壁ができて、 ふたつの目は違うものを見ている。 脳は目の前の現実に対して、 このままだと整合性がつけられない・・・。 何とか整合性をつけようと頑張った結果が、 こういうことになるんですね。 では、今回から本編に入りたいと思います。 この『海馬』は、東京大学薬学部の池谷裕二さんと ほぼ日の糸井重里とが、いっしょにつくった本です。 ・・・海馬って、何? そんな質問も、いくつかいただいています。 海馬は、脳のなかのあるひとつの器官のことです。 池谷さんは、その海馬という場所を専門に研究しています。 池谷さんは、現在31歳。 ふだんは東京大学大学院の薬学研究科で 教鞭をとるかたわら、日夜研究に明け暮れています。 1998年に博士号を取得。 東京大学を首席で卒業し、大学院に首席で入学した、 端から見れば「秀才中の秀才」です。 「でもぼく、九九を覚えていないし、 数学の公式も、ひとつも覚えていないんですよ。 もの覚えがすっごく悪いし、 ドわすれがめちゃくちゃ多い。 漢字の書き順なんかめちゃくちゃで、 小学生のときの漢字の書き取りテストは2点だった」 ・・・こんなかたが、どうやって秀才の道を歩んできたの? その秘密も、ちゃんと、この単行本に、込められていますよ。 今日は、池谷さんという人のご紹介をかねて、 「糸井重里がぜひこの本をつくりたいと思った理由」 を、本人による談話のかたちで、お届けしますね。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ (※糸井重里による談話) 「脳について研究している池谷さんが、頭のはたらきを 『その時その時によって変わるものだ』と捉えている。 直感的に、これはおもしろいと思いました。 『頭のよさ』を考える時の 可能性が広がったなと感じました。 頭のはたらきがひとつの状態だとしたら、 自分を『頭のわるいやつ』なんて卑下していないで、 その人なりに脳を活用する生き方を選択できる。 そうすることで、 イキイキと生活できるようになるのではないでしょうか。 あらゆる人が、この世に生まれてきたことを もっと肯定できるぞ、と思ったのです。 ひとりの人でも、 バカである時もあれば、頭がいい時もある。 つまり、冴えているかそうでないかは、 一時的な状態にすぎない。 ぼくは、池谷さんの言っていることを、 そのように受け取りました。 つまり、頭のはたらいている状態は、 変えることができる。だったら、 頭を駆使している状態を つづけていればいいじゃないか……。 そんなふうに考えると、 あらゆる人に希望の光が差しこんでくる、と思いました。 『自分は毎日つまらない仕事をしている』 と思い込んでいる人でも、脳の使い方を変えることで、 常に問題を解決するよろこびを 感じることができるかもしれません。 『頭がいい』『頭が悪い』ということを プロセスとして捉えられるとしたら、 試験勉強のための脳の使い方ではなく、 生き方としての脳の使い方を 知ることができるのではないでしょうか。 『無限に記憶力をよくする』だとか、 『与えられた問題を早く解ける』 だとかいうことではなく、 たのしく、おもしろく生きるための 脳の使い方について池谷さんとお話ができたら、 まず自分がたのしくなるぞと思いました。 もともとは、自分のような 勉強のできなかった人間のために、 この企画が考えられたわけです」 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ※次回は来週火曜日におとどけ。おたのしみに! |
2002-05-02-THU
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