糸井 |
こんにちはー。
おひさしぶりです!
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池谷 |
おひさしぶりです!
おとといから先行発売がはじまった
『海馬』の売り上げ、すごいみたいですね。
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糸井 |
すごいよね。
(※註:現在の『海馬』の注文は、
5000冊ほどになっています)
もともと、先行発売でみんなの意見を聞いて、
売り方を考えようということだったんですが。
2000冊はいけるんじゃないかと思って
ドキドキしながら売りはじめたら・・・。
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池谷 |
ぼくもはじめは、
「ほぼ日で2000冊」
って聞いてすごい多いなぁと思って、
何日かけて売るのかなぁと・・・。
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糸井 |
そしたら、
一日も経たないうちに2000冊超えて。
ぼくら、あの本で対談している時から
そうだったけれども、やっぱりあれは、
人が求めている本だったんですよねぇ。
ぼくは、話をしながら、
「これ、人にわけてあげたいなぁ」
とずっと思っていたんですよ。
自分が聞きたいことでもありますし、
みんなも、こういうことが聞きたいだろうなぁ、
ということを混ぜていきましたし。
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池谷 |
たしかに、ぼくも対談したあとに、
思わずすぐに友達に電話をして、
「こんなことを喋ったんだよー!」
って、すぐに言いたくなったんです。
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糸井 |
そうだよねぇ。
本って、ジャケ買いされやすけれども、
インターネットなら、きちんと、
「この本で、君がこう飛べる」
と、きちんと説明できるんですよね。
・・・あ、テレビの前のみなさんは、
急に話しはじめたので
わからないと思いますので説明しますね。
『海馬』というタイトルの本を、
ずっと、この池谷さんと一緒に作ってたんです。
ぼくは主に聞き役で、生きている人が
どう考えているかの例を出す役だったんですね。
池谷さんは脳を研究している人です。
世間で考えている動きにあわせて
こういうことをわかりたいんだというぼくと、
研究室で、いちばん進んだところを
調べている池谷さんとがやりとりをすることで、
「脳を使う」ということをテーマにしたんです。
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池谷 |
そうですね。
わたしが、脳の仕組みを調べている立場で、
脳の使い方に関しては、イトイさんは大先輩で。
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糸井 |
「使ってこう失敗した」とかね(笑)
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池谷 |
そのテーマをもとに、
わたしの持っている知識を生かせないかな、
と、ぼく自身にとっても非常に新鮮な対談で。
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糸井 |
ふたりで話しあいながら作って
対談形式の本になったんですけれども、
対談に見えないんですよね、不思議に。
「ふたりで一緒にモノを作っている」
とでも言いたいようなつくりになりました。
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池谷 |
ほんとにそうですね。
最初は暗中模索のところからはじめて、
だんだん、カタチが見えてくるという。
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糸井 |
そういう本で、
タイトルは『海馬』っていいます。
海馬というのは、脳の中にある、
タツノオトシゴのようなかたちをした、
記憶をつかさどる部位なんです。
海馬だけのことを話しているわけじゃないけど、
「海馬」っていう言葉が妙に気にいったんです。
この言葉で、ぼくがピンと来た感じが
お客さんの中にもあるかなぁと考えて、
思いきって『海馬/脳は疲れない』と。
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池谷 |
はじめてお話をうかがった時にも、
『海馬』というタイトルで本を作りたいと(笑)。
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糸井 |
(笑)すごいよね。
ああいうやりかたって、あの本の中でも
語っているかもしれないけれども、よくやるんです。
「このタイトルの本だったら、
中身はさぞかしおもしろいだろうなぁ」って。
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池谷 |
なるほど。
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糸井 |
そして、ぼくも含めて、
「そのタイトルだったら、
おもしろいだろうなぁ」
と感じてくれた人たちにとっては、
内容は、どうだったらおもしろいのだろう?
そう考えていくんです。
クルマのデザインを描く時に、まず最初に
エンジンとかいろんな制約を考えずに、
「これがかっこいい」
とじゃんじゃん描いていくじゃないですか。
で、最高のものができたあとで、
「じゃ、これを作るためには・・・」
というのは、あとで考えるという。
それに似ているね。
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池谷 |
まさにそういう対談でしたね。
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糸井 |
脳を「使う」という発想がまずあって、
そのことがあなたを幸せにするし、
生きやすくなるし、というか。
ともかく、ダルい感じではなく・・・。
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池谷 |
あきらめるんじゃなくて、
積極的に人生に参加するということが
できるんじゃないか、と。
頭を使っていくことによって
よろこびがふえて、
附随して苦しみも増えるかもしれないけれども、
それに対処する方法もどんどん増えるから、
いいじゃないか、と。
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糸井 |
そういうテーマで話してできた本で。
話しあいをはじめたのは、冬でしたよね?
「お正月は実験のネズミの世話が・・・」
とか言っていたもんね。
それで3回ぐらいとても長く話して、
更に2回、追加取材を重ねてできました。
いま、読者のメールが届いているんですけど、
あの反応に自信を持った、というか、
「わかってくれてるな」というのがあるんです。
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池谷 |
そうなんです。
思ったよりもレスポンスがすごくいい。
「何言ってるか、わかんねぇよ」
と言われるのがいちばん怖かったんですけど。
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糸井 |
読者のほうの消費のしかたも
上手になってきているということを
ものすごく感じますね。
「ほぼ日」の読者って、すごい・・・。
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池谷 |
のみこみが、早いですよね。
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糸井 |
うん。
古い価値体系の文化にどっぷり漬からないで、
「もうちょっと、何か、あるだろうがよ・・・」
と言っていた人が
たくさん読んでくれているような感触があります。
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池谷 |
なるほど。
そうすると、もう、
受け入れる準備があるんですね。
まさにそういう方に読んでもらいたいので、
ベストフィットですね。
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糸井 |
その人たちのメールを読んでいても、
あぁ、理解して、
もっと欲張っている最中だなぁと。
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池谷 |
ほんとにそうです。
「早く知りたい、もっと知りたい。
つづきは、どうなるんですか?」
というメールがたくさん届いていて。
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糸井 |
海馬と平行して
『調理場という戦場』を作ったんですが、
そこに出てくる斉須さんは、
もう、自分の道を、
目を見開いて歩いてきたみたいな人で、
根っこにやわらかいところがあるから、
もう、バクバク食べて、
バクバク吸収してきた人なんです。
読む人によっては
精神論ととらえる人もいるんだけど、
やっぱり、そうじゃないんですよ。
「ハウ・トゥー」のことを語っているんです。
真剣に生きたほうが、実は、
あるところにたどり着けるぞ、というか。
ぼくらが『海馬』を作っていた時にも、
無駄のように見えることが
無駄ではないようにあとで跳ね返るとか、
そういうことだから、
ものすごくいいバランスの2冊です。
とにかく、読んで、
実生活で使ってくれるとうれしいですね。
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池谷 |
ほんとにそうですね。
友人とか学生の反応もたのしみなんですよ。
・・・あ、お疲れかと思って、
ドリンク剤を持ってきたんですけど。
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糸井 |
薬学部の池谷さんが
ドリンク剤っていうと、
すごく期待しちゃうんだけど。
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池谷 |
名前ばかりなんですけれども
わたしも薬学部ですし、
いちおうは薬剤師でもありますから、
体調はどうかな、と思って。
この中で効くのは、主に
ビタミンB1とカフェインですね。
疲れているから。
ぼくもほんとに疲れた時に飲むと
効くんですよ。
もう疲れているという時に飲むと
未来の体力を借りているという状態を
想像していただくとわかりやすいのですが、
そういうことですね。
あとでもちろん、どっと疲れがきます。
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糸井 |
あぁ、なるほど。
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池谷 |
乗り切る時には、効くんです。
ビタミンB1は新陳代謝を高めるんです。
しかも、ただのビタミンB1なら、
すぐに人間のカラダは
分解したり排泄したりするんですけど、
これは「誘導体」ですから、
人間がなかなか分解できないように、
ちょっといじわるなビタミンを
作ってあるんです。
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糸井 |
へぇ。
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池谷 |
長く残る、そういう特殊なビタミンB1は、
余計に効くんです。
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糸井 |
なるほど。
必要じゃない部分は出しちゃうのに、
しぶとく生き残っているんだ。
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池谷 |
そして、新陳代謝を高める。
脳を持続的に活動するためのものです。
ドリンク剤として出ているものは、
ほとんどがこのカタチですよね。
ドリンクの会社によって、
どの誘導体を使っているか、
もしくはビタミンB1そのものか、
という差があるんですけど。
そのぐらいしか差がないですね。
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糸井 |
ふーん。じゃあ、飲むね。
これで最後まで持つかな?
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