海馬。 頭は、もっといい感じで使える。 |
第14回 もうすぐ、本が届きます! 対談中の池谷さんとdarling みなさん、こんにちは! 『海馬』『調理場という戦場』を、 おととい18日(火)に発送をいたしました! 地域によって差がありますが、 今日か明日ぐらいに、みなさんの手もとに ご注文の品が届きはじめるはずです。 どうぞ、たのしみに待っていてくださいね。 ちなみに、昨晩の時点で、アマゾンさんでは 『海馬』が総合7位になっていたんですよ。好評! アマゾンさんの場合は、予約発売のために 本の到着は7月中旬になりますけれども、 買いのがしたという方、興味があったら、 ぜひ、アマゾンの海馬&調理場ページにどうぞ! (アマゾンさんで頼むと、送料無料ですよ) 今日は、池谷さんの自然体の談話をご紹介いたします。 みなさんからの質問に、答えてくれてます。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ <※池谷裕二さんの談話です> 『海馬』完成品が手許に届きました! まじで感動です。表紙が可愛いし、おしゃれ! 同時に発売の『調理場という戦場』は、 「仕事をしすぎたらこんなところまで行ける」 とでも言えるような単行本なのですね。 「もう、二十代は捨てた。 ぼくは仕事以外のものは捨てよう。 自分には、資質がないのだから、 やり過ぎぐらいが当たり前だ」 というフレーズが、おもしろそうです。 実はぼく自身も、原動力は けっこう、劣等感なんですよ。 これから自分が成功するかしないかは まだ、わからないまま生活していますし、 「人よりも優れている」 なんて、一度も思ったことがないです。 そういう中での「劣等感」っていうのは 個人的には、けっこういいアクセルになります。 みなさんからの質問も、 かなり届いているんですね。 読んでいて、とても嬉しいです。 ふたつ、お答えします。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ (読者からの質問・その1) 「池谷さんの本では、脳は疲れないと 書いてあるらしいのですが、 そうは言っても、わたしは夜8時頃に とっても脳が疲れた感じになってきます。 これは、どういう状態なのでしょうか?」 ・・・どのような仕事をしているかにも よると思うのですが、この方の場合も、 脳の導火線に火がついていないだけ、 なのかもしれないなぁと考えました。 手を動かすと脳も動く、 と「ほぼ日」で紹介したように、 身体全体が脳の導火線になっているのです。 例えば、ずっと同じ姿勢でいて いつも似たような単調な刺激を受けているだけだと 脳は当然、新しい刺激を欲しがりますよね。 何か、違うことをしたくなる。 そうすると、集中力がなくなるというか、 「脳が飽きた」という状態になります。 だから、新しい刺激を欲している時間帯に 入ってきていると捉えたほうが、 わかりやすいかもしれません。 身体の中の、ほかの導火線を使うというか、 そのかたちで、かなり改善されると思います。 ぼくの場合も、ずっと同じことをしていると、 脳が溶けてしまったような感覚に、なりますよ。 (読者からの質問・その2) 「何かを悩むことも脳の働きの一つだと思いますが、 この『悩むこと』にとても興味があります。 上手な悩み方、もしくは 悩みのメカニズムを教えてほしいです」 「悩むこと」って、主観的な行為ですよね。 それを客観的に知りたいという質問ですね。 この質問をいま聞いて、思ったんですが・・・。 矛盾について扱った、ゲーデルの不完全性理論という 数学の世界でよく語られるトピックのように、 「入れ子構造」だからこそ成り立つ法則もあります。 つまり、「ものを思うわたしを思う」というような 入れ子構造は、そもそもが矛盾をはらみやすい。 「意識を意識しているわたしを意識する」 というように、どこまでも進みます。 「悩むこと」を考えるということは、 それに似たものかもしれません。 ただ、視覚にしろ、聴覚にしろ、 人間が感じていることは 主観的であるということが前提ですから、 感覚を研究するということに関しても、 そもそもできることじゃない、 と考えた人が、いるんです。 だったら、ということで、 コンピュータに視覚を判定させようと 情報処理させた研究が残っているのですが、 これは、処理できなかったんです。 最初は、ものの輪郭が、わからなかった。 AがBよりも手前にあるということが かなり高度なプログラムを組まないと、 判断することができなかった。 ・・・そういう結果から、 「あぁ、視覚の本質には、まずは 輪郭ということが関わるのかもしれない」 というように、ひとつずつわかってくるんです。 この場合も、悩む脳について脳が悩んでる、 っていうややこしい話にはなるのですが、 主観的なものについて、悩んでいるからこそ わかることもあるので、そこがおもしろいですよね。 これが「絶対にわからない」ということは、ない。 ぼくも、落ち込んでいる時に ふと、神経細胞を顕微鏡で覗いて、 この質問の方のように思うこともありますよ。 試験管の中で、ぼくが悩んでいようといまいと ほんとうにスクスクと育つ神経細胞を見て、 「おまえらいいなぁ、悩みがなくって……」って。 しかし、よくよく考えてみると、 「あぁ、でもこの神経が、 ぼくの中で悩んでいるんだな」というか。 ちょっととりとめもないのですが、 そんなことを考えました。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ……科学者として、いろんな方の質問を読むと、 科学者と一般の方の視点がかなり違うということを 思い知らされますね。おたがいに、ズレている。 ズレているのは、少数である科学者なのですが。 ただ、科学者は毎日毎日自分の研究を続ける中で、 「自分の考えていることこそが、正しい」 と思いこんでいるわけです。 それを、ほぼ日読者の方からのメールのように、 ひょんな形で外からの問題意識を受け止めると、 「あれ?」と思うわけです。 この意識のズレに、 正直なところ焦りを感じてもいるのです。 「一般的な質問に対して 科学者が答えを提出するには、 まだまだ、ギャップをうめるための 科学的知見というものが、足りないなぁ」 と痛感するからなんです。 科学者は、 「科学的に言えることは、ここまでなんだよ」 と話して、守りに入ろうとするんです。 それ以上は「可能性」に過ぎないから言えない、 だからここまで言う、という姿勢ですね。 だけど、もっと遠くの可能性を 求めている人たちが、イトイさんを含めて ものすごくたくさんいらっしゃるんですよね。 よくよく考えてみると、 ぼくも、脳科学を専攻する前には、 みなさんのメールと同じようなことを 考えていたんです。 「夢って何?」「悩むって何?」 そういった根本的な疑問を、 ぼくも忘れかけていたなぁと感じました。 なるべく、一般と研究者の溝を埋めようと 日々努力はしているのですが、はからずも 科学オタクになってきてしまっていたというか。 ですから、こういう刺激は、とてもありがたいのです。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ (本が届いた方へ。 ほぼ日では、現在、『海馬』『調理場』 店頭発売用の本の感想を募集しております。 読んでみて「あ、こういうこと思った」というのが ありましたら、ぜひぜひ、ほぼ日まで postman@1101.com メールでお送りくださるとうれしく思います。 実際に使用された感想を書いた方には、 もれなくほぼ日グッズをプレゼントいたしますよ! 差し支えなかったら、 おなまえ(ペンネーム)と年齢をお書きくださいね。 では、次回のこのページでお会いしましょう♪) |
2002-06-20-THU
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