海馬。
頭は、もっといい感じで使える。

第33回 老化と酸化の関係は?


昨日のWEB書店アマゾンさんでは、
『海馬』が2位、『調理場』が10位でした。
どちらも、9月に入っても好調のようで、うれしいです。
『海馬』は、5刷めに入ることが、決定しましたよ。

さらに、ミニニュースですが、
『海馬』と『調理場』は、
どちらも、現在、海外の出版社から
「翻訳させてもらいたいんですけど」
という依頼を検討中の状態に入っているんです。
(もし何か話が進みましたら、もちろんお伝えします。
 今日はまず「そういう依頼が来てますよ」ということを
 なんだか、お知らせしたくて、書きました……)

では、今日の質問です。
今日は「老化とは何か?」という問いですよ。
一見、脳とは関係がないように思えるのですが、
たしかに、単行本『海馬』の中に、
酸化と老化について触れていたところがありました。
そこに触発されての質問なのでしょう。

どうぞ、お読みくださいませ。







・すみません。
 直接、脳と関係があるかどうかはわかりませんが、
 『海馬』に、老化とは、酸化のプロセスである、
 というようなことが書いてありましたので、
 もし答えてもらえるものなら、やっぱり
 答えて欲しいと思いまして、質問を送りますね。

 老化をうながす「酸化」というのは、
 いったい、なんなんでしょうか?

 呼吸と、それに伴う酸化は、
 エネルギーを得るシステムだということは
 わかるのですが、
 老化および死の本質というのは、なんなんでしょう?

 何と引き替えの、「老い」や「死」なのでしょうか?

 かっこよく生きることや、エネルギーとの引き替えで、
 死が訪れるのだろうか、などとも考えてみるのですが、
 どうもしっくりきません。
 お答えいただければ幸いです。

 (くまがい)





・ちょっと、わかりにくい説明を
 してしまうかもしれませんが、お答えしますね。
 生体の使うエネルギーというのは、
 すべてATPなんですけど、
 そのATPを作るプロセスというのが、酸化なんですね。
 酸素を吸って、酸素を使うことでATPを作る。

 ATPを作る過程で、やむを得ないのですが
 どうしても「ラジカル」っていうものが、発生します。
 この「ラジカル」っていうのは毒なんですが、
 ふだんはすぐに分解されまして、解毒されます。
 だけど、少しずつ漏れていって、悪さをする。

 その「ラジカル」はどういう悪さをするかというと、
 「手当たり次第に周りの細胞を酸化させる」んです。
 タンパク質とか脂肪とか、そういうものを酸化させる。
 これが、老いのプロセスなんです。
 
 そして、今言った
 「エネルギーを作るための酸化」と、
 「老いのプロセスとしての酸化」とは、
 同じ酸化ではあるけれども、違うものなんです。
 エネルギーを作るために副産物としてできた
 「ラジカル」が生む酸化が、老いのプロセスですから、
 リンクしていることは、リンクしているのですが。
 
 ですから、老化のプロセスは、酸化ですけれども、
 その酸化は、エネルギーを生む酸化とは同じではない、
 と言いますか、そういうことが、言えると思います。
 
 (池谷裕二)






明日も一問一答形式でお届けしますので、
みなさん、どうぞ、たのしみにしていてくださいませ!


※なお、ちなみに……。
 海馬のアマゾンでの販売は、こちらで行っております。
 調理場のアマゾンでの販売は、このページで、どうぞ。
 どちらも、アマゾンさんで買うと、送料無料ですよ!

2002-09-04-WED

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