糸井 | やっぱり、写真を撮るときに、 「他人」をどうあつかうか、 どう撮るかっていうのは とっても大きなポイントなんですよね。 |
アニ | そうですね。 |
うめ | うん、うん。 「他人」だからこそ、 撮ることが恐ろしい。 |
糸井 | そういう意味でいうと 「他人」の怖さを超越してる エリックっていう人がいますよ。 |
うめ | ああ(笑)。 |
アニ | 誰ですか? |
糸井 | 以前、「ほぼ日」でも紹介したんだけどね、 中国でこういう写真を撮っている人。 |
アニ | へーーー。 |
糸井 | これはね、ある意味、暴力写真家ですよ。 |
アニ | すごい。 |
糸井 | 写ってる人、ぜんぶ「他人」ですよ。 これ、日本じゃムリだよね。 |
うめ | たぶん、ムリですね。 やればできるのかなぁ‥‥。 |
糸井 | だって、「殴られてもいいや」って 思いながら撮ってるからね、きっと。 実際、殴られそうになったりしてるらしいし。 |
アニ | ははははは。 |
糸井 | あとこれ、オートフォーカスじゃないんだよ。 つまり、パッと撮って逃げるんじゃなくて、 大きいカメラできちんと1枚1枚、撮ってる。 |
うめ | すごいよねー。 |
アニ | 北京オリンピックのマークがあるってことは 最近の中国なんですね。 |
糸井 | そうですね。 本人に会うと、ガタイがいいんですよ、やっぱり。 そういうところも重要なんだと思うなぁ。 |
アニ | そうッスね。 |
糸井 | その意味じゃ、 うめちゃんならできるかも。 |
うめ | うーん‥‥できるかもしれんけど‥‥。 |
糸井 | やりたくない? |
うめ | やりたくないっていうか、 なんか、わたしにとっては、 「撮られる相手がイヤかどうか」ってことが けっこう大きな問題なんですよ。 怖さよりも、まず、その問題が引っかかる。 |
糸井 | ああー、なるほど。 いくらおもしろくても、 望まれない関係にはなりたくないんだ。 |
うめ | そう、そう。 |
糸井 | すごい顔で写真に写っている 中国のこの一般の人たちが、 撮られることを望んでるとは思えないもんなぁ。 |
アニ | 望んでるどころか、 基本的に怒ってるんじゃないですかね。 |
糸井 | それを覚悟決めて撮ってるんだから やっぱり、すごいですよ。 あのさ、日本の写真やってる若い子が、 「私の写真、見てください」って見せるものって だいたい、外国で撮ってて、 人が写ってるとしたら老人か子どもなんですよ。 しかも、後ろ向いてたりで。 |
うめ | ああー。 |
糸井 | キミたち、その世界から一回出なさい、 って言いたい気分がオレにはある。 |
アニ | あー(笑)。 |
糸井 | 撮れない理由もわかるんだけどね。 なんか、キミはキミなりのがんばり方を してほしいなって、思うんですよ。 で、そんなときに、 梅佳代っていう人が出たもんだから 「ほら、この子はこんなに すごいことしてるじゃないか」 って思えたわけで。 |
アニ | あー、そうですね。 |
糸井 | やっぱり「他人」をどう撮るかっていうところに その人の覚悟とかが出ちゃうんだよ。 |
うめ | それは、そうかもしれん。 |
糸井 | その意味でいうと、 『じいちゃんさま』は、 他人じゃない写真集だから、 ほかの2冊とは、ぜんぜん違うよね。 なんていうか、見てて、 ぜんぜんラク。こっちが。 |
うめ | ああー。 |
糸井 | サービスもないし、気まずさもないでしょ。 |
うめ | うん。 |
アニ | これ、実家ですか? |
うめ | はい。 |
アニ | いや、実家の感じがすごい。 |
うめ | このまんま。 親戚のおばさんが、怒っとったもん。 もっと、部屋をきれいにしてから、 写真撮りなさいって。 |
アニ | ああー(笑)。 すき焼き食ってんのとか、 いいですよね。 |
うめ | 貧乏くさくてね。 |
糸井 | 声が聞こえてくるよ。 こういう声が聞こえてくるようなものは、 「他人」じゃないんだよ。 |
うめ | はい。「他人」じゃない。 (続きます) |
2009-05-20-WED