第26回 選定札、発表!

ほぼにちわ、「ほぼ日本カルタ委員会(仮)」です。
たいへん、たいへん長らくごぶさたしておりました。

「ふしぎと愛おしい日本」をテーマに、
読者のみなさんからカルタの「読み札」の投稿を募り、
たっぷりと遊ばせていただいた
「カルタ・ド・ニッポン」。
昨年末に中締めをしてから、ひさびさの更新となります。

なにせ約1年ぶりの更新。
こちらのページが
はじめてのかたもいらっしゃることでしょう。
お時間にゆとりがありましたら
ぜひ過去のページをご覧ください。
つまりは、「ほぼ日」でカルタをつくっていたのです。

2008年も終わりが近づき、
そろそろお正月の香りが漂ってきました。
お正月といえば、カルタ。
ここはひとつ、
たくさんいただいた投稿作から
「最終的な読み札」を1枚ずつ選んで、
もうすこしほんとのカルタっぽくしよう!
ということになりました。
やっぱり「ひとそろい」の読み札にしたいですものね。

というわけで過日、
「あ」から「わ」まで、それぞれの文字から
優秀な読み札を1枚ずつ選出いたしました。

この最終選考を行ったのは
「ほぼ日本カルタ委員会(仮)」会長、糸井重里です。

プリントアウトした過去の作品を
五十音順にずらりずらりと会長の前に並べ、
各文字ごとに、1枚の読み札を選び出す。
そうした流れで、この選考会はとり行われました。

それでは、
最終選定札の発表へと移ってまいりましょう。
糸井重里会長の「総評」にはじまる、
「あ」〜「わ」の選定札をご覧ください。

総評 糸井重里

「こうしてながめるのは、うれしいものですねえ。
 もう、この企画をはじめたころから、
 こうやってたくさんの読み札を
 目の前に並べるのをたのしみにしてましたから。
 で、そのときがきたら、
 『けっこういいですねぇ』
 というようなことを自分は言うんだろうなぁ、と。
 そこまで先回りして考えてたほどです。

 まさしくいま、その日がやってきたわけで。
 じっさいのところ、どう思っているかというと‥‥
 『けっこういいかも』ということです(笑)。

 全体的には、そうですね‥‥
 カルタというものの性格からか、
 ノスタルジックな作品が多く寄せられたのが
 特長だったような気がします。
 『日本の』という、このことばに、
 もうすでにノスタルジーが入っていますからね。

 それはそれとしてたのしいんですが、
 ここにきて最後に選びたくなったのは、
 『脱ノスタルジーな札』だったんです。
 なつかしいね、それってあるよね、
 ということ『以外』のところで、
 どれだけナイスなことを見つけられるか。
 そこがこの遊びのおもしろさだと思ったんです。

 などと、言ってはいますがね、
 気の迷いで選んじゃったことも
 ほんとうのところはあったかもしれません。
 『こっちの札のほうがいいでしょ?』
 そう思われるかたもおられることでしょう。
 でも、選びました。
 もう、おれのせいにしてくれ、というきもちです。」

「あ」の選定札

あと、肉まんひとつ
あつっ!

【選評 糸井重里】
この2作品は「あ」の使いかたがいいですね。
たとえば「あなた」とか「あまい」とかで使うと、
ちょっと下がっちゃうんです「あ」のちからが。
「あ」ということばを使うときの「覚悟」が、
この2作品にはしっかりとありますね。

「肉まん」の札は、その覚悟に加えて、
オプションとして時代が入ってるでしょ。
「レジ横」という買い物のしかたが。
買い物の目的は達成しているのに、
「あと」って言ってしまうことが、おもしろい。
もっと言うと、肉まんは日本の食べものじゃないですよ。
でも、日本のいまの時代に違和感がない。
いろいろ入ってます、この札には。
のっけから、MVPクラスの札ですね。

「い」の選定札

いくつに見える?
田舎のもてなし 食べきれん

いくつに見える? は、
かなりの場面で言われ続けてるセリフですから。
まあ、これでしょうね。

次点の作品は、もちろんわかるし、おもしろいんですけど、
実際にこれを経験した人が
どれだけいるかってことですよね。
経験した人にはピタッとくるんだけど、
そうでない人のことを考えて、次点。

「う」の選定札

うれしいことは おすそわけ
内風呂あるのに 銭湯に行く
うれしはずかし お鍋をよそう

良い感じのを3枚。

この「内風呂」のようなケースは、
やっぱり現実としてすくないかな、と。
「うれしはずかしお鍋をよそう」っていうのは、
要するに新婚とかカップルなんでしょうね。
でも友だち同士でも鍋は食べるので、すこし残念なんです。
お鍋が「新婚ならでは」のものだったとしたら、
これはすごくいいんですよね、きっと。
というわけで、「おすそわけ」にしました。

「え」の選定札

駅弁は別腹
駅弁のために 電車の旅

ふたつのインパクトのあることばを
助詞ひとつでつなげるだけでおもしろくなるという、
典型的なケースですね。
たとえば「河童と泥棒」っていうと何の関係もないけど、
「と」でつなげると、おもしろい気がするでしょ?
ぼくはよく、それをやります。
みなさんも、やってみるといいですよ?

次点は、まあ、このあたりで。

「お」の選定札

駅弁は別腹
駅弁のために 電車の旅

もしこのカルタが完成したら、
この「おすし」の札をとりたがる人が
いっぱいいると思いますね。
それだけで選ぶ価値は十分あります。
ただ、「お」の使いかたがちょっと残念。
丁寧語ですから、「おはし」でも「おかね」でも
他にかわりがありますからね。

その点、次点にはしたものの、
「恐山」の「お」の使いかたはすてきです。
「おすし」がなかったらこっちでした。

「か」の選定札

カレーうどんが ある国よ
カニがもたらす 静けさ

作品としてなかなか高い位置にありますよ。
「ある国よ」で止める。
いいですね。
実際に声に出して読んでみると、
カルタとして、すごくいいことがわかるんです。

カニのほうもなかなかですが、
ちょっと、このことについては常識として
語られすぎているかなぁということで、次点に。

「き」の選定札

きんもくせいは 運動会の香り
北の国の あいさつは 短い

きれいな読み札も混ぜておきたいので。
たまにはこういう「匂い」をカルタに入れたいです。
「きんもくせい」っていうのは、
その役割にぴったりでしょう、ちょうどいい。

次点はご存知のかたはご存知の、
「どさ?」「ゆさ」というやつを選びました。
東北方面の短いあいさつ。
「どこさ行くの?」「湯さ行くの」

「く」の選定札

空中でもまぜる 納豆
クラスにひとり 三国志マニア

ほんとは「納豆」からはじめてほしかったですけどね。
そうすると「な」の札になるわけですね。
なるほどね、なかなかむつかしいですね。

次点はこれでした。
信長、秀吉、家康、どれが好き?
みたいなこととおんなじですよね。
います、各クラスに。

「け」の選定札

敬老の日は 早くけえろう
ケンカした次の日の 「おはよう」

早く帰って孝行しましょうよ、っていうね。
言いたいだけの感じでもないですし。
さっきの「きんもくせい」みたいなのを選んだあとは、
ふまじめなのを入れたくなるんです。

「ケンカした次の日」は、次点に。
正しい読み札ですよね。
ちょっとだけ正しさが優等生っぽいけど、
きらいではないです。

「こ」の選定札

ごめん 寝過ごした
ごくらくは わが家のお風呂に あったんだ

「ごめん寝過ごした」は、
「お弁当」というテーマで投稿されていましたけど、
でもそんなのはもう関係ないんです。
言い訳のひとつとして
「寝過ごした」が使われている時代ということです。
生活のリズムがそろわなくなってるわけですよ、いまは。
夜も起きてるから寝過ごすことが起こってるわけで、
「ごめん寝過ごした」っていうあいさつが
新しく一般化してるんです。
昔ならありえなかったでしょう?
朝に起きてない人がいるなんて。
生活のサイクルが変わっていることが
ごく普通に使われてるのがおもしろい。
だからこれは、平凡な札としておもしろいんです。

次点は、「ごくらく」にしました。
「あったんだ」っていう、
あまりにも疑いのない感じが
ちょっと気になるんですけどね。
「あるのかも」くらいで、
ごくらくを表現できればもっとよかったです。
でも、「ごくらく」を家の中に簡単に
ポンと置いちゃってる感じがたのしかった。

と、選出は続くのですが‥‥。
お気づきのかたも、すくなくないと思います。
会長、糸井重里が最終札に選んだものは、
「キープ札」とは限りませんでした。

「じゃあ、キープ札の制度なんていらなかったじゃん!」
という声が聞こえてきそうです。
ごもっとも。
「すすめながら考える」がモットーの
「ほぼ日本カルタ委員会(仮)」とはいえ、
これに関しては性急でありました。
会長の選球眼は、会員たちのそれとは
異なるものだったのです。

いずれにせよ、
「選評」といっしょに読み札をながめると‥‥
またあらためて、おもしろさが増してきました!

次回、「さ行」と「た行」の発表を、おたのしみに。

2008-12-23-TUE
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