第34回 「よ」に送られた読み札たち
よろしくと言って 去る男

「やっかいな面倒はあるし、工夫も必要だけど、
 ここはひとつ、うまい具合にやっておいてくださいね。
 それでは、お先に失礼しまーす!」
というような意味が込められた、
たった4文字のことば「よろしく」。

さっそうと帰ってゆく男の後ろ姿を目に浮かべつつ、
はじまっております「カルタ・ド・ニッポン」。
年末年始にあらためて再募集した
「ぬ」「ね」「む」「め」「よ」「ろ」から、
今回は「よ」の読み札をご紹介いたしましょう。

最も多かったのが、
この「よろしく」ではじまる作品でした。

・「よろしくね」 言っとかないと、何か不安。

・「よろしく」言っとけば だいたいオッケー

・よろしく よろしく これで五回目

・「よろしく」は がいこくごに やくせない

毎日のように使っていることばであることや
その便利さをあらわす読み札が、たくさん届きました。
実際、みんなが頼りにしている挨拶ですよね。
メールにも
必ずといっていいほど書いているのでは?
何度も使うから、こんなふうに↓なってる人も多そう。

よろしくお願いします。 は早く打てる

「よろしく」の次に多く寄せられたのは、
なぜか、このことばではじまる作品でした。

ようかんの 切り方に出る お人柄

ニッポンのお菓子、ようかん。
それを詠んだ札のほとんどには
「たくさん食べたい」という気持ちが込められています。

・ようかんは あつぎりでね

・ようかんの端は 家族で奪い合い

・ようかんの左の端は わたしのもの

・ヨウカンを いつか1本 丸かじり

で、きわめつけはこちら。

ようかんを バナナみたいに 食べる人

「食べたいな」じゃなくて「食べる人」と
作品に客観性があるのも、なんだか面白かったです。
それにしても「バナナみたいに」って‥‥。

続きまして、やはり多めに投稿いただいたのは、
「夜」ではじまる読み札です。

・夜の部 昼の部 浅野忠信

という「言いたいだけ札」も届きましたが、
これらはさらりと流させていただきまして、
「夜」の札にはこんな傾向がありました。

・夜のコンビニ 灯がともる

・夜もやってるスーパー

・夜もコンビニ 走れば行ける

・夜 用がなくても 寄るコンビニ

どうやら「夜」ということばから
「コンビニ」を連想するニッポン人、
なかなか多いようですね。

夜道で女性に 逃げられる

基本、笑える作品ですけれど、
よくよく読めば、それだけでもない様子。
「ニッポンの夜の安全」のことも、
ちょっとあらわしているような気がしました。

嫁は薄口 姑は濃い口
嫁の色気と 姑のぬか漬け

さりげなく掲載しましたが、重厚な2作品。
「嫁」の読み札も数作届きましたが、
漂う緊迫感で上のふたつを選びました。

続いて、「洋」ではじまる読み札を3作品。
「ふしぎと愛おしい日本」というテーマのカルタに、
あえて「洋」ではじまるものがあるのもおもしろいですね。
対としての「和」をかならず意識するので。

洋画は字幕か 吹き替えか

「ぜったい字幕」という人もいれば、
「吹き替えのほうがラク」という人も。
考えてみれば、ほとんどの洋画に
吹き替えが準備されているって、すごいことですよね。

洋菓子と和菓子の 境い目 イチゴ大福

なるほど、境い目かもしれません。
ちなみにこのイチゴ大福、
世に出たのは昭和60年頃だったとか。
「うちが元祖です」というお店が全国に何軒もあって、
どこが発明したかははっきりわからないのだそうです。

洋楽に 中二ぐらいで 一回はまる

感受性がどんどん豊かになる時期ですから。
「ほぼ日本カルタ委員会(仮)」にも
まさしく中二の子を持つ親がおりますが、
それなりにはまりはじめているようです、洋楽に。

それでは、
「よ」の読み札の最後に、7作品を続けてどうぞ。

吉田さんは ほぼ『ヨッシー』

山田さんとか山崎さんは、ほぼ『やまちゃん』。
渡辺さんは、ほぼ『なべちゃん』。
鈴木さんは、ほぼ『すーさん』。

よく来たな 迎えるじいちゃん 孫逃げる

せつない‥‥。
やさしいおじいちゃんでしょうに‥‥。
たのしみにしてたんですよ、きっと。
でも、逃げちゃう気持ちもわかります。

よそゆきの声で 出てきたおかあさん

お客さんを迎えるおかあさん、
電話をかけるおかあさん。
いつものしゃべり方とちがうんですよね。
そう、よそゆき。

幼少の記憶は ディスクの中に

これからますますこうなっていうんでしょうね。
いいとかわるいとかではなく。

ヨンさまは となりのくにの 人だけど

「人だけど」で終わっているのがナイスだと思いました。

よつばのクローバーを とっておく

きれいな読み札。
一度手にすると、捨てられないものです。

酔っぱらって、 おりません!

完全に、酔っています。

というわけで、
「よ」の読み札はこんなところで。

こうして選んでおりますのは、
一次予選のようなものとお考えください。
あとひとつ、
「ろ」の読み札までこの一次予選を行いましたら、
そこであらためて
委員長・糸井重里による最終選考会を行います。
いよいよ、あとひとつなんですねー。
ついに、読み札がそろいそうですよ?!

次回、
「ろ」の読み札たちの発表をおたのしみに!

2009-02-03-TUE
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