HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN 佐伯チズさんにはできるけど、 わたしにはできないという理由? 2


第1回 やさしさを見せること。
佐伯 スクール(佐伯式美肌塾チャモロジースクール)は、
今期で10期目を迎えたのですが、
男性がふたり卒業しています。
これは新しいことです。
糸井 すごいことだと思います。
佐伯 女性の生徒さんたちも
彼らを自然に受け入れて、
和気あいあいとやってます。
男性をモデルにして
女性が実技をすることもありますよ。
いずれは男性のお客さまだって
いらっしゃるようになりますから。
糸井 これからは、サロンに
ものすごい数の男性を
お客さまとして抱えることになるんですね。
佐伯 そうなると思います。
糸井 それは全体が変わる勇気だなぁ。
佐伯 はい。これからは
男性もきれいになってほしいと
思っているんです。
糸井 その時代に辿り着いたんでしょうね。
きっと一昨年や一昨々年じゃ
だめだったでしょう。
佐伯 はい。男性女性関係なく、
普通の人がちゃんと
「佐伯さんのとこに行ってるよ」
と言えるようなサロンを開くことは、
ずっとみなさんに願われてきたし、
わたしもそれはもっともだな、と思います。
糸井 スクールのほうも、
女性ばかりのほうが場が安定するでしょうから、
そこから抜け出そうとするのは
けっこう冒険だったんだろうなと思います。
佐伯 おっしゃるとおりです。
だけど、入学された男性はふたりとも、
この仕事をやりたいという意欲をお持ちでした。
男性の「エステ」は機械化されている部分が多く、
男性が直接お客さまの顔にさわることは、
なかなかありません。
しかし、佐伯式は原則的にオールハンドです。
ここまで徹底しているメソッドは
ほかにあまりないらしく、
美容学校を卒業した人が
このスクールに入り直されることもあります。
糸井 いや‥‥ぼくは思うんですが、
男性だって、わりとね、
人にやさしくされたいんですよ(笑)。
佐伯 男性が、特に女性から
やさしくされるということは、
ホルモンが最も活性することのひとつなんだと
思いますよ。大切なことです。
糸井 だけど、慇懃無礼なやさしさについては、
男はけっこうわかってるんです。
佐伯 なるほど(笑)。
糸井 とことん「本気なふり」のサービスにも
慣れてる場合があります。
佐伯 はい。
糸井 やさしさを見せることは、
そうとう高度である、という時代に
なってきています。
だけど、チズさんのスクールを拝見して、
まさにそこのところをやってらっしゃるんだな、
と思いました。
佐伯 ありがとうございます。
糸井 むかし、通っていた床屋さんで
手をマッサージしてくれるお店がありました。
最近はだんだんとそういうお店が
減ってきちゃったんですが、
はじめてマッサージされたときに
とてもうれしかったことを憶えています。
佐伯 そうですよね。
手足を触ってもらうことほど、
リラックスできることってないんですよ。
なぜなら、手足は、からだのなかで
最も動かし、使っている部分なので、
疲れが出るんです。
糸井 ああ、そうですね。
佐伯 手足をほぐしてもらうことは、
いちばんといっていいくらい、
人がゆったりすることだと思います。
糸井 うん。しかも、手のぬくもりでね。
佐伯 そうです、手でね。
病気の方は、患部を手でさすったり、
あたためてあげるだけで
気持ちいいとおっしゃいます。
手で触ることって、
最高のケアなんですよ。
糸井 それは、心まで変わりますよね。
佐伯 そうなんです!
わたしはお客さまに
「きれいになれる、元気になれる」というふうに
心を変えていただきたいし、
それが最高のエステだと思ってます。
気持ちが変わると、みなさん
顔色が変わってきて、
着るものも変わってきます。
糸井 うん‥‥なにかきっと、
「どうせ」という気持ちが
全部をひっくり返しちゃうんだと思うんです。
「どうせ俺なんか」「わたしなんか」とかね。
佐伯 そうです。まったくそうですね。
糸井 それは自分でもよくわかることです。
自分でもいろんな「どうせ」を
やってますから。
ぼくは、プライドは、
あんまりないほうなんですが、
必要なのは、きっと
自分を大切にするという
小さな誇りなんですよね。
みんな、それが毎日
点いたり消えたりしてるんだと思います。
それがチズさんのところで
スタッフの方にやさしくされるとね、
真珠の核のような
小さな誇りが芽生えるんです。
あとはもう、アコヤガイの中で
真珠を作ればいいんだ(笑)。
佐伯 そうですね(笑)。
糸井 たぶん、チズさんのなさりたいところは、
そこのあたりだと思うんです。
佐伯 そのとおりです。
糸井 それがエステティックだったと
いうことなんだと思うんですよ。

(続きます)

2010-01-04-MON

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