糸井 | スタッフのみなさん、 お化粧をしてらっしゃらないですよね? |
佐伯 | はい、していません。 素肌感を見ていただきたくて。 |
糸井 | そのおかげで、なんだかこっちは 「受け入れてくれるんだ」って 思っちゃうんですよ。 チズさんの指示されているところ、 いちいちすごいなぁと感心します。 そのあたりの快適さが、 とにかく「うれしい」んです。 |
佐伯 | わたしがつねづね考えているのは、まず 「安心して行けるエステ」 ということです。 |
糸井 | ああ、そこはとてもよくわかります。 |
佐伯 | エステに行くのに 「何をされるかわからない」と 躊躇される場合があるとしたら、 そんなこと、あってはいけないでしょう。 |
糸井 | チズさんのサロンは、 とくかく安心できる雰囲気があります。 もっと上手に色っぽくしたほうが お客さんは来やすいかな? と 考えがちなんだけど、そうじゃない。 |
佐伯 | 心身ともリラックスして きれいになってもらいたい、と考えているので、 わたしたちスタッフが お客さまに媚びる必要はないと思うんです。 化粧品やチケットを売らなければいけない! と思ったり、 また来てもらおうと躍起になると 媚びてしまうことになるかもしれない。 うちが技術料だけをいただくことにしているのも、 回数券式のチケットではなく 1回ずつの料金設定にしているのも、 「次、お気に召したらどうぞ」と お客さまに選んでいただくことを 大切にしているからです。 |
糸井 | お客もお店も、お互いにそのほうが やりやすいですね。 |
佐伯 | そうだと思います。 |
糸井 | サロンのスタッフのみなさんも、 とてもきれいな方だった印象があります。 あごのラインも、もうパシーンとしてて‥‥ 小魚のような‥‥稚鮎みたいになってる(笑)。 見事ですよ。 お手入れで気をつけていらっしゃることは ありますか? |
佐伯 | そうですね。 髪型や身だしなみ、私生活にも いろいろと気を配ることは エステティシャンにとって とても重要だと考えているんですよ。 トリートメント中はマスクをしますし。 |
糸井 | お客さんに息がかかっちゃうから? |
佐伯 | はい。 歯磨きをいくらていねいにして 気をつけていても お昼や前の夜に何を食べたか、 口臭として出てきてしまうものです。 トリートメント中はお客さまが 横になっていらっしゃるでしょう? 人間は、寝ころんだ状態のときに、 もっとも感じやすくなるんです。 匂いもよくわかるし、音も聞こえるし、 振動も感じやすくなります。 歩く音も響きますので、 スタッフはヒールのある靴を 履かないようにしています。 そして、なおわたしたちは いちばん敏感な、神経の集中している お顔の近くに座らせていただくことになります。 匂いという理由からも、 化粧はしないのが基本です。 |
糸井 | ほおぉ。 |
佐伯 | うちは、煙草を喫う人は採ってないんですが、 それは口臭ということだけでなく、 指からも匂いがしてしまうからです。 髪の毛にもいろんな匂いがうつりますでしょ? ニンニク、ネギ、タマネギ、ニラを 食べるのは、休みの前日に。 |
糸井 | すごいなぁ。 |
佐伯 | だって、頭の上にいるんですからね。 |
糸井 | はぁああ、すごいな。 生徒さんたちは、肌がきれいなだけでなく、 姿勢もいいですよね。 さすがだなぁと思っていたら、 チズさん、注意なさってましたよね、 「疲れるでしょ?」って。 |
佐伯 | はい。姿勢が悪いと腰を悪くするんです。 また、姿勢が悪いと うまく力が入らないので、 施術のときに正しく手が入っていかないんです。 ですから、座る姿勢は、とても大切です。 |
糸井 | 姿勢は、テクニックにも 影響してくるんですね。 しかも、お客さんが、見ていて気持ちがいいし。 |
佐伯 | そうなんです。 お客さまは、ほんとうに いろんなことを敏感に感じられます。 わたしたちはできるだけ、 神経をゆっくりと休めていただけるように、 ライティングや香り、 外気との温度差、それから音にも気を配ります。 |
糸井 | 部屋の香りはどうしてるんですか? |
佐伯 | 京都から取り寄せたお香を 焚かせていただいています。 |
糸井 | 「和」のほうのお香なんですね。 |
佐伯 | 「和」のお香です。 お花は1輪だけ、ユリの花です。 わたしどもで使っているお香は だいたい2時間ぐらいもちます。 それを、お客さまがおいでくださる 30分前からたいておくと、 施術が終わる頃には、 その残り香だけを感じていただき、 最後に、1輪だけ飾ってあるユリの香りを たのしんでいただけます。 化粧品も、基本的には匂いのないものか、 天然のバラの香りを使う程度にしています。 そして、音は波の音。 お客さまが横になられる椅子は、 マッサージのような ローリングマシンがついたものを使用しています。 |
糸井 | ああ、あれ、 変わった椅子だなと思ってたんです。 |
佐伯 | わたしたちのサロンの施術時間は2時間半です。 2時間半って、ふつう、 じっと寝てられないですよね。 ですから、背中でゆるやかにローリングが回って からだが動けば大丈夫かな、と試してみたんです。 |
糸井 | それぞれ、チズさんがひとつずつ 足し算するように考えていったんですね。 |
佐伯 | はい。音楽も、 川のせせらぎ、虫の音、海猫の鳴き声、 いろいろ試しました。 そうして、波の音がいちばん 落ち着くとわかりました。 ずーっと聞いてても、たぶん大丈夫。 |
糸井 | お部屋やガウンの色は、 なぜピンクにしたんですか? |
佐伯 | 世界中の女性が いちばん好きな色だからです。 ランキングの1位、2位がいつも 赤かピンクなんですよ。 |
糸井 | なるほど。 |
佐伯 | けれども、日本人は、 特に年を重ねると、 ピンク色の服を着る勇気がないと おっしゃる方が多いんです。 それだったら、 こういうところに来ていただいたときに、 みなさんがかわいいとおっしゃるピンク、 憧れのピンクを着ていただけるように、と 思いまして。 お部屋は淡ーい、白に近い ピンクにしています。 |
糸井 | それぞれに個室ですよね? |
佐伯 | そうです。 各部屋にトイレを完備しています。 水をたくさん飲んでいただきますので、 途中でお手洗いに行きたくなっても 「どうぞ」とおすすめできるように。 |
糸井 | ぜんぶ理由があって‥‥夢の世界ですね。 |
佐伯 | ここにいらっしゃるときぐらい、 できるだけ快適にしていただきたいんです。 (続きます) |