HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN 佐伯チズさんにはできるけど、 わたしにはできないという理由? 2


第3回 儲けって何?
糸井 「きれいになりたい」というのは、そもそも
欲望の話ですから、下手をすると、
危ない、生々しいところに
行っちゃうと思います。
だけど、チズさんはそこを、
とてもうまく扱ってらっしゃるなぁと
つねづね思っていました。
佐伯 私は、本物のエステティックを
みなさまにお伝えしたいんです。
だから、ビューティシャンには
お客さまのお肌や体調のことを
ケアしてほしいのです。
その気持ちはちゃんと手に出るはずですから。
糸井 儲けたいんだったら、いっそ
占いとかを混ぜたほうがいいですもんね。
佐伯 (笑)
糸井 「口角が上がらないと
 えらい目に遭いますよ」
一同 (笑)
佐伯 肌のケアは、ほんとうは
誰でもできることですから、
危機感や恐怖心をあおるものではないのです。
エステ業界で、
売り上げの大部分を
販売で成り立せているところが多いのは、
そうしないとやっていけないからなんですよ。
うちなんかでも大変です。
だけど、比重を販売にかけると
肝心のケアが
おろそかになってしまいがちだと思うんです。
スタッフの施術の手が
お客さまのケアに集中できるように
なってほしいのです。
ですから、わたしは自分の“技術”を売る
エステティシャンを育てようと思ったんです。
糸井 それはかつて、
自分がその気持ちの気配を
感じたことがあるってことですか?
佐伯 そうです。販売業にもいましたからね。
糸井 それは、勇気を感じますよ。
傍から見たら、
儲けの柱を1本外して家建てた、
みたいなもんですから。
2時間半でお客さんひとりだったら、
1日にできる人数だって、
決まっちゃいますでしょう?
佐伯 そうです。
それに、通っていただくのも
月に1回でいいんです。
女性の肌のサイクルは、基本は28日。
垢は7日サイクルで落ちていきます。
だからスクラブは1週間に1回、
エステは1ヶ月に1回。
生理機能に合わせてやるといいんです。
糸井 それじゃ、いわゆる
「客単価」は決まってしまいますよね。
佐伯 そうなんです。
だけど、そのほうが
お客さまは安心して来られるんですよ。
糸井 チズさんは、本もたくさん出してらっしゃるけど、
出版物で入る収入って、
そんなに多くはないですよね。
どんなに名前を売っても関係ないし。
本の印税や出演料で儲かってるんでしょう、って、
人は言うんですよね、きっと。
佐伯 そうなんです(笑)。
わたしは、ほんとうに儲けようと思うんだったら、
そんなこと考えないで
堂々と化粧品作ります、ぼーんと。
糸井 儲けって、ないと
張り合いがないんですよ。
ボランティアじゃないからね。
働くぶんには都合のいい動機なんですが、
それがいちばんになっちゃうと、
だんだん違ってくるんですね。
佐伯 儲かるっていうよりは、つまり
信じる人を作るわけです。
糸井 そうですね。ホントに、そのとおり。
佐伯 信じてくれた人が買ってくれるわけだから、
イコール儲かるということになっていくけど、
それは後からついてくることです。
その人のためにこうなったらいいだろう、
ということをやっていくと、
みなさんがついてきてくださるだけの
ことですもんね。
儲けようと思う人のほうが儲からないです。
わたしは諭吉さん
大好きですよ!
糸井 ぼくも大好きです。
大好きだから気をつけるんですよね。
佐伯 「諭吉さん、行ってらっしゃいませ、
 すぐ戻って来て」
糸井 いやぁ、すごくよくわかります(笑)。
佐伯 はい(笑)。
糸井 だけど、あれだけサービスすれば
誰だってついてきますよ。
チズさんのサロンでは、
まずはどう考えても、
ずっと相手をしてくれる人が
いるわけですからね。
そこがすごいなぁ。
佐伯 そうです、2時間半ぴったり
手技をします。
最初から最後までひとりの者が
ケアさせていただけるようにしています。
糸井 2時間半の手技をですか?
佐伯 はい。クリームを使って、手で
しっかりとマッサージします。
手の温もりでリフティングできるんですか、と
よく訊かれますけれども、
手ほどいい道具はないんですよ。
密着もきく、
角度もお顔に合わせて微妙に変えられる、
保冷剤で手を冷やしながらマッサージすると
温度差も利用することができます。
施術のあと、
「あ、上がってる!」
「ほうれい線なくなってる!」
「顔がちっちゃくなってる!」と、
みなさん鏡を見て喜ばれます。
糸井 2時間半、スタッフの方は疲れないんですか?
姿勢がいいから?
佐伯 姿勢もあるんですけれども、
きれいにしてさしあげたいという
想いがあれば、疲れることはないです。
それどころかね(笑)、
もっともっと、これでもか! ということに
なってくるんですよ。
糸井 ぼくはよく指圧のお店に行くんですが、
施術中は、どういうプランで指圧をするのかを
とにかくいつも考えてるって
そこの先生が言ってました。
佐伯 それは、すごくいい言葉ですね。
とてもよくわかります。
施術中は真剣ですよ。
糸井 チズさんのスクールでも、
順番の話をすごくおっしゃってましたし。
佐伯 そう、順番は大切です。
リンパを流していって
ある程度体温が高まってから、
血管、そして神経の力で筋肉をほぐし、
ひきしめていくんです。
顔には30近い表情筋があって、
順番が違うと、うまくいきません。
また、リンパのマッサージは
方向がとても重要ですから、
充分勉強しておかなくてはなりません。
スクールでもたくさんのことを学んでもらって、
それは、サロンで
お客さまにさせていただいていることや
お伝えしていることとまったく同じです。
学校は学校、実践は実践とわけてはいません。

(続きます!)

2010-01-06-WED

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