糸井 | 「きれいになりたい」というのは、そもそも 欲望の話ですから、下手をすると、 危ない、生々しいところに 行っちゃうと思います。 だけど、チズさんはそこを、 とてもうまく扱ってらっしゃるなぁと つねづね思っていました。 |
佐伯 | 私は、本物のエステティックを みなさまにお伝えしたいんです。 だから、ビューティシャンには お客さまのお肌や体調のことを ケアしてほしいのです。 その気持ちはちゃんと手に出るはずですから。 |
糸井 | 儲けたいんだったら、いっそ 占いとかを混ぜたほうがいいですもんね。 |
佐伯 | (笑) |
糸井 | 「口角が上がらないと えらい目に遭いますよ」 |
一同 | (笑) |
佐伯 | 肌のケアは、ほんとうは 誰でもできることですから、 危機感や恐怖心をあおるものではないのです。 エステ業界で、 売り上げの大部分を 販売で成り立せているところが多いのは、 そうしないとやっていけないからなんですよ。 うちなんかでも大変です。 だけど、比重を販売にかけると 肝心のケアが おろそかになってしまいがちだと思うんです。 スタッフの施術の手が お客さまのケアに集中できるように なってほしいのです。 ですから、わたしは自分の“技術”を売る エステティシャンを育てようと思ったんです。 |
糸井 | それはかつて、 自分がその気持ちの気配を 感じたことがあるってことですか? |
佐伯 | そうです。販売業にもいましたからね。 |
糸井 | それは、勇気を感じますよ。 傍から見たら、 儲けの柱を1本外して家建てた、 みたいなもんですから。 2時間半でお客さんひとりだったら、 1日にできる人数だって、 決まっちゃいますでしょう? |
佐伯 | そうです。 それに、通っていただくのも 月に1回でいいんです。 女性の肌のサイクルは、基本は28日。 垢は7日サイクルで落ちていきます。 だからスクラブは1週間に1回、 エステは1ヶ月に1回。 生理機能に合わせてやるといいんです。 |
糸井 | それじゃ、いわゆる 「客単価」は決まってしまいますよね。 |
佐伯 | そうなんです。 だけど、そのほうが お客さまは安心して来られるんですよ。 |
糸井 | チズさんは、本もたくさん出してらっしゃるけど、 出版物で入る収入って、 そんなに多くはないですよね。 どんなに名前を売っても関係ないし。 本の印税や出演料で儲かってるんでしょう、って、 人は言うんですよね、きっと。 |
佐伯 | そうなんです(笑)。 わたしは、ほんとうに儲けようと思うんだったら、 そんなこと考えないで 堂々と化粧品作ります、ぼーんと。 |
糸井 | 儲けって、ないと 張り合いがないんですよ。 ボランティアじゃないからね。 働くぶんには都合のいい動機なんですが、 それがいちばんになっちゃうと、 だんだん違ってくるんですね。 |
佐伯 | 儲かるっていうよりは、つまり 信じる人を作るわけです。 |
糸井 | そうですね。ホントに、そのとおり。 |
佐伯 | 信じてくれた人が買ってくれるわけだから、 イコール儲かるということになっていくけど、 それは後からついてくることです。 その人のためにこうなったらいいだろう、 ということをやっていくと、 みなさんがついてきてくださるだけの ことですもんね。 儲けようと思う人のほうが儲からないです。 わたしは諭吉さん 大好きですよ! |
糸井 | ぼくも大好きです。 大好きだから気をつけるんですよね。 |
佐伯 | 「諭吉さん、行ってらっしゃいませ、 すぐ戻って来て」 |
糸井 | いやぁ、すごくよくわかります(笑)。 |
佐伯 | はい(笑)。 |
糸井 | だけど、あれだけサービスすれば 誰だってついてきますよ。 チズさんのサロンでは、 まずはどう考えても、 ずっと相手をしてくれる人が いるわけですからね。 そこがすごいなぁ。 |
佐伯 | そうです、2時間半ぴったり 手技をします。 最初から最後までひとりの者が ケアさせていただけるようにしています。 |
糸井 | 2時間半の手技をですか? |
佐伯 | はい。クリームを使って、手で しっかりとマッサージします。 手の温もりでリフティングできるんですか、と よく訊かれますけれども、 手ほどいい道具はないんですよ。 密着もきく、 角度もお顔に合わせて微妙に変えられる、 保冷剤で手を冷やしながらマッサージすると 温度差も利用することができます。 施術のあと、 「あ、上がってる!」 「ほうれい線なくなってる!」 「顔がちっちゃくなってる!」と、 みなさん鏡を見て喜ばれます。 |
糸井 | 2時間半、スタッフの方は疲れないんですか? 姿勢がいいから? |
佐伯 | 姿勢もあるんですけれども、 きれいにしてさしあげたいという 想いがあれば、疲れることはないです。 それどころかね(笑)、 もっともっと、これでもか! ということに なってくるんですよ。 |
糸井 | ぼくはよく指圧のお店に行くんですが、 施術中は、どういうプランで指圧をするのかを とにかくいつも考えてるって そこの先生が言ってました。 |
佐伯 | それは、すごくいい言葉ですね。 とてもよくわかります。 施術中は真剣ですよ。 |
糸井 | チズさんのスクールでも、 順番の話をすごくおっしゃってましたし。 |
佐伯 | そう、順番は大切です。 リンパを流していって ある程度体温が高まってから、 血管、そして神経の力で筋肉をほぐし、 ひきしめていくんです。 顔には30近い表情筋があって、 順番が違うと、うまくいきません。 また、リンパのマッサージは 方向がとても重要ですから、 充分勉強しておかなくてはなりません。 スクールでもたくさんのことを学んでもらって、 それは、サロンで お客さまにさせていただいていることや お伝えしていることとまったく同じです。 学校は学校、実践は実践とわけてはいません。 (続きます!) |