糸井 | チズさん、サボってないですね。 いちばん働いてますもんね。 やろうと思えば、サボるコースは、 きっとあるでしょう。 経営者になって どんどん手を使わないほうに行けば いいんですもん。 |
佐伯 | スタッフや生徒たちに、 「ひとりのお客さまに最初から最後まで」と 指導するのであれば、 自分もそれに戻ろうと思ったんです。 スクールでも 自分で教える部分は自分で教える、 サロンでも 最初から最後まで2時間半を ひとりでさせていただく手技にする。 手抜きはできないです。 |
糸井 | チズさんは、もう、 そういう体になっちゃってるんですね。 |
佐伯 | そうなんです。 この方はこうしてあげないといけない、 ひとりひとりにありますから。 |
糸井 | 疲れないですか? |
佐伯 | 疲れないです。 やっぱりお客さまが、 「あーうれしい!」と喜んでくださると 疲れなんか吹っ飛んじゃって、 「よかった!」と思うんです。 |
糸井 | すごいなぁ。 チズさんはあんまり我慢したり、 嘘ついたりしてないですよね。 それも、疲れないコツかもしれない。 |
佐伯 | はい(笑)。 |
糸井 | ほんとうは矛盾と思えるようなことも、 生徒さんの前で 恐れずにおっしゃっていましたよね。 それがまた、うまく生徒さんに 伝わってるんですよ。 「佐伯式では、お辞儀が深いのはなぜか」 という疑問があって、 チズさんは、 「なぜお辞儀をするのか、 その意味を理解すれば深くなるはずだ」 とおっしゃっていました。 だけど、もういっぽうで、 頭を下げているあいだに、 お客さまの着ていらっしゃる服や靴やバッグも 視界に入るから、 それを見るだけでもいいんですよ、 お辞儀がつらかったらそうしなさい、 ともおっしゃっていました。 |
佐伯 | いや、ほんとに、そうなんですよ(笑)。 |
糸井 | 冗談めかしておっしゃってたんですが、 生徒さんはみんな、自然に聞いてて、 いいなぁ、と思って拝見してました。 「お辞儀は心を込めてやりなさい」 その一点張りだったら、 「ほんとかよ」という 思いだって生まれちゃうでしょう。 |
佐伯 | はい。 お辞儀はきちんと、と、 お客さまを見るためでもいいから、と、 そのふたつとも、言いたいんです。 |
糸井 | そのことを受けとめていった生徒さんは、 「両方ほんとだ」って思うから、 今日教えてもらったことを きっと忘れないですよね。 チズさんが、サロンやスクールという チームを持っているから、 それがほかの人に伝わっていくんだよなぁ。 |
佐伯 | 「ただ頭を下げるだけじゃダメなのよ」 というところで教えても、うまくいきません。 どんなきっかけでもいいから、 お客さまを拝見して、 自分がお客さまの世界に 入っていけばいいでしょう。 そういうことで伝えれば、 みんなわかってくれますから。 |
糸井 | スクールでは、 ああいった礼儀の部分も 教えていくんですね。 |
佐伯 | はい。佐伯式とうたって、 エステティックの中にいろんな要素を 入れて教えていきます。 先生をお呼びして 正しい日本語の使い方を教えていただいたり、 マナーについてもカリキュラムに入れます。 サロンで、お客さまは 服を脱いでガウン姿になられるわけですから、 コミュニケーションの部分を大切にして 信頼、安心していただくことが 何より重要です。 |
糸井 | なかでもやっぱりあいさつは 重要だと。 |
佐伯 | はい。特に、仕事の現場ではそうです。 人は見かけといいますが、 特に若い子たちは、どんなに施術がいい子でも、 ごあいさつで判断されてしまうんです。 若いというだけで、お客さまから 拒否反応が起こります。 ですが、きちんとしたあいさつができて、 この人はちゃんと自分を迎えてくれている、 ということがお客さまに伝われば、 それだけで、スッと 「よろしくお願いします」と お客さまは言ってくださると思います。 けれども一旦「なぜ若いこの子が?」と 思われてしまうと、 あとで、なかなか修正がきかないんです。 |
糸井 | 化粧品会社に勤めていらっしゃった時代に 身につけたことも チズさんのなかには、入ってるんですね。 |
佐伯 | はい。それは大きいですね。 |
糸井 | 企業にいらっしゃって、 勤め人としてやってるのと、 フリーになって、 自分が責任者でやってるのとでは 発見できる分量が違うでしょう? |
佐伯 | それは、すごい違いです。 何であろうと見逃すことはできません。 だからといって、何でも わたしが出ていけばいいというわけじゃない。 |
糸井 | おっしゃるとおりですね。 |
佐伯 | 自分がこけたら みんなもこけるという状況は、ダメですからね。 だからわたしは、ほんとうに、 教えて伝えて 「小チズ」を育てたいと思っています。 そうしないと、リタイヤできないんですよ。 |
(続きます) |