佐伯 | うちのスクールでは、 卒業後に独立開業する際、 ディプロマ(認定)を 取るか取らないか、 ふたつの道があります。 |
糸井 | ディプロマを取らない人は、 それを活かして他所に勤めることも? |
佐伯 | はい、あります。 物を売ることもありますし、 時間を短くアレンジすることもあります。 でも、そうじゃなくて、 わたしと同じような考えで、 2時間半オールハンドで お客さまが1日1人でもいいからやりたい、 という人は、 スクールで先のコースまで学んでもらって わたしのやり方ができるようになるまで育てます。 ほんとうのエステはこういうものだ、 というのを広めてくれる人を育てたいんです。 |
糸井 | なるほど。 |
佐伯 | お客さまに、精一杯、 「きれいになってもらいたい」と 思える人であれば、 年齢の高い方でもできるんですよ。 そういう人たちのお店は わたしのホームページに載せていきます。 |
糸井 | 全国にあるんですね。 |
佐伯 | はい。値段については、 その地区の文化があるので、 それぞれ判断しないといけません。 |
糸井 | 2時間半の手技と 決まってるんですからね。 |
佐伯 | そう。 地域やサロンの展開によって 1万7千円の人もあれば2万円の人も、 2万5千円取ってる人もいます。 |
糸井 | そこから先は、自由。 |
佐伯 | 63歳でスクールに来て認定を受け、 サロンを開いた方がいます。 その方は、 「1日、昼間におひと方だけ、やってます」 とおっしゃっています。 リタイヤされたご主人がいらっしゃるので、 ご自宅で、2時間半〜3時間だけ。 そうすれば、ご主人に迷惑は そんなにかからないですから。 |
糸井 | すばらしいですね。 |
佐伯 | 「いくらいただいてるの?」と訊いたら 1万7千円ということでした。 10人お客さまがいたとして、17万。 60過ぎて17万くれるところ、いま、 そうそうないです。 それも、場所は自宅です。 |
糸井 | しかも、人に喜ばれてね。 |
佐伯 | そうです、喜ばれてうれしくて、と その方もおっしゃってました。 「あなた、やめないでね、 ひと月1回来るわ」 とおっしゃるお客さまがいる、と。 |
糸井 | いいですねぇ。 |
佐伯 | はい。わたしは、そういう人を ほんとうに育てたかったんですよ。 年を重ねた人でも、 「行けるところができたからうれしいわ」 と言ってくださるようなサロンを やりなさいと、ずっと言ってきたんです。 |
糸井 | エステをやる 適性というのはあるんですか? |
佐伯 | 向き、不向きは、確かにあります。 器用かどうかはあまり関係ありません。 不器用ながらも、落ち着いて じっくりやっていこうという人がいますからね。 それよりも、向いていないのは、 「できない、できない」と、 理屈で考える人かな。 「何でですか、どうしてですか」と クエスチョンばかりつける人‥‥。 |
糸井 | ああ、わかります。 |
佐伯 | そういう人は、 お客さんが来なかったりすると 「何でだろう」と考えるんです。 自分がお客さんだったら、とか、 お客さんのためにこうしてさしあげよう、 なんて、からだが先に出ることはないんですよね。 自宅のマンションでサロンを開いた方がいて、 わたしは彼女に 「誰を相手にしようと思ってるの?」と 聞きました。 「友だちです」 「それはやめなさい」 って言ったんです。 |
糸井 | うん、うん。 |
佐伯 | 友だちほど あてにならないものはありませんから。 |
糸井 | そうですね。 バーを開くときも、おんなじ。 |
佐伯 | そう、一緒です。 身内や友だちは最後に持ってきなさい、 全く知らない、いっちばん遠い、 自分に関係ない人から やっていかないと無理だよ、 と彼女に言ったんです。 なぜなら、友だちは来なくなるから。 |
糸井 | うん。 まずは「安くしてね」って言われるでしょう。 |
佐伯 | そのとおりです。 それに、身内は、 最初はいいことを言ったとしても、 辛口になっていくんですよ。 そしてだんだんとそれが 自信喪失につながるんです。 |
糸井 | その人を昔から知ってる、ということは そこから評価しちゃうんですよ。 「ちっちゃいときおむつ替えたもんだよ」 みたいに。 |
佐伯 | そうなんです。 そうやって友だちを相手にしていると、 結局、友だちが来なくなったら終わりです。 マンションの一室をサロンにするのはいいけど、 友だち相手だと、 生活の匂いをさせちゃうでしょう。 それもいけない。 はじめから、そうじゃないところから やっていかないと。 |
糸井 | なるほど。 で、その方は、やめちゃったんですか? |
佐伯 | いえいえ、きちんと考えて行動して、 その後、ブライダルサロンのエステに 就職できたんです。 |
糸井 | ああ、そういう手が! |
佐伯 | 40半ばの方だったんですけど、 りっぱに就職口を見つけられました。 |
糸井 | そうですか、すごいなぁ。 じゃあ、器用不器用というよりは、 人間性が関係していくんですね。 |
佐伯 | はい。不器用でも構わない、 頭をチェンジしてくれれば テクニックでカバーできます。 こっちが変えていってあげれば いくらでもできるんです。 |
(続きます) |