T |
CS放送には、ふたつ山があるんですよね。
チューナーという大きな山を超えたあとに、
「電波少年的放送局」の
セットなり毎月800円の値段を
払ってもらうというもうひとつの山。
極端に言うと、1か月の中に
5秒、見たい場面があるかなというのが
あれば、契約は継続してくれるのかなぁ、と。
だから、ずっとおもしろいヘンな話は、必要ない。
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糸井 |
その5秒って、理念としてはわかるんだけど、
そんな5秒がどこにあるのかなぁという話で。
すっごい阪神ファンの人が、
檜山のホームランを見たいといっても、
テレビがやってくれますよね。
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T |
ただ、あり得ない話ですけど、
その檜山が家に帰って、
「今日、打ったぞ」と奥さんに言う瞬間が
もし流れる可能性があるとしたら、
そしてそれを放送が狙っていると思えるとしたら、
ありうるわけですよね。
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糸井 |
それは「if」がものすごく多い話ですよね。
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T |
檜山に関しては無理なんですけど、
地上波が基本的にやらないと
言っていることに関して、
ある程度考えられうる媒体ということは、
あるのかなぁ。
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糸井 |
ほんとうに10万人でいいんですか。
10万人でも採算あわないですよね?
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T |
・・・これはね、
どのくらいここにかけていくか、なんですよね。
当然のことながら。
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糸井 |
うん。
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T |
たとえば、スカパーが、いま
300万人を突破しようとしている。
最初は100万人でペイラインに
達すると言われていたんですけど、
しかし今もまだペイしていないんですよね。
それはなぜかと言うと、
ワールドカップの放映権を買うからなんですね。
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糸井 |
そうですね。
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T |
この電波少年的放送局は、
かなりシンプルな状態でやっているから、
どこまで投資するかによるんですけども。
まぁ、そこの判断でしょうね。
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糸井 |
例えば、ムードの問題もあるんですけど、
機械買うのに7万円として月額800円って。
ものすごく弱気に見えますよね。
そこのところで、タダに近いところで
やりますよというのは、
「あぁ、やる気ないな」
っていう感じがありますよね。
これが5000円で、とんでもないことを
やりますよというところを800円に下げたのと
かなり違いがあって、まだこう、全体の
戦いをしていないような気がしているんですよ。
少年の知恵と勇気だけで
どこまでいけるのかという電波少年的発想って
非常におもしろいんだけど、
実は、バックに電波少年だったら電波少年の
その時間をぜんぶ使えるということって、
ものすごく大きいですからね。
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T |
こちら側に、正力松太郎が作った
地上波の広告媒体という
非常に大きなビジネスモデルがあるから、
電波少年というのが成立しているんですよね。
それとまったく違うビジネスモデルに、
CSというのは、なるんですよね。
それに関してはぼくも感じているんですけど、
少年のやんちゃな心だけでやっていくのは違う。
どこかで、毎日増えていく加入者数が
どこかでブレイクする日があるんじゃないか。
いまはおなじような波が続いているけど。
ぼくはサラリーマンだから、
ここに関してのリスクはまったくないんですよね。
50年来のビジネスモデルではないかたちで
やっていることがとても刺激的だし、
個人的にリスクを負っていないということは、
おもしろいことをやらせていただいているなぁと。
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糸井 |
ゲームとしてのおもしろさであって、
事業としてのおもしろさと
両立させるのは、非常に難しいでしょうね。
これを事業部にして、
「Tさん、お金をかすぞ、やってみろ」
と言われた時の真剣さと、
実験場としての動機とは、違うと思うので。
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T |
ただ、ぼくは電波少年を
10年ぐらいやってきましたけれども、
サラリーマンだからできたと思うんですよ。
いわゆるプロダクションの時代と
言われていますけれども、リスクの限界を
「クビになればいいや」
というところにおいているからこそ
できたということがあると思うんです。
その癖がついているんです。
何十億もらって、
「お前のリスクでやれ」
と言われたとしても、いまそれだけの
リスクでやれるかと言うと、45歳まで
ぼくはできていないですよね。
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糸井 |
そうですね。
そんな練習をできている人は、
そんなにはいないですよね。
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T |
仮にうまくいったとしても
ぼくはもうからない、リスクもない、
という癖でやるしかないかなぁと。
それを、毎日の伸びの数字で、
いままでの番組をキープしてきたようにやる。
今まで、CD売ってきたり本を売ったりしましたよね。
それは何かなということをやってみたい。
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糸井 |
正力松太郎以来の、という大店が
稼ぎだしてきた面積がそうとう大きいわけで、
電波少年が広告媒体として使うところを
ものを売ったりして独立採算でやれと
言われたとしても、厳密にやってったら
そうとうおそろしいものですよね。
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T |
ええ。
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糸井 |
だから、そういう冒険じゃない方向なのは
わかるんですけど、Tさんが
「おまえ、命かけろよ」に似たことをやらせて、
追い込めば追い込むほど出てきたものが、
おもしろいですよね。
じゃあ、Tさんは、自分の生命力を
ガーッと出すやりかたを、できるのでしょうか。
Tさんの年収ぶんしか負えないんじゃないか。
サラリーマンなのに負債を負ったとか、
そういうふうになれば、
逆に見たくなりますよね。
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T |
ぼくはどこかで、
社員という線をひいたからこそやってこれた、
思いきり振りまわせた、当てにいかずにすんだ、
というのがあります。
リスクを負わないことによって、自分が
正力松太郎とは違うビジネスモデルを
かたちにしたというのは、死んだ時に
「おっしゃあ!」って言えるかなぁ、と。
そこでがんばることができるのかなぁと、
そういうイメージですよね。
ひとつの反面教師として、
先行したBSというのがあるわけです。
商社とかが資本力を出そうとしたけれども、
限りがあった・・・。
そこでCSがあるけれども、
どこもノーアイデアなんですよね。
でも、やらなければいけないということで、
どこもがスタートしていった。
「ボールを持ってくれ」と言われた時に
ぼくが持って、走り出したというのが
いまの状態なんでしょうねぇ。
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糸井 |
まったくぼくが
Tさんとかを知らないでいたとしたら、
「そんなCSなら、
なくなればいいんじゃないか」
と言うのが、ごく健康な感想だと思うんですよ。
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